「謎は解けた」のか?

 「読書にいそしむ」と言った翌日に、FFⅩⅤが発売になることを失念しておりました。コアなゲーマーではないけど、会社勤めの身でRPGをしていると結構プライベートの時間を喰われてしまう。またこの新作が、オープンワールドという作りになっていて、シナリオとは関係なくいつまでも釣りやキャンプで過ごせてしまう(だからまだクリアしていない)。


 CG?そりゃやっぱり綺麗でしたよ。オルティシアなる水上都市が、露骨にヴェネツィアをモデルとしているのが嬉しい。ゆっくりゴンドラで水路をたどる映像にはうっとりしました。難点は、登場人物たちの歯並びがなんだか不自然なこと。どうも某国次期大統領の口元を連想してしまって、ゲーム世界に没入しようとするのに具合が悪いのですな。追加コンテンツでの改善をつよく希望する。


 ゲームばっかりしてた訳ではない(と偉そうに言えるほど読んでませんが・・・)。

山口瞳選『人生の読本』(日本ペンクラブ編、集英社文庫
清水俊二『映画字幕五十年』(ハヤカワ文庫)
○アントニオ・G・イトゥルベ『アウシュヴィッツの図書係』(小原京子訳、集英社
○ヘルムート・コーイング『法解釈学入門』(松尾弘訳、慶應義塾大学出版会)
○シンシア・バーネット『雨の自然誌』(東郷えりか訳、河出書房新社
湯本豪一『図説・円と日本経済 幕末から平成まで』(国書刊行会
永井龍男『東京の横丁』(講談社文芸文庫
飯田隆『規則と意味のパラドックス』(ちくま学芸文庫
○フェルナンド・イワサキ『ペルーの異端審問』(八重樫克彦・八重樫由貴子訳、新評論)・・・ル・ロワ・ラデュリの名篇『モンタイユー』の南米版とも言うべき本。カトリックの坊主どもの堕落と腐敗が徹底して笑われる。

○ハニヤ・ヤナギハラ『森の人々』(山田美明訳、光文社)・・・引っかかる小説。単なる愚作ならわざわざ取り上げないが、どうもそうではなさそうな様子なので(曖昧な表現で申し訳ない)少し書く。※以降、ネタを割っています。要注意!
 さる南洋の島で不死の人々(凄い設定でしょう)を発見した学者が主人公。島での調査を回想する部分が物語の大半を占める。そのいわば外枠に当たるのが、主人公ノートン・ペリーナをめぐる裁判沙汰(島から連れ帰って養子にした少年少女への性的虐待疑惑)である。最後に真相が明かされるようになっているから、ま、ミステリー仕立と見ていいんだろうが、ペリーナがクロであることは読み始めてすぐ分かると思いますよ。「衝撃のラスト」なんて宣伝文句がついているけど、それは慈善家と見られていた著名な学者が未成年を強姦していたという、いわば社会倫理的にモンダイな事実なのであって、物語の論理としては少しもショッキングではない。
 なぜか。ペリーナが、いかにも卑小で歪んだ自己意識を持った碌でもない人間として、終始一貫描かれているからである。客観描写ではなく、ペリーナの語りが基調を成すにも関わらず、というかむしろそれ故にこの男のグロテスクな自己中心主義がいやが上にも強調される仕組みになっている。被害者の少年には悪いが、「そりゃ強姦するでしょう」と言いたくなる。不審なのは作者がどういうつもりでこういう書き方をしているのかが見えてこないこと。ヤナギハラ氏自身に見えてないとすれば、それこそ「単なる愚作」であろうし、ペリーナが体現する植民地的発想や人種的偏見、そして何より卑しい人間性を嘲笑するにしてはなんだかペリーナの語りに作者が絡め取られてしまっているようでもあるし・・・(イーヴリン・ウォーが登場人物を引きずり回す時の情け容赦ない手つきを思い起こしていただきたい)。
 嘲笑や寓意というなら、《不死》というとんでもないテーマ(これは貶しているのではない)の扱いもそう。ペリーナが学説を発表して以降、島の「文化」が「資源」と見做され、資本主義の食い物にされてみるみる荒廃していく有様を叙する部分はグローバリゼーションの諷刺ととれなくもないが、ペリーナ裁判というプロットとの関わりが余りに希薄すぎる。
 「圧倒的な世界観」なんてものすごい惹句を使った訳者にしても、もっと丁寧に解説する義務があると思いますよ(「訳者あとがき」からはほとんど情報が得られない)。
 ジャングルで遭遇する珍奇な動植物の、言ってみたら「幻想博物誌」的味わいは棄てがたいものがある。やっぱり次作に俟つよりないのか。


 軽い気持ちで読み始めた(誤解が無いように注しておくと、丁寧に書かれた、いい本です)
○青木直己『下級武士の食日記 幕末単身赴任』(ちくま文庫
があまりに面白かったので、本書の主役である酒井伴四郎なる紀州藩士の日記などを翻刻し解説した
○『紀州藩士酒井伴四郎関係文書』(小野田一幸・高久智広編、清文堂出版
も図書館で借り出して読んだ。伴四郎さんが酒好きでついつい飲み過ぎてしまうのを克明に日記に書いているのも愉快だし、また「叔父様」(であり上役でもある)の無神経な人柄に閉口している(またそれを隠さずに書いている)のも、幕末の人間と直に対話しているようで面白い。現代日本の小説はとんと読まない方なので、知らないけどこれを元ネタにした時代小説もきっと書かれてるんだろうなあ。



 最近美味しく食べたもの。
○『いたぎ家』の蛸のカルパッチョ・・・無農薬の田舎野菜を売りにする店で海鮮モノを挙げるにはいかにも鈍な選択だ。でも美味しかったんだからいいじゃない!これが梅肉ポン酢和えとかだったら「そうですか」で終わるところ、ぴしっと角の立ったソースを使ったのが良かった。家に帰ってから「あ、これはアニーの推す生原酒に合わせて味を選んだのであるな」と思い至ったのは我ながら迂闊なことだった。
○『海月食堂』の子持ち鮎の燻製とパクチーの和えそば・・・なんというか、イケナイ味である。人間のヤバイ部分を刺戟してくる味である。立て続けに頬張ったのを嚥み下したそばから「あぁーーっ」と叫びたくなる。
○『ARDBEG HIGHBALL BAR 』のエゾライチョウのロースト・・・事前に脅されていたようには臭くなく、むしろ爽やかな香りを堪能できた。細やかな旨味がいわば襞のように折り重ねられているのも面白い。これで今月末に山鴫を食べに行けばジビエ三部作は完結することになるのである。
○蟹糝薯の椀(蕪あん仕立て)、鰯と菊の手まり鮨・・・わはは。これは自作じゃ。

森の人々

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