血ぃ吸うたろか〜

  休みで、しかも好天(湿度低し)、風もある。

  かねて狙っていたフローリングのワックスがけを決行する。まずは掃除機で大きなホコリを吸い取り、そのあとクイックルワイパーでさらに細かい塵を集める。その後住居用洗剤を用いて下拭き、あと水拭き。

  結構大変そうでしょう。実際にここまで終えるのに、長袖Tシャツが汗ずくになるほどであった。しんどくはあったが、しかし二十数年ぶり(!!)かで、リヴィングから玄関までの廊下を、お尻をふりたてて一直線に雑巾がけしていくのはなかなか気持ちのよいものでした。中学(バスケ部)のとき、体育館の床でやらされたことを思い出す。そういえば、顧問の社会科教師はものすごい気分屋で、あの時あんな無茶を言いつけられた、あんな理不尽なことも言われた、くそ、あのデブ。

  と「思い出し怒り」がこみ上げてきたので、気分を振り払うためにピアソラのCDを大音量でかけて(ご近所の皆様ごめんなさい)、ワックスを塗っていった。これも雑巾で拭き込んでいくから、かなり時間がかかった。

  作業終了後、シャワーを浴びて、コーヒーを淹れる。玄関扉を開け放して風を通すとワックスが見る間に乾いていくのがわかる。家の中にいて外気の動くのを感じるのは実に心地いい。

  こんなに爽やかな部屋にあって、しかし読んでいたのはブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』であった。古本市の百円均一。映画とかマンガとかで何となく知った気になっていたが、そいえばオレ原作読んだことがなかったよな、と気付いて買ったもの。

  感想を手短にいえば、予想外に面白い。たぶんこの小説を評する人の誰もがいうことだろうが、日記や新聞の引用などのコラージュの技法が効果を上げている。なんとなくトランシルヴァニアのドラキュラ城が舞台のお話、と思っていたのだが、それはほんの導入に過ぎなくて、メインの舞台はロンドンだったのですな。つまり、ドラキュラ伯爵御自らどうどうと英京に乗り込むのである。たしかに古城での死闘という、それこそ古色蒼然たるパターンに比べて大都会で暴れまくる吸血鬼のほうがよほどコワイ。発表当時に読者に与えた衝撃がわかる気がする。《都会派吸血鬼》というこの設定を最大限に活かしたのが、いうまでもなくアン・ライスの「ヴァンパイア・クロニクル」シリーズ。一作目はトム・クルーズとプラピで映画化されたアレです(田村隆一訳、ハヤカワ文庫)。

  メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』が十八世紀的な憂愁と形而上的味わいに優れているとすれば、これは大通俗小説として(貶下するのではない)上出来。平井呈一の訳文は達者ではあるが古めかしい(ドラキュラの口調がなんだかカーのギデオン・フェル博士かH.メリヴェール卿みたいなのだ)。ま、しかしそれもそういう味と思えばよい。

  夕方は友人のりょうとご飯。最近もんじゃ焼きにハマっている、と言うので付き合うことにする。今までは「何だあのゲロみたいな汚らしいおこげは」とてんで莫迦にしていたのだが、ビールのアテにはお好み焼きより向いてるのかな。お好み焼きは少し重すぎる。

  もっともこれは、関西風に生地(っていうのか、あのしゃばしゃばの液体は)に出汁をきかせていて、それが食べやすかったせいもあるのかもしれない。

  今度は夕方ではなく昼下がりに、しかもこういう小綺麗な店(東門街の『花門亭』)ではなく街角の古くておばはん一人でやってるような店で、自堕落にビールを呑もうと固く誓ったことでありました。

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