水無月獺祭

 

 ひと月ぶりの更新。いい店何軒かを見つけたが、それは別の機会に書きます。とりあえず溜まってた読書メモから。年数積もると、コレステロールと同じように、「生きてることの塵(垢?)」と言うべきものが嵩を増してきて、暢気ブログを更新する閑暇さえなくなってくる。もっと閑人たるべく心がけねば。

 

○内藤裕史『ザ・コレクター 中世彩飾写本蒐集物語り』(新潮社)

○松田裕之『港都神戸を造った男 《怪商》関戸由義の生涯』(星雲社

○スティーブン・ビースティー、リチャード・プラット『ヨーロッパの城  輪切り図鑑 中世の人々はどのように暮し,どのように敵と戦ったか』(桐敷真次郎訳、岩波書店)・・・『13世紀のハローワーク』のグレゴリウス山田さんご推奨。絵本なのだが、確かに細部の詳密さがすごい。

佐々木健一編『創造のレトリック』(勁草書房

○ワイリー・サイファー『ロココからキュビスムへ』(河村錠一郞訳、河出書房新社

○前田勇『近世上方語考』(杉本書店)

○小川剛生訳注『正徹物語』(角川ソフィア文庫)・・・『兼好法師』(中公新書)ですっかりファンになった。この人の切れ味で、定家偽託の歌学書の注釈なんて、出ないかなあ。

柄谷行人柄谷行人書評集』(読書人)

ミシュレ『世界史入門 ヴィーコから「アナール」へ』(大野一道編訳、藤原書店)

橋本直樹『食べることをどう考えるのか』(筑摩書房

窪島誠一郎『粗餐礼賛 「戦後」食卓日記』(芸術新聞社)・・・外食に出ない日はマメの炊いたのやらお浸しやら干物やらで充分満足する鯨馬ながら、「粗餐礼賛」と言われるといたたまれなくなる。

○宮下規矩朗『美術の力 表現の原点を遡る』(光文社新書)・・・新書だが、ずっしり重い本。美術史家なのに本当に絵画に感動することはなくなった、信仰も喪ったとのっけから言い切ってしまう(なぜそうなったかは各自この本を読んで諒解されよ)。にもかかわらず、表現のまさしく「原点」を幻視する透明な叙述にヤラれてしまう。なにせ神社に奉納された人形や、死刑囚の描いた作品まで絡め取ってしまうのだから。宮下ファンにとっては辛い本ながら、お勧めです。

○武井弘一『茶と琉球人』(中公新書)・・・「茶」でなくてもよかったような。

○ウォルター・アルバレス『ありえない138億年史 宇宙誕生と私たちを結ぶビッグヒストリー』(山田美明訳、光文社)

加藤徹『怪力乱神』(中央公論新社

ホラーティウス『書簡詩』(高橋宏幸訳、講談社学術文庫

○長谷川在佑『傳 進化するトーキョー日本料理』(柴田書店)・・・十年後、二十年後のヴィジョンがはっきりしてるのがすごい。

○松浦壮『時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体』(講談社ブルーバックス)・・・無論、「時の正体」は分からないまま終わるのだが、叙述が明晰で読める。筆力のある人なのではないかな。

○大島幸久『名優の食卓』(演劇出版社

佐藤彰一『剣と清貧のヨーロッパ 中世の騎士修道会托鉢修道会』(中公新書)・・・騎士修道会の代表的なドイツ騎士団は原プロイセン人を皆殺しにし、托鉢修道会の主力であるドミニコ会は異端審問で活躍することになる。「革新」とはこうならざるを得ないのか。

○ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』(田内志文訳、東京創元社「海外文学セレクション」)・・・悪魔と「逢った」牧師の伝記(自伝とその事実を探る記述との混合)という体裁で書かれた小説。「悪魔」はおそれおののく主人公に「魂を奪ったりはしない」と言うのだが、それは当然のことで、このギデオン・マックなる男ははじめから《魂を持たない》人間なのだ。背中がうすら寒くなるようなブキミなやつである。もう少し喜劇的な味つけがあれば、かえって深みが出たと思う(歴史家である辛辣な老女との交遊や彼女の葬儀の場面では多少ある)。

青柳いづみこ『青柳瑞穂 骨董のある風景』(みすず書房大人の本棚」)

○古田亮『日本画とは何だったのか 近代日本画史論』(角川選書)・・・「近代日本画」というジャンルで見るかぎり、たとえば鉄斎は単なる異端になってしまう(おかしくないです?)。洋画とか日本画とかで分類しない、「近代日本の美術史」は書けないものか。

○ノエル・キャロル『批評について 芸術批評の哲学』(森功次訳、勁草書房

○工藤隆『大嘗祭 天皇制と日本文化の源流』(中公新書

○南直哉『超越と実存 「無常」をめぐる仏教史』(新潮社)

宮田登・坂本要編『仏教民俗学大系8 俗信と仏教』(名著出版)

○ジェラードラッセル『喪われた宗教を生きる人々 中東の秘教を求めて』(亜紀書房編訳、「ノンフィクションシリーズ」)・・・ほとんどページごとに「へえっ」となる本だった。ゾロアスター教ドルーズ派などはまだメジャーな方で、当方なぞ聞いたこともない宗教がぞろぞろ出て来る。中東は宗教のモザイク地帯だったのだ。バグダッドにはある時まで世界最大のキリスト教会があったなどの情報が満載。

 

 しかし誰が何と言おうと、何も言わなくても、今回最大の収穫は、

 

                                                            

○ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク『リヒテンベルクの雑記帳』(宮田眞治訳、作品社

 

 

であります。こういう本が生きてるうちに日本で出版されるとは夢にも思わなんだ。人生の最後の段階まで伴侶に出来そう。大冊だな・・・と敬遠気味の人は池内紀さんの訳になる平凡社ライブラリー版(名訳です)をお買いあれ。作品社版のオビにあるとおり、ズボンを二本持ってる人は一本を質に入れてでも、結婚してる人は女房を(あるいは亭主を)を叩き売ってでも、酒呑みの人は禁酒・・・は難しければビールを発泡酒に変えてでもお買いなさい。女房(亭主)を売ったカネで百冊(は大丈夫だと思いますが)買って、友人諸氏に頒ち与えなさい。

 

リヒテンベルクの雑記帳

リヒテンベルクの雑記帳

 

 

 

リヒテンベルク先生の控え帖 (平凡社ライブラリー)

リヒテンベルク先生の控え帖 (平凡社ライブラリー)

 

 

 

 

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