雛(ひいな)はをらねど・・・

 上巳節を祝ふ。もちろん酒を呑むダシに蛤の吸物を使っただけのこと。

 いったいに水っ気のものは日本酒が進むもの、「馬鹿の三杯汁」というワルクチもあるけど、吸物椀三杯くらいは軽くこなしてしまう。実が蛤ばかりでは少々飽きが来るので、一杯目はふきのとう、二杯目は若布、三杯目に菜の花をそれぞれあしらいとする。味付けも一杯目は酒・塩のみ。二杯目は薄口を滴滴と垂らす。三杯目は鰹だしを少し混ぜて、と変化を付ける。

 なんぼなんでもこれだけで桃の節句とは口はばったい。明日の弁当にもなるわいと思って、ちらし寿司もこさえた。薩摩の酒鮨や備前の祭鮨みたいのなら、車海老や白身のきずしや穴子や貝類を豪勢にのせないと逆に絵にならないけれど、「雛祭り」なんて可憐な名称だもの、なるべく生臭は抑えて作りたい。というわけで、混ぜる具は干し椎茸・牛蒡・蓮根(これは醤油を使わず、砂糖と酢で煮る)・高野豆腐・菜の花・ちりめんじゃこ(これぐらいなら許容範囲)、上に炒り卵(錦糸卵は味がしない)と絹さやを散らす。

 京都のほうでは鰈を焼くとか。そういえば鰈も終わりかけだと思い出し、子持ちのやつをそれらしく小さめに切って(京料理風どすな)、酒(濁り酒)を塗りながら焼く。これで白酒への義理は果たしたこととする。あとは芹の辛子和えと新漬の沢庵。

 酒は土佐の『しらぎく』の八反錦純米。吸物にはちょっぴり芳烈すぎたかもしれない。それでもスーパーで買ってきた桃の小枝を観賞しながらじっくりと呑む。思えば梅見にも行ってないのに桃の花とは我ながらせわしないことだった。


*****読んだ本*****
○渡部泰明編『和歌のルール』(笠間書院
○山下博司『古代インドの思想 自然・文明・宗教』(ちくま新書
○エッサ・デ・ケイロース『都市と田舎 あるいはパリとポルトガル北部の山地』(彩流社
○ハンス・ベルティンク『イメージ人類学』(平凡社
○西村克也・久野治『桃山の美濃古陶 古田織部の美』(鳥影社)
○西潟正人『日本産魚料理大全』(緑書房
南直人編『食の文化フォーラム 宗教と食』(ドメス出版)
高橋徹白隠 江戸の社会変革者』(岩波現代全書)
○佐藤正英『日本の思想とは何か 現存の倫理学』(筑摩選書)
○吉田徹『感情の政治学』(講談社選書メチエ
布野修司『景観の作法 殺風景の日本』(京都大学学術出版会)
○『召使心得 スウィフト諷刺論集』(平凡社ライブラリー
○福留真紀『将軍と側近 室鳩巣の手紙を読む』(新潮新書
○ロナルド・ドゥオーキン『神なき宗教 「自由」と「平等」をいかに守るか』(筑摩書房
○小倉孝誠『革命と反動の図像学 一八四八年、メディアと風景』(白水社
○真野倫平『死の歴史学 ミシュレフランス史』を読む』(藤原書店)
○ツベタナ・クリステワ編『パロディと日本文化』(笠間書院
山本貴光『文体の科学』(新潮社)
阿部公彦『英語文章読本』(研究社)

・・・最近きっちりした書評も載せず、書名の羅列に終始しているのはみっともないが、弱小ブログなりに書名なりともあげて顕揚しておきたい本は多い。

 もっともここにあげた本、すべてが読むに値するとは申しません。
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