めっきり連句興行も少なくなった。消閑の手すさびに最近は俳句を作る。近作ふたつ。
野分してすぢりもぢりとこの列島 碧村
野分の朝叛徒等處刑せられたり
○小沼丹『不思議なシマ氏』(幻戯書房)・・・たまにはこういう膝カックン的な小説、いいなあ。
○フレデリック・ルノワール『スピノザ よく生きるための哲学』(田島葉子訳、ポプラ社)
○フレデリック・マルテル『ソドム バチカン教皇庁最大の秘密』(吉田晴美訳、河出書房新社)・・・これでもかこれでもかというハリセン調。たまにはこういう扇情本、いいなあ。
○堂本正樹『回想 回転扉の三島由紀夫』(文春新書)
○木村妙子『三木竹二 兄鴎外と明治の歌舞伎と』(水声社)・・・いい評伝。ついでに石川淳『前賢餘韻』なぞも引っ張り出して読む。読書はこういう形で展開するのがよろしい。
○ホッブズ『リヴァイアサン』(角田安正訳、光文社古典新訳文庫)・・・実はまだ読んでなかった(『ベヘモス』はなぜか読んだ)!
○苅部直『基点としての戦後』(千倉書房)
○ベン・ハバード『図説 毒と毒殺の歴史』(上原ゆうこ訳、原書房)・・・読んでるときに、またもノビチョクによる暗殺事件あり。
○レザー・アスラン『人類はなぜ〈神〉を生み出したのか?』(白須英子訳、文藝春秋)・・・神は徹頭徹尾人間の自己投影である、というテーゼからスタート。多神教⇒一神教⇒汎神論という、目も彩なばかりの弁証法的展開に鼻白むが、イスラエル人が徐々にヤハウェを「唯一神」に仕立てていったという仮説は興味深い。面白く読めたが、我が神道なぞはどうなるのか。宗教以前ということか。
○坪内祐三『みんなみんな逝ってしまった、けれど文学は死なない。』(幻戯書房)・・・結局物書きとして何がしたい人だったのだろう(『靖国』は立派な仕事です)。谷沢永一的なコラムニストが求められなくなった時代に生まれ合わせたのが不幸だったということか。そうかな。
○井上順孝『世界の宗教は人間に何を禁じてきたか』(河出文庫)
○荒俣宏『新編別世界通信』(イースト・プレス)・・・『ジャーゲン』のサブテキストとして。中学生のときに読んで分からなかったのも宜なる哉。
○川北稔編『イギリス史上下』(山川出版社)
○マイク・サヴィジ『7つの階級』(舩山むつみ訳、東洋経済新報社)
○小倉孝保『100年かけてやる仕事』(プレジデント社)
○デイヴィッド・ロッジ『作家の運』(高儀進訳、白水社)・・・やっぱりブッカー賞をめぐる内幕が面白い。
○大宮勘一郎・橘宏亮『ハインリッヒ・フォン・クライスト 「政治的なるもの」をめぐる文学』(インスクリプト)・・・ご贔屓クライストの、しかも『ミヒャエル・コールハース』も取り上げられていたので嬉しい。この出版社、気合い入ってるねえ。
○J.B.キャベル『ジャーゲン』(中野善夫訳、国書刊行会)・・・『夢想の秘密』『イヴのことを少し』と日本語で読める「マニュエル伝」の中ではこれが一等性に合った。“ファウストの遍歴”モノが好きなんですな、結局。せりふなどは大分凝っている(優雅にして慇懃無礼)と思われるが、もう少し訳文はなんとかならなかったものか。
○水野祥子『エコロジーの世紀と植民地科学者』(名古屋大学出版会)