横丁の楽しみ

 路地と路地にある社が好きだ。

 路地の社だから、鳥居に本殿とものものしくかまえたのではない。日本文学史上最高の“散歩の達人永井荷風が『日和下駄』の「淫祠」で礼賛した類、である。

 一昨日、歩いて職場に向かっている途中、ふと目を向けた横丁がなんんともいえず魅惑的な角度で折れ曲がっていたので、そちらに足を向けてみた(いつもかなり余裕をもって家を出ている)。
 このあたり、つまり兵庫区の平野の界隈は、戦災にもあわず、震災の被害もほとんどなかったとのこと。そのためか、羊腸とまでいったら大げさすぎるが、車が入らないような小径が縦横無尽に伸びている。角をまがると土塀に門構えの一見してわかる旧家に行き当たることもあれば、おやと思うようなところに水の流れが見えたりすることもある。こんなところでなぜ?と思うようなスナックの看板がぶらさがっていたり、菊正宗の看板の下に一癖ありそうな飲み屋のような屋号が見えたりすることもある。

 この日も小さな祠を見つけて良い気分。なによりも民家の前庭に寝そべっていた犬が(犬猫が人間よりも大きなカオをしてるのも路地の特徴の一つ)、「ほら、はよ行きんかいな」といわんばかりの目つきで当方を見つめていたのが嬉しかった。

 そして今朝。これは職場近くの路地で、思いがけなく銭湯を発見。今度仕事がえりにいってみよう。一汗ながして、夜風に吹かれながら家にもどり、鯨飲するつもり。

 といささか強引にタイトルに結びつけて終わり。