花三相

  今年は花見を三回した。とりどりに趣きあり。

  はじめは生田川。ちょうど咲き満ちたところでもあり、好天にもめぐまれ、川ぶちは鬧熱はなはだしい。この日は食事をもちよりという趣向、こちらもローストポークなどなど・・・を考えてはいたのだけれど、前日は呑みすぎにて、昼過ぎまで動けず。しょうがないのでトアウェストのカーサ・ディ・アレクリアで生ハムとチーズの盛り合わせを作ってもらい、持って行った。女性陣はみなきちんと手作り。その中に混じって同僚湘泉子も中華チマキや東坡肉で気を吐いていた。毎年思うのだが(誰も毎年思ってると思うけど)、花見時分は日が落ちると休息に冷え込んでくる。おでんとか鍋があればなあ、と震えつつろくに夕桜も見ず。この日は花より団子ならぬ花よりワインの日であった。

  次は同僚(美人)と二人で夜桜。先に仕事を終えた同僚が弁当を頼んでおいてくれたので、それで缶ビールを呑みつつ、この時はしみじみと花を玩賞する。場所は前回と同じく川端(ただし生田川ではなく宇治川)だったが、日が落ちてもそれほどには冷え込まず。当方、久々に恋をしているので、その話も聞いてもらう。もののあはれはこれよりぞ知る。


  さて、最後は実の花にあらず。文楽劇場に『祇園祭礼信仰記』を見に行ったのだ。ご存じ雪姫の、爪先鼠の段である。過日亡くなった雀右衛門の雪姫もむろん美しいが、人形特有の冷え冷えとした風情に桜の花びらが散りかかる場面は、まことに夢幻的でうっとりさせられる。この日は『桂川連理柵』も演っていた。商家のややこしい人間関係のうっとうしさが、肌身にせまってくる。このリアルさは上方ことばの効験でもある。せりふのことば(語彙、語法、イントネーションなど)は現代のものとしても充分に通用するくらい。関西の人間ならすんなりと楽しめるのではないか。歌舞伎と違って格段に見物料も安いし。

  といらざるお世話を焼いてしまったのは、この日の公演では(終演時間が遅いせいもあったろうが)かんり空席が目立ったから。橋下市長にかわって助成金の削減も決まったそうだが、このまま落花狼藉とはなってほしくない、とつくづく思う。

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