聞くちから

 「南奔北走」の翌々日、『いたぎ家』アニー夫妻と遊び回った。いや呑み回ったというべきか。加納町の中華から始まり、神戸サウナ裏の立ち飲み、元町の鉄板焼き(でなぜか赤ワイン)、最後は三宮に戻って駅前の二四時間営業の居酒屋で三時半?まで。南北づいてるようである。次は上賀茂から九条までのしてみるか。


 呑んでるばかりじゃありません。
○奈良原纏『神々と植物 神が宿り、穢れを祓う草木』(神戸新聞総合出版センター発売)
○小川煕『イタリア12都市物語』(里文出版)
木村茂光『中世社会の成り立ち』(「日本中世の歴史 1」、吉川弘文館
○福島正樹『院政と武士の誕生』(「日本中世の歴史 2」、吉川弘文館
○八木久美子『慈悲深き神の食卓 イスラムを「食」からみる』(東京外国語大学出版会)・・・語り方にはもう一工夫ほしいけど、こういう視点からのイスラーム紹介というのはたいへん重要な仕事。それは、
中田考イスラーム法とは何か?』(作品社)・・・も同じこと。著者はムスリム。内部からの発信がもっともっと欲しい。
出久根達郎『万骨伝 饅頭本で読むあの人この人』・・・「饅頭本」とは葬式での配り本のこと。その人の伝記を知るのにはうってつけの貴重な情報が多いらしい。その「饅頭本」、あんまり登場しないのですが、滅法面白い。有名人は高村光雲や最近のはやりで言えば村岡花子くらい。でも市井に埋もれた偉人奇人の生き方のほうがむしろ興味深い。こういう本をいっぱい読んでいると、時代の横のネットワークが見えて認識に厚みが出てくるんだろうな。
○桑瀬章二『嘘の思想家ルソー』(岩波現代全書)・・・前に紹介したクッツェーの本からつながった本。本質的に「問題的」人間だったルソー。しかし、それは要するに近代的ということなのではないか。ね、G.R.ホッケさん?

明星聖子納富信留編『テクストとは何か 編集文献学入門』(慶應義塾大学出版会)・・・テクスト校訂という、一見「客観的」作業もじつは「なにを以て《テクスト》とするか」という枠組に左右されている。つまりは思想的営為なのである。
○畑中章弘『蚕 絹糸を吐く虫と日本人』(春秋社)・・・戦前のある時期まで日本最大の輸出品は生糸だった。昭和初期には、農家のじつに四割が養蚕を行っていたそうな。自然(桑を植え、蛾の幼虫を育てる)と経済ががっぷり四つに組んだ構図で、戦前の日本が丸ごと見えてくるようである。そこからは少し外れるが、蚕の天敵は鼠で、鼠の天敵は猫を筆頭に蛇、百足など。そういった虫獣が信仰の対象になっていくという連環が愉快。なんというか、あられもなく功利的(合理的?)なのだ。これは無知蒙昧というより、健全な精神の持ちようというべきではないか。薄い本だが、もっと詳しいヴァージョンで読みたい。ご存じのかたは教示の手間をいとはざれ。
○『七世竹本住大夫 私が歩んだ90年』(講談社)・・・住大夫師匠、意外と(と言えば失礼に当たるか)ぼんぼん育ちだったのですな。そして意外とつまらなかった。注して言えば、これはインタビューで構成された本。インタビュアーの力量によるのだろう。

 そう断定するのは、同じくインタビューを集めて作った本でめちゃくちゃ面白いものに出会ったから。

青山南編訳『作家はどうやって小説を書くのか、たっぷり聞いてみよう! パリ・レヴュー・インタヴュー』(岩波書店)・・・がそれである。訪れるほうが、ものすごく勉強して、しかも作家が語りたくなるように上手に質問を重ねているのが分かる。面白い箇所を引用したらいくら紙幅があっても足りないから、ともかくお読みあれ、とだけ申しておきます。翻訳もいい。

 今月中には、久々に双魚書房通信、発行できそうです。いい小説読むことができました。

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