前回、冬菜を漬けたと書いた。すべて良い加減に仕上がって、朝は壬生菜漬と焙じ立ての番茶で茶漬け、昼の弁当には蕪のぬか漬(の浅いの)、晩酌の相手として白菜漬、とご機嫌に過ごしていたのですが、さすがに白菜一株を中年男一人ではこなしきれない。発酵が進んで酸っぱくなってしまったので、思い切って油炒めにしてしまう。
具や調味料はごたごたさせず、せいぜい豚バラ少々に鷹の爪、仕上げに魚醤をぽっちり垂らす程度。油は胡麻油だけだとちとくどいかもしれない。サラダ油を中心に、風味付け程度に胡麻油を加える。酸味が足りなければ、最後に米酢でも中国黒酢でもお好きなように加えればよろしいが、白菜の芯に近いところをしゃくしゃく噛んでるうちにじわーっとのっかってくる乳酸の旨味が、いわばこの料理唯一の「ミソ」なのであるから、やはり白菜漬を作って、酸っぱくなるまで待ったほうがいいと思う。ほのかな酸味で、これはビールだけでなくぬる燗にも合います。鶏ガラでスープを取った時には、この白菜と溶き卵で湯(タン)にするとか、細切りにして甘酢にさっと漬け直し、ゆで豚と和えるとか、展開も色々出来そうですな。
あとひと品は甘鯛の一夜干し。スーパーにて生のヤツを買ってきて、一晩塩をしておいた後、ベランダで風干しにした。こんがり焼いて柚子をたっぷりしぼる。こちらはやはり燗酒でしょう。
これに揚げさんの炙ったのくらいで、もう満腹してしまう。まあアルコールのほうはがぶがぶ呑んでいるのだけれど。
読んだ本(翌日が休みなので深夜までだらだらと呑みながら読めたのである)。
○『包丁と砥石大全 包丁と砥石の種類、研ぎの実践を網羅した決定版!』…いやーすげーなー。以前から、砥石に合わせて包丁をあつらえる料理人もいるという話を聞いていたのだが、石の種類と研ぎ方の多いこと多いこと。オレにはここまで出来ん・・・でも久々にウチの包丁全部時間をかけて丁寧に研ごう!と堅く決意する。酒を呑みながら読むにはうってつけの本。
○ロジャー・パルバース、四方田犬彦『こんにちは、ユダヤ人です』…全体としてはなんだか散漫な印象だけど、「結論はなくてよい」という趣旨だそうだから、これはこれでいいのだろう。鴎外の例の『舞姫』にユダヤ人問題が隠れているなど、まさしく目からウロコ的な具体的指摘が読みどころ。
○ミハル・アイヴァス『黄金時代』…古川日出男氏がドスのきいた推薦文を書いている。たしかにその文章どおりの作品で、しかもこちら好みの作風であるにも関わらず、ほんの少し、しかし決定的な分だけ少し物足りない。これはくさしているのではない。読み手としての当方が現今どういう「位置」にあるかをとらえ直してみるいいきっかけとなりそうである。
○朧谷寿『堀河天皇吟抄 院政期の雅と趣』…「末代の賢王」と称えられた帝王の伝記。上皇・天皇・女院・摂関家、それに大寺社と新興勢力たる下層貴族および武士とがごじゃごじゃともつれあってる院政期はやっぱり面白い。誰か大江匡房と美福門院の新しい伝記、出してくれませんかね。
○谷川健一『蛇 不死と再生の民俗』…老来ますます意気盛んな谷川健一さんの新著。「蛇信仰」関連の論考を一本にまとめたという書物らしい。もともとヘビ贔屓なので、わくわくしながら読めた。たとえば、「うず」という古語が蛇(蛇神)を意味していたことを跡づけた上で、例の、天岩戸の前で踊ったアメノウズメは、からだのあちこちに蛇を纏わせた巫女だとする。そして、藤内遺跡出土の巫女を象った土器が頭に蝮を巻き付けていることをあげて念を押すのである。じつに刺戟的な本。蛇信仰を介して、古代日本と古代ギリシア(ピュトンの大蛇を退治したのはアポロンではなかったか?)を結ぶ回廊が妄想のうちに浮かんでくる。
- 作者: 谷川健一
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