勝利の方程式

 代休が入って珍しく午後までの出勤だったから、当然の如く昼間開けてる居酒屋で下地を入れる。花粉症の薬が効いて、鼻も口中もカラカラになっているところに流し込むビールが旨い。鼻からビール飲んでるわけではないですが。鯖の煮付けと蛍烏賊の酢味噌がよろしかった。駄句一つ。

いちいちに目のある不思議ほたるいか 碧村

 人心地もついたところで、ジュンク堂に向かい、面白そうな新刊書の書目をメモしておく。図書館で借りる本もあれば、古本屋で改めて探す本もあるから。欲しい本を全部新刊で買ってたのではこちらの身が持たない。

 そうこうしているうちに日も暮れ方と鳴海潟、浜の真砂は尽きるとも世に酒呑みのタネは尽きまじ、と夕酒を愉しむ口実で六甲の『彦六鮓』に顔を出すと、これも久々の大学の後輩(女性)が一人でビールを呑んでいた。奥の小上がりも、これまた久々にお目に掛かる方を囲む会でにぎやか。

 コノワタと赤貝(美味しかった)でぬる燗を飲み、そこからゆるゆるにぎりのほうへ、と思っていたのだが、この後輩が相変わらず機関銃のごとくしゃべってくるので、なんだかこちらの喉も渇いてくる気がしてついついお銚子ばかりがカウンターにならぶことになる。結局「お巻き」(ここでは太巻きをこう呼ぶ)を最後につまんだのみ。いやあ、それにしてもダンナのことから姑のことから子どものことから職場のことから趣味のことから・・よくあれだけ倦まずに話せるものだ。スターリングラードの銃撃戦をふと想像したことでありました。

 六甲から三宮へ。お気に入りのバーのウオツカ・トニックでいい加減ねばった口をさらりと洗い流すと、さてこれからが本番なのです。実はさる人、内田百輭風に甘木氏としておきましょう、その甘木氏から少し相談にのってほしいと言われていたのである。

 で、某店で(むろん酒は絶やさず)甘木氏の話を拝聴して、気がつけば早朝五時、つまり六時間、いたことになる。甘木氏の話を聞いて、「えらく似た構造の話もあるものじゃ」と思う一方で「人間はかくも多様な生物であるか」と、これはわたくしなりに思うところあり。

 こんな書き方ではちいともお分かりにならないと思いますが、そして当方文章はすべからく読者に開かれた、社交性を備えたものであるべきだと信じておりますが、話柄が話柄だけにここはこう書くしかないのです。備忘録みたいなブログにおつきあい願って恐縮だけど。

 翌朝はしかし昼前には目覚めたものの、台所に立つ気力はさすがになく、出前の焼きそばと八宝菜、鳥の唐揚げなんぞで缶ビールを呑みながら(細部でのこういうフントウぶりを見て頂きたい)本を読む。あ、言うまでもなくこの日は休み。感想をメモしておくのが煩わしかりければ、書名のみを掲げる。


・レオパルディ『カンティ』(名古屋大学出版会)
・『女の二四時間 ツヴァイク短篇選』(みすず書房
ヴァレリー・アファナシエフ『ピアニストのノート』(講談社選書メチエ

 いかにも二日酔いの午後、ぱらぱら読むのにふさわしい選択だと思いますが、どうでしょう。逆に積んであったテリー・イーグルトン『宗教とは何か』(岩波書店)、リチャード・J・バーンスタイン『根源悪の系譜 カントからアーレントまで』(法政大学出版局)は鬱陶しくて手がのびず。この体の辛さを抱えつつ《悪》について考える気には、なれるはずがない。

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