他人をダシに己を語る

それほど暴飲暴食していたわけではないけれど、年末からいささか外食の頻度が高くなっていたので、本日は家でゆっくり夕食を作った。

◎鯛蕪・・・鯛のかぶと(二つ割にしたやつをさらに四つに割る)・かまは、霜降りにしたあと、細く水を落としたボウルの中で指を使って鱗や血合いを掃除していく。そのあいだに、四つに切った蕪(にぎりこぶし大)を糠でゆがく。すっと竹串がとおるようになったら、茹でこぼしてもう一度静かにゆがき、糠の匂いを除いておく。鯛は昆布だしに酒(たっぷり)・薄口醤油(アラ煮きではないので濃口は使わない)で炊く。蕪の方は昆布・鰹の出汁で鯛より少し淡目の加減で炊いておく。ここまでで大体一時間くらい。両方が炊きあがったあと、土鍋で一緒にして、一煮立ち。甘味を入れないことと(くどくなる)、柚子をたっぷり使う(中くらいのを半分ほど針柚子にして)のが、こちらの好みには合う。食卓にカセットコンロを置き、ごくごく弱火で冷めないようにして(生臭くなる)食べる。

◎芋どうふ・・・木綿豆腐を、濃い目の昆布出汁で煮ておく。その間に大和芋かつくね芋(長芋は向かない)をおろし、すり鉢で擂りたおす。卵白も入れる。豆腐はやや固いな、というくらいまで煮るので、かける芋は出来るだけなめらかにしておくのが好ましい。料理屋だと鉢に芋をかけて出すのだろうが、ゆっくり晩酌したいので、こちらは豆腐の鍋と芋のすり鉢を別々に卓上にならべて、食べる分だけ小鉢に豆腐を取り、芋をかける。濃口醤油を滴々とたらし、すり山葵と焼き海苔を繊にしたものを載せて食べる。

あと鮒鮓に酢茎は買ったもの。時間をかけた割には、そして食卓にはやたら鍋鉢皿の類いが並んでいる割には品数が少ないけど、胃腸を休めるため、そしてゆっくり料理をすることで精神のリズムを取り戻すためでもあるから、これでいいのである。酒は萬歳楽の『剣』をぬる燗で。いつものように飯は無し。

我ながら鯛蕪も芋どうふも悪くない出来で、上機嫌で呑む。上機嫌ついでに、『だし噺』なる本を読み出したがこれは大失敗。市販の顆粒だしの非を論じて、きちんと引いた出汁の良さを称揚するのはいいけれど、結局、著者の店で売っている出汁パックの宣伝にみな結びつけてしまうのだから、興を殺ぐことおびただしい。昆布の産地やら品等やらに関してやたらうんちくを語る割には、肝心の出汁のひき方の講釈はおざなりだしなあ。これは俺がやってる「だし教室」(とかがあるそうな)に来たら教えてやるということか。今回の題名は、某大批評家が切ったタンカ。まだしも某先生には、それを好むかどうかは別にして、語りの藝があったのだが・・・。アホくさくなって、後半のレシピには目を通さずに投げ出す。『酔っぱらい読本』(全冊揃えた)のあちこちを拾い読み、その後は桂文我『上方落語『東の旅』通し口演 伊勢参宮神賑』。

元々、落語の中でもとりわけ芝居噺と旅噺が好き。上方落語では『東の旅』が屈指の大ネタなのだが、あまりに噺が多く、したがって長すぎるため、誰も演じない。こちらは『米朝落語全集』のあちこちから拾い「聴き」していた。文我さんはおそらく大師匠に当たる米朝さんの学者的一面をもっともよく受け継いだ噺家だと思う。この本でも、随所にしっかりした考証に支えられた、話の再構成が見られる。

それにしても、これ、実際に高座で聞いてみたかった。あとがきでは「西の旅」他のシリーズでも同様の試みをしてみたいと書いてらっしゃるので、それまで我慢するか。落語通で、情報をお持ちの方はご一報願います。
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