自宅の人

 このまま残暑知らずで秋に突入してほしいもの・・・と窓に雨音を聴きながらつくづく思う。それで猛暑のバランスをとっていただきたい。

 テレビで北海道は浜中町の海霧の場面を映している。初夏二〇度を下回ることもあるそうな。羨ましいと思って見ていたが、あっという間に本がカビだらけになってしまうんだろうな、こういう土地に住んだら。そういえばこの夏は多忙のあまり、蔵書(大した量でもないが)の虫干しをしていない。今からでも間に合うかしら。と考え出すと、雨だけ止んで、からっと暑くなってくれいと言いたくなるから勝手なものだ。

 先々週の週末から外食が続いていた。さすがに店での食事も食傷気味なので、久々に湊川市場で買い出し。また店が減っているようで寂しい。と思いつつ、東山の南入口にある貝専門の店で鮑をもとめる。ここはあまりに客あしらいが杜撰だから嫌いなのだが、大きな鮑は他に無いので仕方がない。そういう商売をしとるからつぶれるんですよ。誰も百貨店のような(寒々しい)笑顔なりお愛想なんぞ期待しとらん。市場なりにたしなまっせい。

 と買い物に来てぷりぷりするのも損なもの。すぐに見事な真魚鰹を見つけてご機嫌となる。

 この日の献立は以下の如し。

○鮑のステーキ…柔らかく蒸し上げたものを改めてバターで焼く。味付けはシンプルにバターの塩気と胡椒、白ワインのみ。

○真魚鰹の唐揚げ…葱・ニンニク・生姜・紹興酒・醤油で下味を付けておき、片栗粉をまぶしてからっと揚げる。あつあつのところに、鶏ガラスープに酒・塩で薄めに仕立て、片栗粉でとろみを付けた餡をかける。あ、そうだ。香菜もたっぷり載せる。まことに立派な真魚鰹だったので、半身は味噌漬けにする。来週の弁当のおかずやな、これは。

○とびあら塩茹で…手をべたべたにしながら殻を剥き立てをつまむのがいちばんよろしい。レモンでいただく。

○あこうの洗い…六甲の湧き水で作った氷水でじゃぶじゃぶ贅沢に洗う。山葵醤油と梅肉醤油両方で食べた。ガラは吸い物の出汁とする。

○ぬか漬け…胡瓜・茄子・茗荷。もっともこれはすぐに漬かるものではないので、たらたら呑んでるうちに他のアテがなくなると出してくるのである。

○きぬかつぎ…ふつうに塩だけで食べるのと、海胆味噌(塩海胆と卵黄と赤味噌、酒を湯煎で練る)とで。どちらも青柚の皮をおろして散らす。

 酒ははじめ友人が土産にくれた丹波の何とやら。あっという間に呑みきってしまい、うっすら酔いの回った足取りで近所の酒屋に買い足しに行く。後半は「龍力」である。

 本の対手は、

鈴木淳史編著『クラシック野獣主義』(青弓社)…やたらに面白い文章もあれば、箸にも棒にもかからぬやつもある。そこらが「野獣」たるゆえんであろう。姉妹編の『知性主義』も楽しみなり。ひょっとしたら大外れもないかわりに、毒にも薬にもならぬ微温的論説ばかりかも知れないけど。これもタイトル通りならば。

柴田元幸『つまみぐい文学食堂』…柴田先生の文章が酒の肴に絶好なのはいうまでもない。あまり美味そうでない食材や食事に拘っているのが面白い。とくとくと行った店の感想を垂れ流してるブログ子なぞは俗物の最たるものである。

中島俊郎『オックスフォード古書修行 書物が語るイギリス文化史』(NTT出版)…古書の相場など、へえーと楽しめた部分もあるけど、文章の蕪雑さが気になる所少なからず。『イギリス的風景』でも同じことを感じた。もったいないことである。その口直しというわけではないが、

・『田辺聖子全集』第23巻…「ホトトギスを待ちながら」「セピア色の映画館」などのエッセーを収録。前者は見事な批評であり、後者の語り口も素晴らしい。ただしこちらは宝塚にはどうも食指が動かないのでヅカ批評とも言うべき「夢の菓子を食べて」は飛ばした。

 朝はトマトジュースにヨーグルトだけだったから、買い出しから戻ってすぐ、午後2時くらいから作り始めてそのまま食べた。食べ終わると窓の外がうっすら暗くなり始めているのを見ると、なんだかローマ人になったみたいで愉快である。

 綺麗に片付けたあと、久々に北海道・恵庭の「珈琲きゃろっと」から買った豆でコーヒーを淹れる。二種類買ったのだが、「ブラジル・プレミアムショコラ」というほうから開ける。名前通り、チョコレートのような芳香。甘いが芯の通った味、こうやってくつろげるのもやはり我が家ならでは。埴生の宿よ・・・。

 とはならぬところがヤクザな生まれつき。今週末にはまたもや旅行(といっても今回は一泊きりですが)。家島で播磨灘の鮮魚を食らいつくして参ります。


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