パン屋へ三里 豆腐屋へ二里

 板宿暮らしにだいぶん馴染んできた。前のマンションは一人住まいを始めて最も長くいたところだったから、引っ越しして一月半でここまで来たのは随分早い。と思ったが、自分が馴染めそうな町を選んで移ったのだから、まあ当たり前ともいえる。

 馴染めそうと感じた一番の理由は無論(と強調したい)、飲み食いする店が多いこと。大資本のチェーンも当然あるのだが、小体な個人経営のところが多いので気に入った。三宮みたいに、食べログミシュランに載って大流行り(してすぐ廃れるまたは味が落ちる)ということもなく、いつも地元の客でそこそこ繁盛してるという按配がよろしい。

 雨の昼下がりにお湯割りをすする店、じっくり旬の肴を味わう店、店主との会話を愉しむ店、とことん呑むための店、と自分なりのコースも出来てきた。

 そうそう、駅前の中心街に八百屋・魚屋などの市場の名残が頑張っているのも嬉しい。店のオバチャンに太刀魚の煮付けの作り方を聞いたその足で、若くてイケメンのコーヒー屋で好みの豆を買うことも出来る。

 これでそこそこの古本屋と、日本酒をしっかり揃えている酒屋があれば申し分ない。まあ気長に探すとするか(詳しい方は御示教惜しみ給はざれ)。あ、今回の題名ですが、多井畑厄神前の天然酵母パン『味取』さんにも、東山市場の『原豆腐店』さんにも原付でシュッと行ける、という意味であります。


○キャロリン・A・デイ『ヴィクトリア朝 病が変えた美と歴史』(桐谷知未訳、原書房
○ハロルド・ヘルマン『数学10大論争』(三宅克哉訳、紀伊國屋書店
○スーザン・グルーム『図説 英国王室の食卓史』(矢沢聖子訳、原書房
○赤松明彦『ヒンドゥー教10講』(岩波新書
宮脇孝雄『洋書ラビリンスへようこそ』(株式会社アルク)・・・ロレンス・ダレル(贔屓の小説家)の伝記が紹介されていたので、さっそくAmazonでポチる。
寮美千子『ノスタルギガンテス』(エフ企画)
○『ルイ・ボナパルトブリュメール18日』(植村邦彦訳、平凡社ライブラリー)・・・岩波文庫の訳文は相性が悪く、この版でようやくしっかり読めた。ナポレオン3世というつかみどころのない「怪帝」(鹿島茂)を相手にマルクスがイライラしてる感がよく分かる。それにしてもやはり扇動家としては一流ですな、マルクス
○ジル・フュメイ他『食物の世界地図』(柊風舎)
○スチュアート・ファリモンド、辻静雄料理教育研究所『スパイスの科学大図鑑』(誠文堂新光社
○アンナ・シャーマン『追憶の東京』(吉井智津訳、早川書房
○『和辻哲郎座談』(中公文庫)
○岡本裕一朗『哲学と人類』(文藝春秋
○三谷康之編『事典 イギリスの民家と庭文化』(日外アソシエーツ
○辛嶋昇『インド文化入門』(ちくま学芸文庫