師匠傘寿

 MuogOTのシャルキュトリの会、海月食堂とピエールのコラボの会、初めて行った中華のcuisineなどで美味しい料理に沢山出会った(それにしても、出不精の人間にしてはイベント参加が続いた)。本も珍しく小説をよく読んだ。

 とはいう個人的に煮詰まったひと月だったので、長々と綴る気になれない。先日あった恩師の御祝いの会のことを少し記して今月の拙ブログの責めをふさいだこととする。

 恩師は今月で八十、傘寿である。弟子一同で祝宴を持とうという話が出ていたのだが、これは諸々の事情で取りやめ。代わりに師匠のお宅で連句の興行を行うことになった。

 ご自身はもう召し上がらないが、門弟は猩々連。「酒三盃を過ぐすべからず」の戒めもものかは、どっさり用意した酒肴を愉しみつつ歌仙を巻いていくのが吉例となっている。

 問題は誰が酒肴を準備するか、である。一門の料理番たる泰平庵主人こと綺翁さんから「今回は君と二人でするから」と通達があった時には、横で野菜を刻んだり鍋を洗ってたりすりゃいいんだなと暢気に構えていた。だから一週間前に「助手はボクのほうだから」と言われて、かなりあせった。たとえば茹でタンを作るにも、仮漬けして本漬けして、茹でこぼして、とするのに日数が足りない。そもそも師匠や先輩諸氏(鯨馬は最年少世代)にどんな料理を出せばいいのかとんと見当が付かない。前述のように煮詰まっている時期なので、アタマが回らない。普段なら献立を考えるといくらでも時間が過ぎていくのだが。

 とはいえ、綺翁さんが魚の仕入れは担当して下さるとのことで、二人でどんな魚が今いいか、とやり取りしている内に、だいぶん考えがまとまってきた。

 句会は五時から。当方は午前中から湊川の市場に出かけて食材を物色。時化のあと、しかも中央の卸が休場だということを失念しており、ネタの少なさに茫然とする。なんとか鮑と蚕豆は買えたので、急いで家に戻り下ごしらえ。綺翁さんとは二時半に芦屋で待ち合わせ、調味料などをそろえて師匠邸へ向かった。大車輪でこしらえたのは以下の品々。

◎蚕豆のポタージュ・・・豆のピュレを、蛤の出汁とトマトウォーター(みじんに刻んだトマトをざるに置いてしたませた汁)で伸ばす。生クリーム少々。三つも旨味が重なるから味付けは不要である。蛤の塩気で充分。刻んだ胡瓜を浮き実にして、ディルを散らす。

◎鮑のサラダ・・・鮑は酒蒸しにして角に切る(固くならないように蒸し汁に浸けておく)。茄子は縦縞模様に皮を剥いて輪切りにしたものをオリーヴ油で形を残すように炒める。赤・黄ふた色のパプリカは素焼きにしたあと、鮑と同じ大きさに切る。モロッコインゲンは柔らかめに湯がき、これも同じ大きさに。出す直前に、オリーヴ油・辛子・シェリービネガー・砂糖(少々)・胡椒のソースで和える。

◎烏賊の木の芽和え・・・綺翁さんが仕入れてきたのは、枕の如き甲烏賊。斜め十字に包丁を入れてそぎ切りにしたやつを半生に茹でる。和え衣は赤味噌・黒胡麻を摺ったもの・木の芽・粉山椒。烏賊の甘味を引き立たせるために、酒や味醂は入れない。また、もちもちした食感を残すために、大ぶりに切る。

◎チヌのソテー・・・フィレには軽く塩胡椒し、皮目を極低温で、皮がかりっとするまで焼き上げる。身の方は鍋肌に当てず、下からの熱だけで火を通す。ソースは、チヌのアラから作ったフュメで、炒めたマッシュルームと粒玉蜀黍をさっと煮て、クミンシードを加えたもの。

 あとは綺翁さんが焼き豚と手打ち蕎麦を持参。あと牛肉の塊を焼いたもの。慣れない台所だと、段取りを細かく考えるのでかえってスムーズに作れたようである。。

 句会のほうは、予想通りの高歌放吟杯盤狼藉。歌仙の出来はというと、ま、当方が捌き役として巻いてる連衆は、場数を踏んでいるだけあってやっぱり上手いなあ、と思いました。ともあれ、師匠も奥様もお元気そうで、本当に良かった。参加者全員がそれを心から喜んでいるという雰囲気が、とても心地よかった。
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