タケノコ生活

 文楽四月公演(『妹背山婦女庭訓』)は色んな意味でキツかった。


 まず、これは行く前から予想がついていたことだけど、通しで見物したために最近悪化しつつある腰にえらく負担がかかる。第二部が終了して立ち上がったときは背中と腰に一万本ガラスの破片が刺さったのかと思った。周囲は当方の親よりも上の世代がほとんどだった中で、相対的ワカモノが顔をしかめて腰をもんでる姿は不格好きわまる。


 そう、周囲の観客の質にも、大げさに形容すれば暗澹とした。何もジイサンバアサンばかりなのがよくない、と言いたい訳ではない。むしろその反対で、未熟幼稚な若者ならばともかく、人生のベテランといってもいい層が、じつにくだらぬところで感心しているのですね。お三輪と橘姫との悋気あらそいとか杉酒屋の丁稚のチャリとかでうわーっと笑ったり、鹿の生き血を母の胎内に入れて生まれたから「入鹿」という名前が付いたという詞のところでおーっと声が上がったり。まあ、人がどこで感心しようと疝気筋に気に病む必要もないのだが、人形の振りにも三味線の手にも太夫の語りにも一向反応が無いように見受けられる(これも入鹿の高笑いのとこだけは大きな拍手が起こっていた)となると多少は見物の質を疑いたくもなる。あと、舞台上の字幕に見入ってる客も多かったな。あらすじやせりふの要点をさっくり説明してるならともかくも、縁語・掛詞などの技巧と先行文芸からの直接間接問わぬ引用が引きもきらぬような浄瑠璃の詞章をぱっと見たって分かるはずはないと思うんだけど。


 別段自分の鑑賞力を誇って言うのではない。こちらみたいにずぶっと浅い素人目にさえ惚となるような、柱に背を持たせた雛鳥の愁いの姿とか、苧環を背に決めたお三輪の思いの深さとか、定高の底の深いことばとか、そんな所で一向ジワが来ないのである。


 これは考えるに、いったん見物の文化が途絶えてしまった(こちらが推測するのは八十年代)ことによるのだろう。最近たとえば着物とか日本酒とかある種の地場産業今治のタオルとかね)が復活の機運にあるようだが、それらも本質的に、一度は死に絶えた伝統の仕切り直しのスタートに他ならないのと同じで、文楽も初めから客を育てていく必要がありそう。


 客だけではない。今や太夫のトップである豊竹咲太夫さんが病気休演すると、あとは皆中堅以下という感じ(素人の印象です)。三味線・人形はまだしも人数があるとはいえ・・・。住太夫さんのブーム(と言っていいだろう)が過ぎ去り(文雀さんも引退した)、簑助・寛治さんが引退した後、食いつぶすべき遺産はどれほどあるのか。


 とこれだけマイナスの材料がそろっていながらも、戯曲には感心したのだから、やっぱり近松半二はすごい。山の段の後で金殿の段が来るんだからなあ。ご馳走すんでまたご馳走。見ていてふと思ったのだが、官女が鱶七をからかう(が鱶七に撥ね付けられる)場面とお三輪が官女になぶられる場面、明らかに対照を狙ってますね。半二だったら絶対にそういう風に発想すると思う。


 あと、やっぱり入鹿の首が飛ぶほんとのラストは省略しないほうが良かった。



 それと、昼飯は絶対に、買って持ち込むべし。鯨馬は食事に係る難儀を経験していたから、今回は柿の葉鮨を買って缶ビールで悠々と食べることができた。


 さて話はがらりと変わって先週末、職場近くのオッサンが例によって大量の筍を持ってきてくれた(ミカンとか椎茸とか、なぜかなんやかやと職場に持ってくるオッサンなのである)。出勤者が少ない日だったので、当方があらかた引き取ることになる。これだけの量をアク抜きできるような鍋あったかな・・・と悩んでいると、受付のあねさん(大ベテランの主婦)が大根おろしの汁につければアク抜きできるわよ、と教えてくれた。初めから皮を剥き、適当な大きさに切って漬けとけばいいそうなので、大きな鍋は不要。


 早速試してみましたが、たしかに綺麗に抜けました。火力も使わず、火の番もせず、これは簡便な方法であります。一時間強漬ければいいので、当日のうちに食べられる。この日は天ぷらと木ノ芽和えでもりもり食べる。


 翌日は炊き合わせ。散歩がてら、久々に東山市場に足を向けてみると野菜がいい。目をむくような三ツ葉の大束百円。小躍りしながら三束を買い求めた。その他にも、うすい・アスパラガス・独活・わらび、後は鯛の子。


 で、炊き合わせは鯛の子・筍・わらび・うすい・高野豆腐。アスパラは天ぷら。三ツ葉はレモン醤油と鰹節でお浸し(ちょっとだけ山葵)。独活は胡麻酢で、残りのうすいは塩湯で湯がくだけ。ちょっと青めに仕上げたやつを箸で一粒ずつ摘まむと絶好の肴となります。

 弁当用に筍飯も炊いたのだがこれでも半分以上残っている。さて残りはどう料理したものか。
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