時次郎気分

 なんで更新しなくなったのか考えてみた。
(1)中年の鬱
(2)同じような内容が増えてきた(行事食とかね)
(3)FB、Instagramなどで既に記事をあげている

 しかしよく考えれば、
(1')中年のあとは初老・老年と鬱期が続くのだから(痴呆になったら天国やもしれぬ)
(2')そもそも行事食は繰り返しに価値がある。続けてるという報告もそれとして大事
(3')多分こんな極楽蜻蛉ブログをお読みくださる方はSNSとの重複を気になさらないはず

 と開き直ってやっていきます。

 てわけで、今年の節分記事。といっても、五日が初午だったのでまとめて行事食。

大福茶……昆布・へぎ梅(小梅漬がないので)・山椒(湯がいて冷凍しておいたもの)を煮出す。実は節分でなくても、二日酔いの一発目によく用いてます。
*赤鰯……①フィルムで脱水、②酒に塩を溶かして浸け込む、③二日ほど風干し。ぷりっぷりに脂ののった生鰯よりこちらの方がらしくてよろしい。無論大根おろしや生姜なぞは添えず、ぼりぼりやるのです。
*豆漬……炒り豆はどうもね・・・でも豆ご飯にするにも飯は炊いたばかりだし、という己の都合で豆漬を取り出す。青森が誇る板柳町の毛豆(甘く、コクがある)を固めに湯がき、鷹の爪を入れた塩水のなかで発酵させる。何度も塩水を替えていけば年明けまで充分保つのだが、今年は手抜きして冷蔵庫で作った。低温ながらさすが半年経つとほどよい酸味・旨味がのってきており、冷や酒・燗酒の下物として最高。
*煮〆……初午は元来江戸の民間信仰。なので、ここは“お揚げ”ではなく”あぶらげ”と言いたい。稲荷鮨にするという手もあったが、ここはひとつ『明烏』の若旦那にあやかろうてんで、お煮〆でいく。具は里芋とあぶらげだけ。出汁は鰹。味醂に濃口で調味。いつもの、昆布・酒・淡口でないところに、江戸の下層階級らしい野鄙な雰囲気が出たとする。そんなことしなくても充分野鄙という声もありますが・・・。
*若菜の辛子和え……芹、ほうれん草、三つ葉と色々あるなかで一等江戸っぽいのが小松菜。白味噌などは用いず、辛味噌・辛子、若干の醤油でつーんと仕上げる。
*けの汁……節分とも初午とも無関係な津軽の郷土料理。小正月に大量に作る(ダンナがヨメのために作る)。用は具だくさんの味噌汁。拙宅では、大根・人参・こんにゃく・牛蒡・高野豆腐・干し蕨・干しぜんまい・蕗・打ち豆(通常は摺り大豆)。全部同じ大きさに切るのが結構大変だけど、あとは出汁の昆布も焼き干し(煮干しなんかよりはるかに上品で香ばしい)も入れっぱなしだし、具が煮えたら味噌を溶くだけ。あとは何日も煮返せるし、酒のあてにもなる。

 おせちが一面ベタ塗りのめでたさであるのに対し、節分・初午の料理はいかにも寒中らしく、しかも春待つ風情があって(若菜辛子和えなど殊に)贔屓である。

 さて、如月後半といえばアレです、アレ!末頃にはご報告出来るかと思います。

○陸田幸枝『古くて新しい日本の伝統食品』(柴田書店
ウンベルト・エーコ『中世の美学 トマス・アクィナスの美の思想』(和田忠彦他訳、慶應義塾大学出版会)……ようやくエーコの本領の翻訳なる。カントに比べるとトマス、じつに「現実」的である。
○カレン・アームストロング『血の畑  宗教と暴力』(北條文緒他訳、国書刊行会
○深沢眞二『芭蕉のあそび』(岩波新書)……丁寧な論証・明快な説明で、「古池」句その他の有名句の解釈はほとんど腑に落ちた。「作者自身が解釈を変える」という仮説が面白い。しかしそのぶんだけ、「晩年に向かって成熟」という《まじめな》芭蕉像を描いてしまっているようにも思う。再びしかし、それは本書の欠陥ではない。
ラムジー・キャンベル『グラーキの黙示 クトゥルー神話作品集2』(サウザンブックス社)
○高橋英理『日々のきのこ』(河出書房新社)……『月面文字翻刻一例』に引き続き、幻想小説でまたいい本に出会えた。充分に堪能した上でしかし、他ならぬこの日常から何やらん妖しく蠱惑的でおぞましいものが顔を出すような小説がしみじみ読みたい。こういう《世界構築》系の想像力は、ちょっと食傷気味ではある。
○吉岡乾『フィールド言語学者、巣ごもる』(創元社
○アラ・コルバン編『雨、太陽、風』(小倉孝誠訳、藤原書店
○ピーター・マシーセン『黄泉の河にて』(東江一紀訳、作品社)……短篇集。表題作がいい。いまだに黒人を俟つこと甚だ酷な南部に、東部のインテリかつリベラルな夫妻が観光にやってくる。黒人の待遇に憤った観光客がふと行った善意の行動が、静かな沼に一石を投げ込んだようにどんどん波紋を広げていく。
山口雅也『落語魅捨理全集 坊主の愉しみ』(講談社
山口雅也『狩場最悪の航海記』(文藝春秋
リチャード・マシスン『不思議の森のアリス』(仁賀克雄訳、論創社
アーシュラ・K・ル=グウィン『私と言葉たち』(谷垣曉美訳、河出書房新社)……「リアリズムのフィクション」及び東海岸の文壇及び出版コマーシャリズムに対し、ジャンル・フィクションをまことに正々堂々と擁護する。うん、全然作風は異なるけど、この率直にして頑固な(褒めてる)物言い、批評を書くときのスティーヴン・キングと似ている。やはりイギリスでもフランスでもないアメリカ作家かたぎというものがあるはずなのだ。
青柳いづみこショパン・コンクール見聞録 革命を起こした若きピアニストたち』(集英社
○八木沢敬『ときは、ながれない 「時間」の分析哲学』(講談社選書メチエ)……今回も愉しませてもらいました。
岩崎夏海・稲田豊史『ゲームの歴史』1~3(講談社
○橋本陽介『中国語とはどんな言語か』(東方書店