歯ぁ抜いたろか

歯を抜かれた。当人としてはついに、という感じ。左下の親知らず(半分横倒しになって出ている)が度々うずいていたのをほったらかしていたところ、昨年末にはどうしようもなくなって、口腔外科に紹介された。 親知らずの一本前の臼歯の根もイカれてるので二…

脳みそ吸うたろか

『Ronronnement』の前田シェフから「ベキャスが入手できそうです」と一報有り。ベキャス、すなわち山鴫にお目にかかるのは実に八年ぶりとなる。フランスでも年々狩猟が厳しくなってきており、スコットランドからの輸入が主となっているそう。それくらい貴重…

狐の一人舞

令和四年は全面中止となったのだから、数年来の習慣というには当たらない。当たらないがしかし、昨年のえんぶりがじつに愉しかったため(拙ブログ「岡目の一目~えんぶり復活(3)」参照)、仕事の都合で行けなくなったのには(予算も休みも組んでいたのに!…

戦前の旅

今回は二冊収穫がありました。 ★市河晴子『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』(高遠弘美編、素粒社)・・・跳ね踊るような文章がいい。戦前(しかも満州事変後)でもこんな闊達な旅行出来てたんだなあ。発掘してくれた編者に感謝。★岡田温司『キリストと性 西洋…

祖母・正司歌江のこと

行き来が絶えて、もう三十年近くにはなるだろうか。逝去のこともYahoo!ニュースで知ったくらいだから。ともあれ由縁ある者のひとりとして、思い出せることを書き付けておく。 若い頃に出来た娘が当方の母親で、その後に別の男性と結婚したから、要するに私生…

彼の『神学大全』~双魚書房通信(19) 鹿島茂『書評家人生』

書評本を読むのは人生の一大悦楽だが、無論本に善し悪しはある。でも見分けるのは簡単。風呂場に持ち込む気になるかどうか。これはその気にならない方がいい書評本なのである。スマホでもメモ帳でもいいけど、どんどん読みたい本が出て来て情報を控えておく…

甲辰

本年もよろしくお願いします。 吉例狂歌二首 甲辰元旦 朝日さす富士の高嶺に千歳ふる松のきのえだつる来鳴くらむ 梁山泊元旦 たくましき背なは九紋のりうりうと仁義を辰るをとこ一匹

軽薄さについて

コロ助の騒動も傍目に見て過ごしたような感じだったが、やっぱり三年近く足枷つけられてたら習い性になるもんですな。最近すっかり家居が日常に(日本語おかしいか)なってしまった。 無論この間に引越で眺望絶佳・交通絶望の地に移ってきた、ということはあ…

Via Dolorosa

いくら温暖化で遅くなってるとはいえ師走の紅葉狩りはぞっとしないから、今にも降り出しそうな曇天ながら家を出る。 まずはご近所の禅昌寺。特に紅葉で名高いという訳ではないけど、ともかく人が少ない(というかいつ来ても誰もおらん)のが有難い。少し外れ…

中年という愉しみ

酒後の事故や、体調崩すのが増えたこともさりながら、何の気なしに久々に読み返した本に感銘を受け、以て我が身の秋を知る。いやまあ、「ついにアラフォー」「四捨五入すれば五十路だわい」と騒いではいたけれど、秋のあはれ同様、身に染み出すところが肝腎。…

秋の蟷螂

山近いのでいろんな虫がやってくる。最近はむやみにカマキリの姿をよく見る。一度に三四匹見つかることもある。交尾中のところも目撃した。雄はなるほど聞く所に違わず、事後ぼりぼりむさぼり喰われてるのであった。喰われてること自体より、人間の目にはひ…

マスゴミを論じて牢獄におよぶ

強きを扶け弱きを痛めつけるのがマスコミの本分ではあるけれど、先の霊感商法といい、ま近くは芸能界の性加害といい、じつにひどい。鉄面皮ぶりやらしたり顔のご託宣やら下劣な攻撃口調など、まるでヤフコメ程度ではないか。まあ、益体もないことは天下周知…

夏涸れ

楽しい会はあったけれど、一体に九月は食べものの端境期という感じ。なにかネタを待ってるうちに月が終わってしまいそうなので、取りあえず読んだ本だけあげておきます。 ○ジャネット・ウィンターソン『フランキスシュタイン』(木原善彦訳、河出書房新社)○…

ジャレド・ダイアモンドに逆らって~双魚書房通信(24) ローラン・ビネ『文明交錯』

以前ビネの作風を冗談まじりに「伝奇小説」と形容したことがある(当ブログ「鳥獣の王」2020.12.14)。新作を読んで、もう少しこれに注が必要と思った。 前言撤回というのではない。どころか、今回も話の結構は奔放を極め、というか荒唐無稽の域に達している…

悪の文楽

改めて人間国宝認定おめでとうございます、吉田玉男さま。 夏の文楽公演は二度に分けて見物。十年前と違い、二部続けてはとても無理。腰が痛くなって見物どころではない(もっとも十年前だって楽ではなかった)。そのぶん前後の時間に多少余裕はあるのだけど…

この豊饒なる小世界

バルコニーがたいへんなことになっている。90平米の部屋に対してその半分ほどもあって、ルーフバルコニーの方はピクニック(?)したり、プールを出したり、こたつに火鉢を出したり(気違い沙汰)して堪能しているが、今回はそちらではない。生き物係からの…

酔仙歌仙

小説家丸谷才一は玩亭という俳号を持つ。句集もたしかふたつ出しているが、それよりも連句の方で名高い。ふるくは夷齋石川淳・流火安東次男、晩年は大岡信・乙三岡野弘彦といった人たちと一座している。鯨馬が宗匠役で巻いた歌仙記録を差し上げたところ、礼…

雨にうたるるめだか鉢

気象庁の「梅雨入り宣言」とは、例年の梅雨の時期・一週間程度雨が降る・当日も雨という基準で出されるのだそうな。そんなふわっとした「基準」ならいっそ出さなくても誰も困らないと思うのだが。宣言あろうがなかろうが、週間天気予報見れば雨かどうか分か…

断食気分

週に一、二度断食をしている。といっても短くて十六時間、長くても丸一日程度だから正確にはプチ断食。健康を気遣ってではなく、偶々食事を抜いたあと体が軽く感じたので続けているだけのこと。ネットで方法は調べた。一日くらいならそこまで危険も無いみた…

花づかれ

桜より断然梅派だったのだけれど、この三年の騒動を経て花のうつくしさがしみいるように思えてきた。無論こちらが断固たる中年になったせいもある。ともあれ、加賀金沢は別格としても、花隈城・須磨浦公園、そして妙法寺川と今季はかなりまめに出かけた。近…

加賀花尽くし

閲してみると、最後の金沢は騒動が始まるまえなのだった。つまりはそこから青森県にぞっこん惚れ込んで通い詰めだったわけですな。無論金沢に飽きるなどあり得るはずもなく、ただただ北陸新幹線開通で東京方面および外国の観光客で雑踏するのが煩わしかった…

昼と夜との花相撲

誕生祝いのメッセージを寄せて下さった皆様に、この場を借りて心から御礼申し上げます。 ○アンドレイ・プラトーノフ『チェヴェングール』(工藤順他訳、作品社)……小説(長篇)、今回はこいつが尤物。ロシア革命後の、にもかかわらず帝政ロシアの風格たっぷ…

松坂のダンナ~双魚書房通信(23) 菱岡憲司『大才子 小津久足』

戯作者山東京伝が京屋傳蔵としてたばこを商い、国学者本居宣長は内科・小児科の医師を以て日常の業としたことはよく知られている。生活の資を得るためであることは言うまでもない。ただその場合、あきんど・職業人としての顔はいわば身過ぎ世過ぎの表看板で…

岡目の一目~えんぶり復活(3)

土曜は朝から陸奥湊へ。東十日市組の門付けがある、えびす舞は就いて見るべし。と教えてくださったのは言うまでもなく二ツ森さん。中心街から小一時間ほど歩き陸奥湊駅前には六時半頃到着。普段から早起きなのでちっとも苦にならない。 まずは腹ごしらえ。今…

神の庭~えんぶり復活(2)

ホテルの朝食時間を待ってると間に合わないから、コンビニおむすびとカップ味噌汁、それに『達』の唐揚げでそそくさと済ませ、長者山へ急ぐ。三回すっころびかける。浮き足だっている。 参道脇でじっと待つ。三年前に比べいかにも南部らしい寒さが清々しく快…

イヴは静かに更けて~えんぶり復活(1)

一介の観光客ですらこんなに舞い上がってるのだから、地元の方々の喜びはどれほどか。えんぶり自体を見たかったのは言うまでもないとして、 愛する八戸の元気な様子に接することこそが結局今回最大の目的だったかもしれない。 八戸駅前、オンコ(イチイ)の…

時次郎気分

なんで更新しなくなったのか考えてみた。(1)中年の鬱(2)同じような内容が増えてきた(行事食とかね)(3)FB、Instagramなどで既に記事をあげている しかしよく考えれば、(1')中年のあとは初老・老年と鬱期が続くのだから(痴呆になったら天国やもしれ…

卯年は卯酒で

皆様に謹んで新年のお慶びを申し上げます。本年も、兎のように飛んで跳ねて・・・とは参りませんが、亀とすら競争する気のてんでない暢気者とのお付き合いを願わしう存じます。 では吉例腰折れ三首。 癸卯福来ねとかへす手みずの音うかれ耳に長くもひゞくも…

歳末御礼

公私ともに、心身ともに散々な一年でしたが明くる年もなんとか続けて参ります。 御高読まことに有難う存じます。皆様良いお年をお迎えください。 ○『キリスト教文化事典』(丸善出版)○アダム・フェルナー、クリス・メインズ『世界を変えた150の哲学の本』(…

白飯天国

元々メシはあんまり食べないところに、すっかり麦飯になじんでしまって(軽くて香ばしくていいもんですよ)、コメを買ったのは一年ぶりとなる。去年の今頃漬けた沢庵を取り出すのに合わせたのである。からくて堅くてクサいうちの沢庵漬には麦飯よりやっぱり…