栄枯盛衰

  土曜日は友人の誕生日祝いで食事をしたあと、人と待ち合わせがあったのでそれまでの時間つぶしにバーを二軒。一軒目は盛り場から少しそれた所にひっそりある。おんぼろビルの中になかなか趣のあるしつらえで、ちょっぴり贅沢な時間を過ごすために数年前まではよく行っていた。気取りやで講釈たれでナルシスト・・・まあどうしようもないバーテンだったが腕はたしかで、酒のこともよく知っている。時には珍しいシェリーが入ったというので呑ませてくれた。そのバーテンが辞めたあとは足が遠のいていたから、今回が久々となる。店内は相変わらず重厚で雰囲気があったものの、酒の種類は減っており、若いバーテンもやたらと愛想良く話しかけてくるだけで酒については素人同様。仕方なく無難にコニャックを頼んでぼんやりする。窓際に整然と並べられたバカラのグラスの輝きがまことにうつくしい。それを唯一の収穫として店を出る。

  口直しのつもりでもう一軒行ったのも、十年ほど通っている店。昔から店員がほとんど変わっていないのが嬉しい。ここでもブランデーを呑み、馴染みの店員とだらだらしゃべり、進められてシガーを一本だけ吸ってみた。タバコは五六年ぶり。おもったよりくらくらしなかったが、特別に旨くもなかった。勘定もやすい。こういう店はいつまでも残っていてほしいね。


  翌日は久々にお客。趣旨はとくになかったのだが。和洋折衷の不思議な献立は以下の如し。

・カボチャとジャガイモの冷製クリームスープ
・牛タン赤ワイン煮
・サラダ(たこ、クレソン、パプリカ、玉ねぎ、胡桃、胡瓜)
・前菜(剣先イカ湯上げ、塩蒸し鮑の共酢和え、人参葉三度豆モロッコ隠元胡麻和え、スモークサーモンの砧巻)
・茄子と鶏胸肉のレモン風味(レモン果汁と鰹出汁を等分に割る)
・鯖きずし
・いさき造り
・パエリア
・糠漬け(茄子、水茄子、胡瓜、茗荷、蕪)

茄子のレモン風味はあと一工夫でもっとしゃれた一品になったかな。この日は牛タンとぬか漬けの出来がよかった、と自画自賛。それにしてもよくワインを呑んだ。