神は細部に宿り給う

  用事を済ませて三宮から家に帰るさ、入ってみた料理屋がちょっといける所だった。

  目板鰈の造り、雲丹とろろ、チーズの味噌漬、アスパラの天ぷらで呑んだあと、骨蒸しを頼んだところ、出てきたのは大鉢からなおはみ出そうな鰆の頭。顔つきは獰悪である。身は豊脆。鰆の匂いが口いっぱいに広がる。鯛でもなんでも頭は、意外な所に身が詰まっていていくらでもほじり出せる、またそういう身のほうが旨い。この一品だけで満腹してしまいそうなくらいのヴォリュームで、ついつい酒のほうがおろそかになってしまった。添えてある豆腐もすばらしい。「これだけはウチではなんともなりません」とご主人。

  値段はまあまあ、場所柄考えればこんなものか。ご主人篤実な人柄とお見受けしたが、手伝いの女性を含めて挙措が雑。少しく興をそぐ。店名は記さず。

  翌日はジム。堕落したものである。ま、連日の深酒を続けて見苦しくない体型を維持するためだからな、と言い聞かせつつ、恥をしのんでルームランナーで走る。