鯛をにらんで

某日 初春文楽公演で『摂州合邦辻』を観る。織大夫を襲名した咲甫大夫さん熱演。それにつけても竹本津太夫鶴澤寛治(先代)のコンビの「合邦」は凄い(前日DVDを観ていた)。命がけ、という感じである(この時寛治は八五才)。


 文楽劇場のロビーに、黒門市場寄贈のにらみ鯛が飾ってあった。むろん立派な鯛を選んでいるのだが、説明書きに、正月の二十日にはこの鯛を餡かけにして食べたとある。はて二十日といえば、「骨正月」と唱えて掛け鯛の骨を骨湯にして飲む日じゃなかったっけ?


 気になったので帰宅して調べて見ると大阪府下一円に餡かけで食う風習があったのだそうな(『大阪の民俗』)。鯛はもとより大いに好む。この時季は餡かけの嬉しいこと言うまでも無し。という訳で、当日東山市場に鯛を仕入れて餡かけにしました。鮮鯛では本来の形・趣旨とは異なるのですが、そして新しい鯛のほうが旨いとは思うのですが、ここは風情を重んじて半身(骨付き)にばさばさと塩を振ってきつめに〆ておく。


 その分、餡かけの味はごく薄めに。鰹・昆布で引いた出汁に酒を振って淡口は色づく程度。あしらいは新筍、餡には鳴門若布を細かく刻んだのを混ぜる。一月後半で筍やら若布やら使うのも邪道なんだけど。やっぱり春浅し、という気分は初午のお膳からかな(当ブログでも何度か出ています)。


 ながらく本の記事を書いてなかった。だいぶ溜まっておりますゆえ、次回あたり双魚書房通信を更新するのでいつも以上に簡略な書き方をお許しあれ。  ★は面白かった本。

数学セミナー編集部『100人の数学者 古代ギリシャから現代まで』(日本評論社
○ストラパローラ『愉しき夜 ヨーロッパ最古の昔話集』(平凡社)★
小玉武『美酒と黄昏』(幻戯書房
ジョーゼフ・ジョルダーニア『人間はなぜ歌うのか? 人類の進化における「うた」の起源』(アルク出版)
四方田犬彦『ひと皿の記憶 食神、世界をめぐる』(ちくま文庫
○丸山宗利『昆虫こわい』(幻冬舎新書)…この「こわい」は『饅頭こわい』とおなじ用法。
○藤本強『埋もれた江戸 東大の地下の大名屋敷』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館
高橋智書誌学のすすめ 中国の愛書文化に学ぶ』(東方選書、東方書店
○池上洋一『美しきイタリア 22の物語』(光文社新書
山口昌男内田魯庵山脈 「失われた日本人」発掘』(晶文社
○松田隆美『煉獄と地獄 ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』(ぷねうま舎)★
ジョヴァンニ・ボッカッチョ『名婦列伝』(瀬谷幸男訳、論創社
モーリス・センダック『わたしの兄の本』(柴田元幸訳、集英社)…センダック最後の本。
松田浩他『古典文学の常識を疑う』(勉誠出版
○青木直己『和菓子の歴史』(ちくま学藝文庫)
川本三郎『君のいない食卓』(新潮社)
○佐藤至子『江戸の出版統制  弾圧に翻弄された戯作者たち』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館
○清水多吉『『戦争論』入門 クラウゼヴィッツに学ぶ戦略・戦術・兵站』(中央公論新社)★
○ファブリツィオ・グラッセッリ『ねじ曲げられた「イタリア料理」』(光文社新書)…ピッツァはイタリア料理ではない!ま、あんなモノ、端から興味がないからどうでもいいのです。
橋爪大三郎大澤真幸『げんきな日本論』(講談社現代新書)…おふたりとも、かしこいんですね。
○岩佐美代子『京極派と女房』(笠間書院
池内紀『記憶の海辺 一つの同時代史』(青土社)…池内さんの自伝です。★
中島岳志親鸞と日本主義』(新潮選書)…切り込みが甘いなあ。それに書きぶりにもあまり感心しない(今さら小林秀雄の『モオツアルト』でもあるまいに)。魅力的な主題なのだが。
松本健一『「孟子」の革命思想と日本 天皇家にはなぜ姓がないのか』(論創社)…「清和源氏は藤原家の出である」なんて細部の間違いはこの際見逃そう(実はこういうことを平気で書き飛ばす書き手は信用しない)。しかし「天皇家はある時点で姓を捨てた」という著者の直観、なんだか倒錯してると思うんだがなあ。元々姓という概念が無いところに氏姓制度で臣下にカバネを与えてるうちに、いつの間にか周囲が姓を持つようになって、無い状態を特権化したと見る方が自然ではないですか。
○小川剛生『足利義満』(中公新書)…たとえば右大将という地位が武家にとっていかに重要だったか、など当時の“空気感”を丁寧に説明してくれるのが有り難い。それにしても、側にこんなヤツおったらやだね。まあ、義満をとりまく連中もたいがい強烈なのだが。小説のネタ本にも。★
ノルベルト・エリアス『エリアス回想録』(大平章訳、叢書ウニベルシタス、法政大学出版局
○コスタンティーノ・ドラッツィオ『カラヴァッジョの秘密』(上野真弓訳、河出書房新社
○ジョン・リード『世界を揺るがした10日間』(光文社古典新訳文庫)★
オリヴァー・サックスタングステンおじさん 化学と過ごした私の少年時代』(斎藤隆央訳、ハヤカワ文庫)
鈴木貞美『『死者の書』の謎  折口信夫とその時代』(作品社

 

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