天神さんに背を向けて

  久々に鯨飲したという話を書く。


  もとは「上方日本酒ワールド2012」というイベントに参加するつもりだった。場所は大阪天満宮。一応境内に松尾さん(酒の神様)は祀っているが、こういうイベントにぽんと会場を貸すのがいかにも大阪の神社らしくてよい。

  さて天神橋筋に出るのは久しぶりだったので、歩いてもほんの二、三分というところで方向を見失い、十分ほどうろうろする。神戸に住み慣れてしまうと、のっぺり広がった町―といえば日本の都市の大方はそうなってしまうが―は苦手である。

  だから苛々してたというわけでは全くないのですが、ようよう天神さんにたどりつくと、会場は異様な熱気につつまれておる。いずれを見ても箕面の山の猿かと思うばかりの赤ら顔。

  とたんにげんなりして踵を返した。せっかくチケットも買ったし(といっても単なるグラス券)、大好きな『播州地酒 ひの』さんの肝煎りではあるし、何より電車を乗り継いでここまで出張ってきたというのに、我ながら偏屈・・・というか癇性というほかはないけれど、しかしイヤなものはイヤなのである。

  帰ったんでは鯨飲にならんではないか。いや、その話はこれから。というわけでもう一度商店街に戻り、古本屋を何軒か見て回る。天牛書店は後輩が出産で店長を辞めてからは多分初めてかな。ほんとに久々だったので、洋書や均一棚に面白い本はないかと少し期待していたがこの日はあまり収穫がなかった。それでも何軒か見ていくと袋一杯にはなった。

  そろそろお昼時。商店街をぶらつきながら目星をつけていた店はいっぱいだったので、別の店でビールを呑んで時間をつぶす。んーなんというか、いかにも大阪という感じの居酒屋でありました。

  目当ての店というのは、屋号がなんていうのか分からないが、オープンカフェに毛が生えたようなつくり。それが魅力的なのではもちろんなく、「本日のお魚」を好みの調理法でどうぞ、というのがウリらしい。ワインがメインのようである。日本酒を飲みに来てワインに落ちるというのも一趣向ではありませんか。

  まずは白(イタリア)。アイナメ(好物である)のアクアパッツァで。ワインはもう少しコクがあったほうがよかったが、ちゃんとクーラーで冷やしてくれたキンキンのやつ(もちろんボトルで呑んでおります)を、ほの暗い店内から眩しすぎる道路を見やりつつがぶがぶ呑むのは相当に気分がいいものである。アクアパッツァは上出来。これで千円しないんだからな。こうなったら腰すえて呑んでやる。と次は同じ銘柄で赤。結構腹がくちくなってきたので、タパスを何種類かもらうことにする。まあ、GWということもあるのだろうが、ずーっと満席なのにそれぞれ丁寧に作っているのが好もしい。すらりとした白鷺のようなウェイトレスも、オダギリジョーをいっそう無気力にしたような少しラクダにも似ている厨房のにいちゃんも感じがよい。というか、昼間っからこんなに呑んでるオッサンに警戒して愛想良くしていたのかもしらん。また来るゼ。

  しかし、出先で呑むと帰るのが面倒きわまりない。いっそタクシーに乗っちゃおうかとも思ったが、いやいやその金があるならばまだのめるわい、と電車に乗る。店のトイレで顔色を確認した所、ほとんど酒の気は出ていなかったが匂いはどうか。横に座った人、ごめんなさい。

  三宮につけば、もう店が夜に向けて営業しだす時間である。こういう時にいちばん気をおけず話ができる友人のりょうを呼び出して、北野坂「番鳥」で呑み直し。ワインのあとで喉が渇いていたから生ビールが美味しいわ。

  で、途中を省いて簡潔に報告すると、最後の店を出たのが朝の六時。後半はしこたまバーボンを呑んだらしい。らしいというのはさすがに記憶がとぎれとぎれなのだ。

翌日(昨日)は模範的典型的にして、かつ痛快な二日酔いでありました。

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