太郎の梅熟れ 次郎の鮎肥え

 平日の休みは、なんとなく気分がゆったりして、ふつうに週末を休むよりも嬉しい。

 せっかくだからゆっくり料理しようかな、とスイミング帰りに市場によってみると、琵琶湖の天然鮎(琵琶湖の鮎は小さい)を売っている。本日のメインはこれ。

 紫蘇炊きとか姿ずしという手もあるけれど、一年のうち、食べられるのはほんのわずかな期間だけだし、へんに手を加えず全部天ぷらに揚げてしまうことにする。職場の菜園では大葉がわっさり茂っている。それを摘んできたので、半分は紫蘇巻きとします。

 一人暮らし、というか一人に限らず家庭での天ぷらはなにしろ目の前の揚げたてを食べるわけにはいかない。それをするなら台所に椅子と膳鉢を持ち込んで食うしかないが、酔っぱらって火事でも起こしたのでは、余りに高くつく夕餉になってしまう。せめて、揚がったらすぐ食べられるように、天つゆや大根おろし、すり生姜、塩などの用意はもちろん、箸や手塩、布巾もきちんとととのえ、瓶ビール(とビアマグ)を冷凍庫につっこんでから揚げにかかる。

 天ぷら以外の肴。紅奴(と勝手に呼んでますが、トマト風味の冷奴である。湯むきしたトマトをざく切りしてざるにおき、下のボウルにジュースだけをしたませる。それと濃い目の鰹だしを半々に合わせ、炒り胡麻とみじんのあさつきを加えて、粗くつぶした豆腐にかける。醤油はできるだけ使わない方がよい。トマトと鰹の旨味で十分食べられます)、豚バラと胡瓜の中華スープ(胡瓜は縦半分に切ったものを六切りにして胡麻油と酒で炒めておく)、ブロッコリーのおかか和え、イカげそ入りの卵焼き(阪神百貨店地下のイカ焼き風に、ぺたんこにして焼く。粉は入れない。味付けはマヨネーズとタバスコ)。

 鮎は小ぶりながら二十尾ほどもあり、揚げ終えた時は「こんなに食えるかよ」と思っていたが、ほろっと崩れる身と爽やかなわたの苦みを愉しみつつ、よく冷えたビールでつまんでいるといつのまにかすっかり平らげていることにおどろく。

 この日、市場に行く前に山環沿いのパン屋さんを一軒開拓。「Le Pan Daugh」という店。あいにくほとんど売り切れていたが、食パンが一斤残っていたので求める。※翌朝トーストにするとよく「目の詰んだ」、食べ応えのあるパンでした。

 兵庫区はパン屋ケーキ屋のたぐいが異常に(と以前六甲に住んでいた人間からは見える)少ない地域だが、ここと、ここを東に進んだところにある「ブランジェリー・ナオ」とで我が家のパン需要は十分にこなせる。できればもっと飾り気のない(そして旨い)バゲットかドイツ風のパンをおいてるところがあればなおいいのだけど。

 対手は池内紀『ある女流詩人伝』、『20世紀の歴史家たち 世界編・下』。

 食後に十五年もの(すごいでしょ)の梅シロップを炭酸で割ってちびちび呑む。タイトルにこじつけるためである。

 しみじみ幸せを実感していたら、ワインセラーが壊れていることに気づく。むきーっ、これから暑い時季だというのに・・・次からは安物買いはするまい、と、ひとり深夜の台所で固く誓う。

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