タイタニックの呪い

 ようやく気温も高まったこととて、煮麺(牛蒡の天ぷらと卵焼きと三つ葉入り)の朝食兼昼食を済ませたあと、水槽四本の大掃除に朝から取りかかる。六〇センチやミニサイズのものは順調にいったのだが、一二〇センチの外部式フィルターポンプに入っている濾材を掃除して、活性炭なども入れ替え、さてホースをつなぎ直して電源を入れると、びっくりせまいことか、ポンプからじゃーじゃーと水があふれ出した。

 慌てるということばはもともと擬音語だったのではないだろうか。瞬く間に床を広がっていく水を見ながら、間抜けにも当方の口をついてでたのはマンガのような「あわあわあわ」といううめき、または叫びであった。

 もちろん電源はすぐ切ったのだけれど、ポンプ本体の継ぎ目からは「まだございます」という感じで水が噴き出してくる。この大型水槽は居間と書庫との境目に置いてるので、水が本棚の下を侵すとなると目も当てられない事態が出来することになる(置ききれないのでスチールラックの本棚の最下段のさらに下、床面にも本を詰め込んでいるのです)。

 ある限りのバスタオルを撒き散らして(という感じであった)なんとか氾濫を鎮めていると、折からテレビ(DVD)では『タイタニック』も沈没しかかっていた。

 冷や汗もあって全身汗づく。こりゃええ運動になったわい。とシャワーを浴びて出ると、最近本ブログで登場頻度が急上昇している張龍からメイルあり。見れば、近くのスナックで呑んでいる、おいでありたし、とある。ちなみに時は、午後二時半なり(日曜日の!)。

 馬鹿者っ!と一喝してから、いそいそと出かけていった。一人かと思ったら孫行者こと張龍の他、小鬼・ハルピュイア・セイレーン・オーク、と店は化け物屋敷化していた。諸氏昨晩から延々(つまり一二時間以上)飲み続けているのだそうな。

 大たわけどもがっ!と一喝してから浮き浮きとビールをがぶがぶがぶがぶとやる。こちらも追いつかねばね。

(一部自己規制)

 その後の展開がもひとつよく分からない。

 勘定を済ませて店を出ようとすると(午後四時半なり)、張龍が「パチンコに行きたい」と言う。ワタクシこの遊戯を致しませんので、「行けば」と言うと、「酔いつぶれた小鬼を○○(こちらの名前)んちで寝かせてやってほしい」とのたまう。

 一四時間呑んだ後の張龍がいったん言い出したときの勢い、当たるべからざるものがあるのを重々(文字通り痛いくらい身にしみて)承知しているので、逆らわずにぐにゃぐにゃになった小鬼を家まで引きずって帰る。小鬼というよりは生ける屍、ゾンビの如し。マンションのホールや廊下で、他の居住者の方々に遭わないか、とまたまた冷や汗三斗。どう見ても筋弛緩剤を打って誘拐・監禁、という構図だもんなあ。

 居間の床に小鬼を丸太のように転がしておいてから、こちらは夕食および明日からの弁当の食材を仕入れにスーパーへ向かう。ジョッキを八杯程度空けたくらいで料理をさぼるわけにはいかぬ。選ばれたる者の恍惚と不安である。

 で、しこしこ常備菜を作り終えて本を読んでおりますと、鎧袖一触で吹っ飛ばされた張龍が拙宅に来た。小鬼は同じように眠り込んでいる・・・どころか大いびきさえかきだして、ますます佳境に入っているようである。

 このままではタクシーにも乗せられんわなあ、と顔を見合わせる。何はなくともまず一献、とアクエリアスをすすめたら(ふつうそうしますよね)、「ビールを所望す」とのたまう。

 この外道がっ、と一喝する気力も萎えて(蛇に魅入られた蛙状態と申しますか)、缶ビールをぷしゅと差し出す。こうなれば主人役が呑まないわけにはいかない(ふつうそうですよね)。弁当のオカズやらなんやらを取り合わせて肴として酒宴の始まり。卵焼き、メカブと山芋、チーズ、もやしナムル、梅干し(張龍の好物)、メンタイコ、ササミの酒蒸し、高野豆腐などなど。

 書いていて自己嫌悪に陥りそうなので、簡略に記しておきますが、この後昼間のスナックにもう一度繰り出すという不適切な行為をとった事実に関しては重々反省しておる次第です。

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