三週間も更新しなかったのだな。不要不急の当ブログながら、いかにダルな日々を重ねているか、見透かされるようで気恥ずかしい。
さぼっている間も三宮には精励恪勤、たとえば「星一つ、いただきましたーっ」という北野の某店に行ったりもしたのだが、出されるものみな、一向に心躍らない。旨くなかった、という話を縷々書いたのでは読まされるほうはたまったものではないし、何より書く当人が気乗りしない。
という按配だったので、久々に顔を出した『いごっそう』では酒も焼き鳥も堪能できたのはよかった。アスパラとはつもとが旨い。なかんずく佳かったのが「リンパ腺」なる一串。
「今日はめずらしくリンパ腺があります」
「なんですねん、それ」
「リンパ腺です」
さっぱり要領を得ないやりとりである。串には添うてみよ、人なら喰うてみよ、じゃなかった、串には食らいついてみよ、という訳でさっそく一本を頼む(一本しか残っていなかったのです)。見た目は白い脂肪の粒が連なっているよう。食感はくにゃくにゃして、噛んでも噛んでもとめどなく甘味があふれてくる、まさに珍味。なんでも鳥のリンパ腺は、育つと無くなってしまうという面妖な器官であるらしくて、仕入れられるかどうかは「時の運」の由。
『いごっそう』の後はこれも久々の『リシュリュー』へ。同僚も一緒だったのだが、ローヌ好きの彼と、ボルドーを好んで飲むこちらの癖を心得た出し方をしてくれたのが嬉しく、つい過ごしてしまう。それにしてもしこたま酒を呑んだあと、ワインの杯を重ねたのだから、我ながらようやる、というのが思い返しての感想。
もうひとつ美味しかったのは『いたぎ家』の空豆。塩茹でや掻き揚げ(これもいい出来だったのだが)といった定番の提供だけでなく、「漬けの三種」なるものあり。空豆狂としては(芹狂、三つ葉狂でもある)喜び勇んで注文することになる。出てきましたのは、出汁醤油に漬けたのと、わさびに漬けたのと、それからオリーヴ油・アンチョビに漬けたもの。最後のがことによかった。オリーヴ油にはディルで香りを付けているらしい。豆と香草と魚の香りががっちり組み合って実によろしい。
と褒めあげたついでに注文ひとつ。三種のうち一種は甘味で出してもいいんじゃないでしょうか。
この店が嬉しいのは、メニューに「肉」「肴」などと並んで「空豆」という部立をもうけていること。こーゆー居酒屋、空前にして絶後と称してもよいのではないか(興奮している)。もうこれだけで、空豆狂としては随喜の涙がこぼれてしまうのである。翌日の弁当として、空豆の炊き込みご飯をおむすびに作ってもらい、空豆入り薩摩揚げをおかずに付けてもらった。
烏賊と炒めてもいいだろうし、ずんだにして蒸し貝に和えても素晴らしいだろうし、海老と一緒に白玉に射込んだものでお椀、と来たら立派に夏懐石の大役をつとめられるだろうし、ああ、生シラスと一緒に大蒜をきかせてアヒージョ(甘皮も剥いておく)なんて乱暴な使い方しても大丈夫なんだろうなあ。軽くぬか漬けというのも洒落ているのではないか。
空豆と心中したい。
やはり不要不急、のブログなのであった。
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