久々の味

 明日は休みというのに三宮へ出御あそばしませず、スーパーで買い出しを済ませていそいそと家に帰る。別に恋女房が待ってるわけではない。週末にあった四天王寺と天神さんの古本まつりでの買い物が段ボールで届くのである。多少重たくても気張って持って帰るつもりだったけど、久々の市でやはり浮かれ気分であったらしい。結果的には持って帰れないほどの量を買い込んでしまった。

 この二つの古本市は、場所も良いので特に心がはずむ。二〇一六年の大阪にあっても一等歩き甲斐のあるのはこの、四天王寺から谷町筋を北に上がるコースではないか。もっとも当方は両手にいっぱいの本を提げながら二つの古書市を掛け持ちという状況だったから、天王寺のぐるりで、家隆の塚と愛染さんを巡っただけで後は地下鉄に乗った。ちょっといけそうな食べものやと飲みやをまだ見つけられていないのを遺憾とする。ま、神戸から天王寺はなんといっても遠いですからね、頻繁に歩き回って馴染みの店をつくるという訳にはいかない。いや、三宮に出なければなんとかなるかしら。

 天神さんを出たのが四時前。この日夕飯を誘っていた友人が来られなくなったため、東西線に乗ってとりあえず福島に出る。なぜこんな半端な場所で降りたかというと、友人と「も少し福島を発掘しよう」と言い合っていたからである。ではあるが、午前からずっと古本の山を見て回るのはひどく疲れるもので、駅から出ると新規開拓の気も失せて鮨の『あま野』に電話をかけてみる。ま、予想したことながら、予約でいっぱい。こうなると余計にくたびれがのしかかり、折しも吹き始めた夕風の冷たさにくにゃくにゃとくずおれるようにして、福島天満宮側の『花くじら』なるおでんやに入った。じつはここも友人に以前聞いていた店だったが、「おでんで熱燗」の殺し文句が頭に浮かんだ瞬間、どうにもたまらなくなったのですな。

 えらい繁盛店らしく、四時半を過ぎたところというのに、店は客であふれんばかり。しかも前にはずらっと列が出来ている。
 おでんそのものは格別の味というほどではないけど、なにせ安い。今時コロが六百円で食べられるのは(しかもおおぶりのやつが串に二切れ付いている)、大袈裟にいうと奇跡にちかい。これでさっと入れるなら言うことないんだけどな。行列に並んでまでものを食うというのはどうもぞっとしない。

 古本市の本が届くという話でした。晩酌に燗酒を酌みつつ(こういう、急に寒くなってきた時候の晩には黒松剣菱の人肌燗がことのほかおいしい)、一冊ずつ収穫を確かめていくのは何よりの気分。恋女房よりいいものかもしれない。こんなこと言ってるからダメなのですが。

 この日はモガニと鱧。モガニとはモクヅガニのことで、つまりは上海蟹と同じことですから、ま、あれほどあぶらしたたる美味とは言わずとも、塩蒸ししたメスの腹のミソはじつに旨い。菊膾があればなおのことよろしかっただろうな。鱧は付け焼きと吸い物(大分で買ってきたクロモという香ばしい海草としめじと青柚)で。ゆっくり呑みながらだとすぐ腹が一杯になるので、それぞれ半分は明日の朝飯とする。野菜はまだ高直が続いてるが、料理するのがいっそう愉しみな時季になってきた。

 本の方は消化した分からまたご披露していきます。新刊で買った本や図書館の本のあるからなかなか進まない気はするけど。

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