日記

ひな料理

独身男に桃の節句は関係ないというなかれ。少なくとも飲み食いという観点からする限り、私見ではひな祭りは端午の節句に優ること数等、というよりお話にならないのである。五月五日ときいて連想される食べ物などない・・・・といいたいが、まあ柏餅があるの…

お知らせ

百年に一度の不景気やら、ジャスミン革命やら、温暖化やら、何かと憂わしい世界の雲行きにも関わりませず、極楽とんぼもきわまりない当『鯨飲馬読記』をお読みいただいている皆様、書き手としてはまことに感謝に堪えません。 さて、タイトルどおり呑んだり読…

神あまたみそなはす国

近江についてみると、雪はほとんど無く皮肉にも神戸より気温が高いくらいだった。 朝目覚めると窓から入ってくる光がなにか違う。ひょっとしてと窓をあけてみると一面の雪。神戸(家は兵庫区)では今年初めての積雪になる。 以前書いたことだが、《寒冷》好…

日本的風景

午前 いつものように六甲に湧き水を汲みにいく。三つある湧き出し口の二つは涸れてしまっている。この冬、記録的な豪雪にたたられた北陸・東北とはちがって近畿ではほとんど雪が降らず。降水量は平年の1%もないところさえあるらしい。夏の渇水が心配。とま…

生々流転

退勤時間をまちかねるように、カバンをひっつかみ、電車に飛び乗る。 行き先は、さんちかホール。古書市の初日なのである。会場が閉まるまであと一時間足らず。しっかり見て回れば二時間くらいはかかるはずである。そこで、作戦をたてた。文庫・雑誌の類は一…

寒波の明暗

商売繁盛の神であるエビスの祭り(一月中旬)のあたりは、皮肉なことだが、もっとも商売が暇な時期だという。まして、今年のような記録的な寒波が襲来していたら、食べ物屋はすっかり冷え込んでいるのでは・・・と思いきや、きくところによると意外とそうで…

卯年の卯酒

皆様あけましておめでとうございます。本年もあいも変わりませず、読んだり呑んだりのお話をお届け致します。 で、さっそくながら正月の献立。 煮物は煮染め(海老芋、こんにゃく、牛蒡、人参)と炊き合わせ(鯛の子、百合根、高野豆腐、絹さや)の二種。 生…

和・洋・和・洋

クリスマス前の木曜日、しかも時間は遅めというタイミングで三宮『小猿』に見参。 もともとカウンター中心の小体な店で、すぐにいっぱいになってしまうのは、この場所で以前営業していた『哲粋』(『小猿』のご主人が修行していた店でもある)時代から何度も…

冬ごもり

再度筋の懐石「山荷葉」再訪。 例のミシュラン騒動で、ずいぶん混雑してるだろうから、と思ってだいぶ間をおいたのだが、この日(土曜日の晩)もテーブル席は一杯。ご主人の板垣さんいわく「十二月になってからいよいよバクハツしてます」とのこと。まあ、こ…

名残の鳥の・・・

先日、9時半まで仕事をしたあと、新快速に飛び乗って東淀川の焼き鳥屋「とりや圓」に向かった。年内に、この日を逃して行く機会は無かったからだ。年が明けたところで店が消えるわけではむろんないのだが、長いあいだ「圓」のヤキトリを食ってなかったので、…

小皿ならべて・・・

先週は、阪急淡路駅近くの鮨屋「千成」で、同僚とその相方さんと豪奢に呑んだ。豪奢というのは、江戸前風に一仕事したにぎりだけでなく、酒のアテがことさらに充実していたからで、今思い出せるだけでも、牡蠣、蛸、くえ、鯛の雲丹和え、芋鰹、唐墨、赤貝、…

この昼下がり

元町にある歯医者で治療を終えるとちょうど昼時分。歯医者からは歩いてもそう遠くないイタリア料理の「トラットリア・コチネッラ」で久々に昼食をとることにする。 この店はアンチパストの盛り合わせが有名。この日もつごう一二種類のアンチパスト(もちろん…

般若党結成記

なんだか幕末のテロ集団のように響くが、もちろん左様な殺伐とした集まりではなく、仏教語の「般若湯」のもじり、すなわち酒(日本酒というのは癪なので)愛好家の結社である。 ブログ子はアルコールあまたある中で、酒をいちばん好んで呑む。だから、いまさ…

出直して参ります。

以前登場した、昔の教え子まる。(と書くと、モーニング娘。のようだが、骨っぽいヤツなのでこうして名前にも節目を付けたくなるのだ)からメイルあり。「父とキノコ狩りに行ってきたのでおすそわけします」とのこと。 町に暮らしていて、一番手に入りにくい…

献立だけの記事

連休だったので、秋らしい献立でゆっくり料理を調え、ゆっくり呑みました。 ・鯛の子塩辛、たたき長芋 ・菊花くるみ和え ・黒豆豆腐の揚げ出し ・鮭味噌漬け焼き ・さばきずし ・栗と蓮根と鶏の煮物 ・むかご飯 料亭で食べたらどれだけとられるか、と思うと…

ミシュラン京阪神版

ミシュランの2010京阪神版が発売されて、新聞各紙が取り上げている。 まあ、こういうのは祝祭のようなものだから、あって悪いわけではないが、掲載されることで客層が荒れたり、もっとひどいことには店の味や客あしらいが荒れたりといった弊害もまた少な…

秋桜

連休てなよろしいもんで、一日目でカラダの疲れをぬぐうことができるもんですから、次の日の朝はなまじ仕事があるよりもはやく目が覚めたりして。 午前もまだはやいうちに用事が全部済んでしまうと、あとは黄金の朝。家のすぐ北にある禅寺の雲水の托鉢の声(…

狂瀾怒濤

とにかく何かが取り憑いていたとでも考えるしかない。 一昨日は、まず同僚三氏と、鯉川筋にあるベルギー料理屋に行った。料理もうまく、ワインもまた結構。すっかり上機嫌になって、二軒目はバー。一人は帰ったが、ここで別の同僚二名が合流。 バーの後は台…

亡者の海のレンブラント

「悪の研究」では、古書会館しか行かない、と言っておきながら、結局は他の二つの古書市(四天王寺、大阪天満宮)もまわってしまった。膏肓に入った病だから仕方ないんだけれど。 もっともこの日は大阪天保山のサントリーミュージアムで開催中の『ポーランド…

かますを干す

一年の内、秋が二百日くらいあればいいのにな、と、一年の内二百日くらいは思う。温暖化というよりは熱帯化しつつある日本の気候では、ますます秋の居場所は少なくなっている、とは誰しも肌身で感じていることだろう。 しかし、その分だけ秋を満喫する気持ち…

悪の研究

十月四日は「古書の日」だそうで(なぜこの日なのかは分からぬ)。 それに合わせて古書市があちこちで開かれている。関西だと、四天王寺、大阪天満宮、谷町古書会館。たしかに、いい季節だしなあ。秋気澄明の下、古書をあさるのは無上の快楽である。 とはい…

芳醇なるもの

日中はいくら暑くてもしょせんは死にゆく夏の虚勢、三時くらいをすぎた太陽は、恨みがましい光線を放ち、その分だけ“没落”の印象を灼きつけるだけであった・・・・。 十年ぶり(?)にスティーヴン・キングの『呪われた町』を読み返してみると、ストーリー・…

秋のおとづれ

一ヶ月ぶりのお客。通称 まる およびその令室。 まるは元教え子。こちらが若かったころの生徒であり、その他諸々の思い入れも含め、まあ最愛の教え子といっていい。そのまるが大学を卒業し、結婚し、就職して、初めて拙宅に来ることになった。 ご夫人は、脂…

玄妙なる米

ある日の献立(この日は休日)。 朝 玄米飯一膳。塩辛納豆。味噌汁(オクラ、里芋)。ぬか漬け(人参、胡瓜)。無花果。 昼 ペペロンチーノ風パスタ(「風」というのは、オリーブ油・大蒜・鷹の爪の定番に、鮎の魚醤一滴とレモン汁、粉チーズを加えているか…

千年の家

記録だけならば大同年間、つまり九世紀初頭までさかのぼるというからおそろしい。 本ブログのなかで、「夏を撃つ」と題して夏の終わりは云々という一文を書いたのが八月二十二日のこと。そこから一月近くもたってようやく秋らしく空が澄明に晴れ渡ったある日…

見る鶏 食う鶏

神戸元町の大丸で開催中の「琳派・若冲と雅の世界」を見に行った。着物で行くと半額とのこと。惜しいことをした。 「忍草下絵和歌巻断簡」(本阿弥光悦書・俵屋宗達下絵)がよい。このコンビでの和歌巻は、シアトル美術館がその大部分を所蔵する「鹿下絵」の…

豊後 湯のたび(三)

日田着はまだ十時半。観光客など誰もいない。駅前でレンタサイクルを借り、ホテルに荷物をあずけたあと、まずはお目当ての咸宜園に向かう。 咸宜園は江戸後期の儒者・広瀬淡窓の私塾で、入門者は八十年で四千八百名にのぼる。数もすごいが、教育方針もまた開…

豊後 湯のたび(二)

日本旅館というところは、一人旅の客を嫌忌すること甚だしい。有名な温泉地の旅館となれば尚更である。だからこちらは、「一人旅歓迎」という条件でインターネットを検索して出て来たところ、ぐらいにしか認識していなかった。はっきり言えば期待していなか…

豊後 湯のたび(一)

今年の夏の旅は大分に決めた。去年会津若松から山形、新潟、金沢、能登と回り、関西以上の暑さにへなへなとなった記憶がある。どうせ暑いなら西は九州まで行ってしまえ、と六甲アイランド発大分港行きのフェリーを予約した。 実は生まれてこのかた船旅の経験…

夏を撃つ

詩人有田忠郎に、「セヴラックの夏」という一篇がある。十節あるうちの、最初の一節を引く。 夏は広大な音楽をつれて少しずつ傾いてゆく ピレネーの秋の訪れ そのひそやかさ 迅速さ (それは夏の大気の微粒子にかくれている澄んだ刃のようなもの) 八月がな…