この世の外なら何処へでも

旧師が講演をするというので、大学へ。先生の語り口は二十年前のままだった。主題は源氏物語「野分」巻の「あくがるる心」をめぐって。「あくがる」(現代語形だと「あこがれる」)、今は「理想的な対象に心惹かれる」という形而下的な使い方が主流となって…

肉名月

名月の夜、大学の後輩で連句の連衆でもある里女さんの誘いで焼肉へ。風雅にシマチョウを炙り、優美にハラミを噛みしめたりする。酒の途中で店の外に出て空を仰ぐと、主役は真っ白に照り映えておりました。ビルの合間の明月(と書きたい)には独特の風情があ…

奇襲のキッシュ

まだまだ中華フィーヴァーが止まらない。先週木曜日には、海月夫妻と住吉『自然派中華クイジン』さんへ。 敬士郎さんの覚え書きを拝借して、献立を記す。・鯨の椒麻ソース、秋鮭雲呑のみぞれソース、よだれ鶏、シャコの香味醤油、叉焼肉、牡蠣のベーコン巻金…

大楠公と大阿利襪

「第四三回東西落語名人選」(神戸文化ホール)。 ○柳家三三「もと犬」○笑福亭仁智「老女A」○柳家さん喬「棒鱈」○桂福團治「悋気の独楽」 中入り○月亭八方「高津の富」○柳家小三治「粗忽長屋」という番組。 さん喬師=歌がうまい。福團治師=御(ご)寮(りよ)…

人に告ぐべき鰯雲

九月に入った途端、近年の長い長い残暑に慣れた感覚からすれば嘘のように清爽な気候に切り替わった。おまけに義理堅くも鰯雲さえ浮かんでいて、こんなに順調に秋になってもいいものかしらん、と思っていると、案の定翌週には蒸し暑い空気が戻ってきたのにな…

夜泳ぐ

須磨水族園の夜間営業へ。平日を狙っていったので、人は予想どおり少なめ。ゆっくり見て回った。アクアリウムの権威・中村元氏のように「この水族館の特質は・・・」なんぞと語る資格は無いけれど、ここは展示の方法やキャプションの文章が、巫山戯すぎず、…

絶滅系男子

今にも絶滅しそうな(あるいは既にしている)古風なヤマト男児のことに非ず。塩素系漂白剤を使いまくって菌どもの絶滅にいそしんでいるという意味。 潔癖というほどでもないけれど、独り身で格別な資産も無い人間にとっては食中毒やら何やらで自分が倒れたら…

プロとアマ

日曜日は『播州地酒ひの』さんで奥播磨の会、水曜日は『海月食堂』で敬士郎さんの料理を堪能する会と、出不精には珍しく立て続け。 蔵の方からは「大吟醸でも、一通り食べた後でなおかつ美味しく呑んで頂けるように作っています」と説明があった。逆に言えば…

引越お知らせ

はてなダイアリーからはてなブログへと「お引っ越し」。 同じマンションで階を移るようなものだと思いますが、念の為。

月は出ねども満月〜備後・播州の旅(二)

翌朝もうんざりするような曇天。ホテルから笠岡駅まで歩き、福山に出て福塩線に乗り換え。そこから数駅、至極のどやかな風景の中を走って、神辺で降りる。 大都市・福山を引き合いに出すまでもなく、駅前からして鄙びた田舎町。いくら何もしないための旅とは…

カブトガニとわたし〜備後・播州の旅(一)〜

久々の旅ながら、行き先は金沢ではなかった。嫌いになったのでも飽きたのでもなく、何にも考えずひたすらぼーっとするには、取り立てて観光名所や馴染みの店がない街の方が都合がよかった。 と書いた後で所期するところは充分達せられたと続けると、なんだか…

師匠傘寿

MuogOTのシャルキュトリの会、海月食堂とピエールのコラボの会、初めて行った中華のcuisineなどで美味しい料理に沢山出会った(それにしても、出不精の人間にしてはイベント参加が続いた)。本も珍しく小説をよく読んだ。 とはいう個人的に煮詰…

螢の火

職場から家まで歩いていて、途中の宇治川の河原に蛍が飛んでいるのを見つけた。初めは一匹しかいなかった、というより見つけられなかったけれど、しばらく眺め入っているうちに、少しずつ数が増えていく。水の流れる音と相俟っていかにも涼しげ。リズムがあ…

神も仏もある世界

古本市などで四天王寺には割合行くけど、天王寺公園の方は随分久しぶり。花博の跡地が「天しば」なる施設に改装されていた(のを初めて知ったくらいのご無沙汰)。名前の通り芝生が長く伸びているだけで、へんにアトラクションなど置かなかったのが気持ちい…

草木虫魚

連休の最終日、絶好の天候なので・・・朝から水槽掃除。水が冷たい時分だと、温度調整にかなり気を遣っても、ショックで☆になる危険がある。今くらいが丁度いいのである。 せっかく外気温水温に神経質にならなくていいのだから、水を全部掻い出して、砂利も…

なんとか四月決算。

久々に『播州地酒ひの』で呑む。なかなか席が取れず、二ヶ月ぶりくらいになるはず。もっとも人気店に当日の夕方に思い立って電話する有様だから、これは当方が悪い。ともあれ親分とゆっくりお話出来て、愉しかった。中トロのヅケと中トロのシーチキン仕立(…

遠雷

四月の文楽は呂太夫さんの襲名興行。『菅原伝授』『曽根崎心中』と、統領株の演目が並ぶ。昼夜続けての見物はとかく堪えるし、また『曾根崎』にはあまり魅力を感じない。というわけで、昼の部の『菅原』を観に行った。 「茶筅酒」の段に感銘を受けた。と取り…

稲荷の横のホルモン屋

最近美味しく食べたもの。◎『中畑商店』の「モツ焼き」・・・なぜか大阪の立ち飲み屋で横になった客から聞いた。「あんた神戸に住んでて知らんのか」風のものいいにキッとなってかえって行くまいと思っていたところ、お馴染み『いたぎ家』アニーのアップした…

いつか来た道

『いたぎ家』ご一家(お父様・お母様・アニー・アニヨメー・タク)でお客をした。お父様は肉より魚がお好きと聞いて、当日の朝(一時半にお招きしている)東山の市場に行くと、これがまあ、かっすかすのしっけしけ。前々日の強風が祟ったらしい。言ふてもか…

戦慄の料理書

久々の読書記録。 ○秋草俊一郎編訳『ナボコフの塊 エッセイ集1921-1975』(作品社)・・・書評、とか『ロリータ』関係とか、主題で分類されている。ごく平俗な意味で面白いのはソヴィエト作家への痛烈、というより猛烈な悪罵のところ。百パーセントナボコフ…

水源を尋ねて桃源郷に至る

いつものように長峰霊園下へ湧き水を汲みに行くと、水が涸れていた。枯渇の危機は何度かあったけど(「逃げ水の記」ご参照ください)、なんとか保ってきたのに・・・。 といつものように早手回しに暗澹とするこちらを余所目に運転手兼ボディガード兼レンジャ…

怪人の紅 皇帝の青

老眼が進んで、しょっちゅう眼鏡をかけたり外したり。これがまことに煩わしいので遠近両用の眼鏡を作った。これでもう少しは本が読めるようになるかしらん。一週間後が愉しみである。 三宮に出たついで、とスマートフォンの機種変更にも行ったところ、三時間…

牛と蛸と美少年

職場菜園の青ネギが大豊作。で、家で鴨すきをした。清酒と薄口醤油の割り下にちょっぴり蜂蜜を落とす。卵は用いず、柚子をしぼったり針柚子をのせたり粉山椒をふったりして愉しむ。翌日は鴨のあぶらと肉汁がこびりついた鍋でうどんを炒める。 一人で抱き身一…

狐が鼻をつまむ

テリー・イーグルトン『悪とはなにか テロ、大量殺戮、無差別殺人-理性を超えた「人間の罪業」を解き明かす』(前田和男訳、ビジネス社)悪とはなにか作者: テリー・イーグルトン,前田和男出版社/メーカー: ビジネス社発売日: 2016/12/22メディア: 単行本(…

立春大吉

知らないうちに孫が生まれていた。 若い者同士で狭いとこに閉じ込めていたこちらに落ち度はあると申せ、こともあろうに武士の家にて不義、親の大恩忘れし淫奔【いたずら】は畜生も同然、天罰喰らふが道理ぢや、と擲り出してしまえば「袖萩祭文」となるが、こ…

雪をたづねて三千里〜金沢

だいぶ遅れましたが、自分のための心覚えという必要があるので載せる次第です。 三泊したのは初めて。やはりこれくらいでないと、ゆったりした心持ちで過ごせない。もっとも金沢を最初に訪れたのだったら、あそこを見ようこの店に行こうと欲張って結局は慌た…

沙翁道中膝栗毛

「極私的ヘーゲル&沙翁まつり」が続いている。年末年始は仕事柄用事が多くなるので、遅々として進まないというのが実情。ま、目新しい情報を、しかもすかすか気味にしか盛り込んでない新書を読み飛ばしてるんじゃないから、焦らず乱さず読み続けようと思う…

寒中稽古

金沢の旅行記もまとめないうちに、パーティーとなってしまった。以前書いたように、同僚の結婚祝賀会を拙宅で行おうという企画である。正客の夫婦二人に、同じく同僚が六人。主人側は鯨馬と執事役の空弾二人。都合十人の宴で、近頃お客をしていない主人とし…

嵐の前の・・・

これまたFBつながりで、なんと中学校時代の友人とも再会することができた。京大を出て、今は脳神経科医。で、今は研修というか休暇というか、ま武者修行中ですな、それでヨーロッパに長期滞在中。偶々日本に帰っている、と連絡があったから元町で昼食。 せっ…

師弟交歓?

年の瀬、ユーキちゃんと『田ぶち』へ。三十手前の人間をつかまえてちゃん呼ばわりも無礼な話である。が、元教え子なので主観的にはどうしてもこうなってしまう。 そんな旧師(そんな立派なものではない)の思いをよそに、いい男に成長していたのが嬉しかった…