ついでに生きる

 日曜日はささやマルシェの打ち上げ。「肉ビストロ」とうたう店で、各種の肉がコースで出される。ステーキ屋ほどどーんと出るわけではないが、そろそろこれくらいのポーションで丁度良い年格好になってきた。ワインはグラス10杯くらいではとてもとても満足というわけにいかないのだけど。まあ、この日はマルシェスタッフが初めて全員そろっての食事だったから(仕事などの都合で銘々来られる日が限定されていたのだ)、大いに談笑、すこぶる充実した時間を過ごした。一人しづかにグラスを傾けることが多いので、こういう席にたまに加わると愉快である。

 そういえば打ち上げのほん少し前の日には、それこそ「一人しづかに」、しかも肉とワインでこれまた充実した時間を過ごしたのだった。二回目となるその「Macra」は今調べてみると実に二年ぶりだった。変わらず、少量のポーションで多種類の肉を出してくれる仕組み。「肉の鮨」なるこちらの提案が、ばっちり店のコピーに採用してくれていたのは嬉しかった(拙ブログ「修証一等」)。二年前はそれでもやや物足りなく感じたように覚えているが、今はまさしくぴったりの量。衰老の状思うべし。

 この日は、肉以上にワインを愉しんだ。ふだん好むボルドーより、トスカーナの二00七年産(銘柄は忘れた)で、サンジョヴェーゼを用いたのが中でも秀逸に感じた。ソムリエが「女性的」と言うとおり、なんとも柔媚な香りと舌触り。脇でこの店にふさわしからぬ低脳カップルがぎゃあぎゃあ騒いでいるのもいつか気にならなくなる(酔ったには非ず)。ただしこの阿呆カップルにもひとつ手柄あり。女の方が「人生悟ったような」と言ったのを男が「人生サボったような」と聞き間違えたのだが、このフレーズ、なかなか気に入りました。

 稼業や人付き合いを怠けるのではなく、生きること自体を、時に、ちょびっとサボってみる。いいですね。さてその折、脇にはトスカーナの赤が置かれているのか、それともそれさえもサボって、汲み立ての清冽な石清水が一椀置かれているのだろうか。

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 最近読んだ本。今回も感想は原則省略。ここでサボってはいけないのだが。

○ジャン・モリス『パックス・ブリタニカ 大英帝国最盛期の群像』(講談社
ミシェル・ウエルベックある島の可能性』(角川グループパブリッシング
○笹井良隆『大阪食文化大全』(西日本出版社
○中村圭志『信じない人のための「宗教」講義』(みすず書房
○ドナルド・ヒューズ『世界の環境の歴史 生命共同体における人間の役割』(明石書店
○スティーヴン・ミズン『心の先史時代』(青土社
○テリー・イーグルトン『宗教とは何か』(青土社
末木文美士『反・仏教学 仏教vs倫理』(ちくま学芸文庫
岩本裕『日常佛教語』(中公新書
池内紀『消えた国追われた人々 東プロシアの旅』(みすず書房
田中登・松村雄二責任編集『戦後和歌研究者列伝 うたに魅せられた人々』(笠間書院
ホルスト・ブレーデカンプ『ライプニッツと造園革命』(産業図書)
○バーバラ・エーレンライク、ディアドリー・イングリッシュ『魔女・産婆・看護婦 女性医療家の歴史』(法政大学出版局

 小説で面白かったのは、
四元康祐『偽詩人の世にも奇妙な栄光』(講談社)・・・えらく気張った推薦文がついているけど、瀟洒なコントとして読めばいいと思う。

偽詩人の世にも奇妙な栄光

偽詩人の世にも奇妙な栄光


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