わにとワクチン、お岩さま~九月雑纂

★たまたま週に二度、動物園に行った。一度目は王子動物園。二度目は天王寺。どうしても比べてしまうのだが、大きさで劣るのは仕方ないけど、我が王子動物園、もう少し展示に清新で動物も元気が出るような工夫が出来ないものか。天王寺は真上を高速道路、真横にJRと極端な悪条件の立地にもかかわらずこせつかなく見えるようにかなり計算が行き届いているように思う(ただし悲惨なところは悲惨である)。

☆はじめてシネマ歌舞伎なるものを見た。当然劇場は神戸国際松竹。串田和美演出の舞台『四谷怪談』を映画用に編集したものらしい。七之助のお袖が可憐。国生時代の橋之助の声も良かった。もっと古い時代のアーカイヴをどんどん流していただきたい。

★ワクチン接種一回目がようやく終了。於ノエビアスタジアム。これでもかというくらいバイトのコがいるのにびっくりする。日本的ニュー・ディール政策か。ともかく三メートルおきに矢印が貼ってあるのに「こちらです~」なんて声張り上げられてもなあ。こちらが阿呆のようでなあ。

☆お誘い頂いて、阿倍野区民ホールの『染丸まつり』へ。襲名三十周年記念だそうな。主治医の許可が出たとのことで、最後には師匠が車椅子で登場。お元気そうで何より。

吉川一義『『失われた時を求めて』への招待』(岩波新書
○林田慎之助『幕末維新の漢詩』(筑摩選書)
遠藤ケイ『男の民俗学大全』(ヤマケイ文庫)・・・・・・こういう名著こそ文庫化にふさわしい。
田中優子他『最後の文人 石川淳の世界』(集英社新書
赤沼多佳他『唐物茶碗』(淡交社
○サンダー・エリックス・キャッツ『発酵の技法 世界の発酵食品と発酵文化の探求』(水原文訳、オライリー・ジャパン
○チャールズ・テイラー『世俗の時代』上下(千葉眞他訳、名古屋大学出版会)
ウンベルト・エーコウンベルト・エーコのテレビ論集成』(和田忠彦訳、河出書房新社
○ゴンサロ・M・タヴァレス『エルサレム』(木下眞穂訳、河出書房新社
エルメス財団編『Savoir&Faire 木』(講談社選書メチエ
高山羽根子『うどん、キツネつきの』(創元SF文庫)
安野光雅『日本の原風景』(山川出版社
アンドレ・モロワ『文学研究 Ⅰ』(片山敏彦訳、新潮社)
中村勘九郎勘九郎とはずがたり』(集英社文庫
中村翫右衛門『芸話 おもちゃ箱』(朝日選書)
○清水克行『室町は今日もハードボイルド』(新潮社)・・・乱世というより多元的・多層的権力構造。ヨーロッパ中世と同じ。これに比べるとパクス・トクガワーナは均質で退屈・・・と思ってしまうが、いやいや近代国民国家のつるつるした一元世界に比較すれば近世なぞは充分に「自由」があった、とも言える。
高野秀行・清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』(新潮文庫
種村季弘『水の迷宮』(国書刊行会)・・・・・・ちくま文庫泉鏡花集成』(全十四巻)の解説が収録されたのが特にありがたい。
三浦展『花街の引力 東京の三業地、赤線跡を歩く』(清談社Publico)
ウィリアム・フォークナー『土にまみれた旗』(諏訪部浩一訳、河出書房新社
○森明彦『食べられる草ハンドブック』(自由国民社
○石弘之『砂戦争 知られざる資源争奪戦』(角川新書)・・・・・・いや確かに、コンクリートでビル建ててるうちはそりゃ砂不足になるわ。世界各国で砂輸出禁止が相次いでいるらしい。インドでは砂マフィアが強大な裏権力で、ジャーナリストや警官を何十人も殺しているとか。ちなみに、砂漠の砂は形状・性質(アルカリ)のために建築に不向きなのだそうな。ここを突破できるかどうか。
○岡崎守恭『遊王徳川家斉』(文春新書)・・・子女は五十人いて「オットセイ将軍」と渾名されたことは知っていたが、子を一門・有力諸藩に送り込んで、「一橋幕府」(王朝と呼んでもよいのではないか)を構築したと言われるとナルホド、と思う。「遊王」とは幕府正史にある表現です。
○エルンスト・カッシーラー『国家と神話』上(熊野純彦訳、岩波文庫)・・・・・・門外漢ながら、カッシーラーの著作には比較的親しんでいる。旧訳版の本書(訳者・宮田光雄)初読から二十年(?)ぶりで読み出すと、不審なくらいすらすらと頭に入る。多少は年功重ねたためか。訳文の恵みか。だけにあらず。カッシーラーはナチという野蛮な「神話」の記憶生々しい時期にこれを書いたのだが、現在ネット・SNSの普及はあらたな迷妄を生み出しつつある(「新たな中世」の到来を言ったのはたしか蓮實重彦)。異なる文脈でも痛切に読み込めるのはやはり名著の証。
○山本勉『完本仏像のひみつ』(朝日出版社
日下三蔵編『ラビリンス「迷宮」 ディアナ・ディア・ディアス新井素子SF&ファンタジーコレクション3(柏書房

 

あ、出ましたよ、『記憶の図書館 ボルヘス対話集成』(垂野創一郎訳、国書刊行会)。垂野さんがブログで力説してらっしゃるとおり、これで7,480円は高くない高くない。どうせ酒飲む店もないんだから、この一冊買ったとて高くもなんともない。