うつせみ

最近は取りつかれたみたいに八戸ばかり。で、なんとなく青森の方はあっさりとした付き合いという感じだったが、今回は二軒もいい店に出会えた。一泊で二軒というのはかなりの打率ではないでしょうか。

一軒目は古川の市場近くにある立ち飲み屋『十七番』。これは夜ふらつきながら見つけた。しかも開店してまだ二日目。こういう発見の仕方が堪らない。メニュー豊富で何よりお昼からやってるのが嬉しい。次は向かいにある本店(?)の『JustinCoffee』からニボリタン(煮干し入りナポリタン)の出前取ろうっと。

二軒目はイタリア料理の『AlCentro』。青森の名店であり、今更ことごとしく出会いというのは当方が鈍だっただけの話。でも素晴らしかったな。アスパラのパルミジャーノなぞ、のたうちまわるような旨さでした。徹底して青森の食材で揃えてるのも気持ちよく、また一体に、鮑と蕪、甘鯛(松笠焼き)と茄子、また帆立と焼きリゾット(洒落た焼きおにぎりみたいな)など、食感の組み合わせが楽しい。シェフの顔つきもいい。値段は仰天するくらい安い。今度は倍以上払って心ゆくまで食べまくりたい(空港行きのバスの時間が迫っていたのだ)。

 次の旅を思うと気もそぞろ、まるで神戸で仕事をし、炊事洗濯している自分がまぼろしのようでもある。


池上俊一『ヨーロッパの想像界』(名古屋大学出版会)・・・学術的「超」大著なのだが、澁澤龍彦種村季弘の文業に親しんできた人間ならすらすら読める。宮下規久朗さんが「池上氏の集大成」とどこかで言ってらした。まさしくその通り。これで九千九百円はいかにも安い。今回はこれが紹介できればもうそれでいいようなものである。
○J.B.キャベル『イヴのことを少し』(垂野創一郞訳、国書刊行会
○本多不二雄『神木探偵』(駒草出版
○フィリップ・ポール『人工培養された脳は「誰」なのか』(桐谷知未訳、原書房
○『武田百合子対談集』(中央公論新社)・・・ああ、『富士日記』読み返さねば。これをしないと夏という感じにならない。
○森川裕之『京ぎをん 浜作料理教室 四季の御献立』(世界文化社)・・・FBであげましたが、この胡瓜もみは発見でした。
佐伯彰一『作家の手紙をのぞき読む』(講談社)・・・上手いなあ。別に技巧的な名文というのではないのに読ませる。文学史的雑知識がちりばめられ、文学史的スケッチがあちこちに出てくるが、篠田一士ほど水っぽい感じはしない。
橋本治『九十八歳になった私』(講談社)・・・爆笑哄笑のうちに読み終える。合掌。
清水義範『考えすぎた人』(新潮社)
○イザベラ・トゥリー『英国貴族、領地を野生に戻す』(三木直子訳、築地書館
○アリス・ロブ『夢の正体』(川添節子訳、早川書房
鈴木棠三『日本俗信事典 植物編・動物編』(角川文庫)
○三谷博『日本史の中の「普遍」』(東京大学出版会
○アンデシュ・ニューマン他『性的虐待を受けた少年たち』『性的虐待を犯した少年たち』(太田美幸訳、新評論)・・・性的虐待の被害者は加害者になる、という俗説がまさに俗説に過ぎないことがよく分かる。21世紀の世界は合理主義どころか、神話論理の横行する「中世」だということも透けて見える(このコロナの空騒ぎひとつとってもよく分かるが)。
○久水俊和・石原比伊呂『室町・戦国天皇列伝』(戎光祥出版)・・・一般向けの読み物とあって、研究者が苦心してそれぞれの天皇の個性を浮き彫りにしようとしている。日本史の授業では「色々おりました」で済ませるところが、これほど個性強烈な面々ぞろいだったとは。それにしても、朝廷と幕府と有力守護と寺社勢力とがちんちんもがもがやっていた室町って面白いなあ。なんだか江戸時代の勉強しながら、もひとつハマりきれなかった理由が分かった気がする。

 そして、ようやく読みました!

安田謙一『書をステディ町へレディゴー』(誠光社)・・・これは夏季休暇で、冷房の効いた部屋でひっくり返って読むべき本であった。音楽関係の情報はほとんど訳わからんのだが、なんだろうこの心地よさ。鯨馬と生活圏(とゆーか漫歩圏か)が重なっているみたいなので、どこかで著者と遭遇することを期待してます。ちなみに、なんとなくうらびれたオッサンを想像してたのですが(失敬!)、裏見返しの写真を拝見するに、めさダンディーなオジサマだったのが、またなんか外された感じで、これも笑えた。

 さてそろそろお盆。皆様は如何お過ごしの予定ですか。鯨馬は夏の休暇(といってもたかだか四日)に備えて、若島正さんの『乱視読者』シリーズをチェックしなおして書名をリストアップし、また新訳が出た『モーセ一神教』、それにアランの芸術論ふたつ(『芸術論20講』『芸術の体系』、いずれも光文社古典新訳文庫)を入手しております。それと高橋宏幸さんの手になるオウィディウス『変身物語』(西洋古典叢書京都大学学術出版会)第二巻も。これはイキがよくて、大古典も愉しんで読めます。あとはビールと酒とワインとシェリーとバーボンとラムと・・・。

 

 

ヨーロッパ中世の想像界

ヨーロッパ中世の想像界

  • 作者:池上 俊一
  • 発売日: 2020/03/05
  • メディア: 単行本
 

 

 

書をステディ町へレディゴー

書をステディ町へレディゴー