夜桜まで

 夕刻、仕事帰りに元町の歯医者に行く。ここは友人の紹介。病院はやはり知ってる人間の口コミに限る。

 それにしても歯科医の受付の女性は、入った時はあれだけ無愛想なのに、治療を終えて出て行く時は妙ににこやかになってるのが不思議。どこでもそうなのだから首をひねってしまう。

 謎が解けないものだから、『もののけ姫』の木精よろしく首を傾けたまま、近くの食べ物屋を見て回ると、良さそうな店がちらほら。さすがに元町界隈だけあって、三宮ほど人気が荒れてなさそうなところがよい。

 しかしこの日は別に目当てがあったので、元町では店に入らず、三宮まで足を伸ばした。

 伸ばしたのだけれど、生憎目当ての一軒目(鮨や)も二軒目(中華)もいっぱい。で、たぶんダメだろうと思って入った店が空いていてたりするものである。店は生田新道から一本北に路地を入ったところにある『小猿』。

 この店のことはたしか一回書いた。今ひとつ組み立てにメリハリが感じられない・・・なぞと偉そうに批判していたはずだが、今回は堪能しました。向こうが腕を上げたのか、こちらが丸くなったのかは分からない。

○先付=のれそれ生姜酢・山葵菜お浸し・穴子細巻き(ほんのちょっぴり)
○造り=剣先烏賊・赤貝・しび鮪・伝助穴子・シマ海老
○椀=蛤・蕗・若布 ※鰹の出汁を底味にすることで、かえって蛤の香りを引き立てている。むろん酒の肴に最高。
○焼き物=鰆木の芽焼・虎河豚白子塩焼 ※鰆がことにいい。濃い目の味付けなのに不思議と酒に合う。
○炊合=筍・大根(風呂吹き)・蕗・鯛の子・海老芋 ※むろんのこと酒に合う。
○八寸=唐墨と茶振海鼠 ※唐墨は自家製。歯にねちーとへばりつくのが上品の証拠。酒に合わない訳が無い。
○強肴=牡蠣唐揚げ ※天ぷらよりも牡蠣の旨味を活かしているような。おかずっぽいのになぜ酒に合うのだ。
○椀=干口子・川海苔・菜の花 ※飯や菓子はいらんから吸い物をもう一回、とリクエストしたら出てきたのがこれ。取り合わせを見て酒に合わないなと思った人は、一度病院での精密検査をおすすめします。

 ね、献立を見てもメリハリがぴしりときいている感じでしょう。お客が少なめということもあって、主人とあれこれ歓談しながら徳利を次々と空にする。この日は土佐の『久礼』というやつ(母親が土佐出身なのだそうな)と、佐賀の『古伊万里』という銘柄。両方ともドスがきいて当方好みの味でした。
 話しているうちに住んでいるところがごく近くだと分かる(ただしこちらと違って相手は子どもの頃からの神戸っ子)。それだけでなく、主人の顔つき・口調(それにアタマの形までが)古い友人にそっくりなのでなんとなく親しみを覚えてしまう。
 酔い覚ましに歩いて帰る、と言うと「そう寒くもないし、『水の科学館』前の坂道の夜桜を見ながら歩くのもいいでしょうね」と送り出してくれた。

 なんだかただの料理屋評判記みたいな記事になっちまったが、気分よく食べかつ呑めたのだからこう書くしかないのだ。

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