秀吉殿にもの申す。

 前回はあまりに殺伐とした話に終始したので、ひとつ暢気なお噂でも。何かと言えば、今が旬の黒豆の枝豆がぞくぞくと届いて嬉しい悲鳴をあげているという話。丹波篠山の出身の知人や、ネットで野菜を購入している農家から来るのだが、いずれも段ボール一杯なので、このところマメに豆ばかり食べているという次第である。莢がはちきれるくらいにおおきな粒で、味も甘味・コク、ともに上々。この甘味を引き出すために、茹でる時には普通の枝豆よりもたっぷり時間をかける(最低十分)。もっちりしたやつを口に放り込んでは酒を呑んでいると(ビールはむろん、日本酒にも合うのが不思議)、いつのまにやら豆だけで満腹していることに気づいて驚愕する(大げさな)。ま、どうせ今しか食べられないのだからせいぜい堪能するつもりであるが。

 彼女は人見知りで出不精だから、勢い食事はウチで取ることが多くなる。週末のこの日もまた拙宅にて食べることとなって、枝豆をどっさり茹で上げてやった。全体の献立は以下の如し。

○枝豆
○鯖のきずし(茗荷・山葵・生姜・大根おろし・酢橘と、薬味をたっぷり添える)、障泥烏賊の造り
○天ぷら(障泥烏賊と茗荷、茄子)
○キノコの酒バター蒸し(ヒラタケと椎茸)
○鯛の子とずいきの煮物
○ずいきの酢味噌和え
○焼き穴子
○松茸飯、赤だし(焼き茄子)

 向こうは缶チューハイで真っ赤っかになってしまう質なので(酒のアテは喜んで食う)、当方一人でぐびぐびやりながらDVDを観る。酒は「奥播磨純米吟醸の袋しぼり(だったっけ?最近は酒のこういう表示が増えて覚えきれない)。芳烈な美酒である。DVDは三谷幸喜清洲会議』と『ブロークバックマウンテン』という洋画。後者はなんでもアカデミー賞何部門もノミネートされ、大ヒットした映画らしいが、わしは知らんかった。羊飼いのアルバイトをしていたカウボーイ二人がデキてしまい、その後も互いの妻には隠したまま関係を続けていくという話。ロッキー山脈の映像が素晴らしく、またアメリカの片田舎(舞台はワイオミング州)の小さな町のやりきれないほど寂れた、すがれた感じも出ていて、それは良かったのだが、第一長すぎるし(主人公の娘が赤んぼの時から結婚するまでの時間が語られるのだ)、そもそもゲイの二人が家族にもひたかくしにしつつ、苦悩しつつ愛し合うという話なんぞ、カップルがメシを食いながら観るべきものではない。『清洲会議』のほうは喜劇。三谷ファンには悪いが、これも長すぎてくたびれる。それに台詞がつまらない。三谷幸喜という人、ある喜劇的なシチュエーションを見出したところで、構成や表現を練り上げる努力を止めてしまっているのではないだろうか。

 最近読んだ本。
○ベルント・ブルンナー『熊 人類との「共存」の歴史』・・・今だに個人的熊ブームの熱がさめやらないまま(「くまさんに出会った」参照)、図書館で見つけて借りてみたが、書き方に工夫が無く、魅力に乏しい。同じ著者による『水族館の歴史』も、題材は興味津々たるものなのに(一応アクアリストである)、これもダメ。これはこちらの鑑定力にかけて言うけど、当方との相性が良くないのではなく、この人、筆力がないんだと思う。
○ヒュー・オールダシー=ウィリアムズ『人体の物語 解剖学から見たヒトの不思議』
○ロベルト・ザッペリ『ローマの痕跡 ゲーテとそのイタリア』
桜井哲夫『一遍と時宗の謎 時宗史を読み解く』
○濱田義一郎ほか『誹風柳多留廿四篇全釈』(の第一巻)
○西村賀子『ホメロスオデュッセイア』 「戦争」を後にした英雄の歌』(岩波の「書物誕生」シリーズの一冊)

 三宮のジュンク堂書店で、山尾悠子フェアをやっている。『仮面物語』に小学生で熱狂して以来のファンとしては、嬉しい。あまりメジャーになりすぎてほしくないという思いも一方にはあるのだが。
 同じジュンク堂で、まだあどけない顔つきの高校生がしばらく迷ったあげくにピンチョン『重力の虹』をレジに持って行くのも見た。胸が熱くなった(嘘である)。がんばれよ、高校生!
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