出直して参ります。

  以前登場した、昔の教え子まる。(と書くと、モーニング娘。のようだが、骨っぽいヤツなのでこうして名前にも節目を付けたくなるのだ)からメイルあり。「父とキノコ狩りに行ってきたのでおすそわけします」とのこと。

  町に暮らしていて、一番手に入りにくい食材の筆頭がキノコ、そして山菜の類ではないか。ウェブ上でのレシピ紹介は言うにおよばず、少し凝った料理本でも、キノコといえば松茸、椎茸、占地、舞茸、榎茸、滑子、最近ではエリンギ、洋風ならマッシュルームの8種類以外が出場することは少ない。懐石系の本でたまに香茸、岩茸が出て来るくらいのものである。

  ぼくの出身地は大阪とはいいながら、山を切り開いたニュータウンの、それも山際だから、春になると土筆や芹や蕨、ぜんまいを採ってきていたものだが、贅沢をしていたんだな、あれは。

  そういう物珍しさもあるけれど、キノコのたぐいは大好物なのである。小学校のみぎり、近所のオバチャンが、「これから買い物に行くけど・・・」と当方の名前を呼び、「何か欲しいものある?」と聞いたのに対し、「干し椎茸」と答えてオバチャンを絶句させ、横で聞いてた親の顔を紅潮せしめた、らしい(本人の記憶にはない)。オバチャンはきっとチョコレートとかスナック菓子のような、子どもらしい答えを想定していたんだろうな。まあ、「干し椎茸」が三十代後半にふさわしい答えかどうかは分からないけど。

  さて、まる。は職場の前までくだんのブツを持ってきてくれた。当方の顔に一瞬流れた不安の色を察してか、紙袋をわたしつつ、「ボクも食べて一日たってるから大丈夫ですよ」と笑う。

  しかしまる。自身がたいがいアクも強いし、毒気もある人間だしなあ・・・毒と毒とで中和したんとちゃうやろか。いや、それを言うならこちらの毒気も強からずとなさず。つまり、まあ大丈夫でしょう。

  お礼を言ってちょうだいし、早速家で料理にかかる。乾した香茸は、炊き込みご飯にする。本日はそれ以外のキノコのみ。まずはウラベニホテイシメジ。苦みが強いときいていたので、十分に茹でこぼして、ごま油で炒める。クリフウセンダケは半分は火を通して酢醤油で、残り半分はホウキダケは味噌で味を付けたキノコ汁に。

  ホテイシメジはまだ処理が十分でなかったと見えて、いささかの苦みが残る。いっそのことフライにしたほうが良かったのかも知れない。クリフウセンダケも、香りを十分に生かした食べ方とはいえなかった。ごめんなさい、まる。。

  やはりキノコは難物なのだ。

  白菜漬け(今年初)の油炒めと銀杏入りの茶碗蒸しで、ちびちび呑みつつ反省しきりの秋の夜。