天空の芙蓉

  週末は生まれて初めての静岡。ただし出張でいったので、特に観光はせず。

  印象に残ったもの。桜海老の掻き揚げ。静岡おでんの黒はんぺん。上方育ちの人間として、ちくわぶだのはんぺんだのといった食品には漠然たる軽蔑?悪意?を持っていたが、この黒はんぺんは宇和島のじゃこ天や山陰のあご野焼きに近い感じ。つまり味にも食感にもちゃんと実質のあるところがよかった。

  あとは平凡ながらさすがにお茶が旨かった。といってもいわゆるチューハイのお茶割りのお茶だが、充分に濃くて香りがあり甘みがあり・・・要はふつうに呑んで旨いということ。これだったらいくらでも焼酎が飲めるのでは、と思われた(実験はせず)。

  会議の昼休憩のこと、大きなホールの壁面がするすると音もなく開くと、正面には富士山の姿が、ただし梅雨時の湿気の多い空気を通してだから、雪を被った山頂だけがあたかも空に浮遊しているように展望できた。

  江戸中期の儒者詩人・秋山玉山が富士山を詠った漢詩の一句に、「芙蓉、碧空に挿(さしはさ)む」。