Z世代のジュリエット

中村禎里『狸とその世界』(角川ソフィア文庫)……ジャケ買いならぬタイトル買い。信楽焼の太鼓腹は、近世に流行した円相の墨蹟(禅機を示すためにマルを書く)の反映ではないか、そこには禅の風狂儒学の枠組みのなかで隠逸・矯激として受容された江戸中期の思想史的転換が関与していたのではないか、など面白い考察が次々。理系の研究者らしく、がんがんデータをクロスチェックした上で推論していくのが痛快。
◎角田房子『増補改訂版 甘糟大尉』(朝日文庫
本村凌二『「われらが海」の覇権 地中海世界帝国』(地中海世界の歴史6、講談社選書メチエ)……著者の専門領域だけに本巻はちょっと調子乗りすぎの感もあるけど(たとえば、ティベリウスに対する評価はあまりに「醜聞作家」スウェトニウスにのっかりすぎてない?)、まあ、ともかくこのシリーズを単独で書き続けられるというのがすごい。素人読者はこういう形で「歴史」を愉しみたいのである。
大塚ひかり『悪意の日本史』(祥伝社新書)
◎酒田十四代『「よお!さかたさけだ」ー酒五訓とこぼれ話ー』(文芸社)……読まなくても良かった・・・。
◎船山信次『日本人と植物 衣食住から毒と薬まで』(原書房)……読まなくても良かった・・・。
◎岸澤美希『やさしい民俗学』(淡交社)……読まなくても良かった・・・。
◎越純一郎『都々逸の世界』(彩流社)……読まなくても良かった・・・。
◎ユベール・ヴェドリーヌ編『外交官が変えた世界史』上下(土居佳代子訳、原書房)……タレーラン贔屓としては、こういう本が出たら読まずにはおれない。ただし翻訳の出来はサンタンたるもの。原文見てないのでこれは憶測だが、誤訳だらけだと思う(少なくともまともな日本語ではない)。原書房の本ではこういうハズレは少なからず。
バーバラ・ピム『よくできた女』(芦津かおり訳、みすず書房
南條竹則『文豪の食卓』(春陽堂書店
◎テリー・イーグルトン『悲劇とは何か』(大橋洋一訳、平凡社)……待ってました、本日の秀逸!訳者もいうとおり、悲劇における近親相姦テーマの分析が圧巻。あとスタイナーの『悲劇の死』よりも心配りが優しいのが嬉しかった(念のため付け足しておきますが、スタイナーの本は名著です)。イーグルトンの闊達(でときに身もふたもない)な語り口って、評論を書くときのスティーブン・キングに似ている、と思う。
◎北村紗衣『学校では教えてくれないシェイクスピア』(朝日出版社)……生徒に『ロミオとジュリエット』の演出案を考えさせる章が面白い。小説の解釈させるより、よっぽど生徒も愉しめるのではないか。あ、でもシェイクスピアだからこそこの趣向も生きるのかも。ラシーヌでもチェーホフでもこうはいかない。
◎スネザナ・ローレンス『若い読者のための数学史』(田邊誠訳、すばる舎
◎ロブ・ボディス『痛みとは何か 歴史・文化・医学の視点からその本質を探る』(山田恵子他訳、大修館書店)
◎『解明!ニセ科学の正体』(彩図社

 

 

 

昼河豚

 個人的にはいちばん好きな時季。でも、この寒さでは客の出控えがないか魚が揚がるかなど気のもめることばかり。開けてみると杞憂に過ぎず、料理はほとんど売り切れで、相方Rinと文字通り足取り軽く家路につきました。有名ブロガーのわさびさんや、姫路・市川からお越しのご夫婦など、常連さん以外にも嬉しい方々をお迎えすることが出来て嬉しうございました。

◎《今月の白和え》干し椎茸・干し柿・こんにゃく・菜の花……季節外れの食材はなるべく避けるようにしてるが、この菜の花は大寒波のなかにまだまだ遠い春の気分を探る、という趣向。
◎しっとり塩レバー……今回は白ねぎ・胡麻油・粉山椒でアクセント。
◎アミ塩辛と大根のとろり煮……小説家檀一雄(個性ある料理の作り手としても知られる)の本に出てくる。味付けはアミのみ。下茹でもしない。それなのにこの深い味・・・酒呑みが作る料理はやっぱり酒に合う。
◎ぶり蓮根……はじめは鯛かぶら風の淡味の煮物を考えていたが、「甘辛」系(すき焼きみたいな)の料理がひとつもないことに気づいて調理法を変更。粉をはたいた鰤と蓮根を油焼きしたあと、清酒・濃口・味醂・砂糖(とちょっぴりの酢)のタレをからめた。先月あるひとが食べログで当方の料理を「高くて量が少ない」と貶していた(美味しいとも書いてたけど)が(そうです、まだ根にもってます)、刺身で使う鰤をブロックで買ってるんですから、たしかに量は少なくはなります(立ち飲みでアテが山盛りなのを歓ぶのはどうかと思う)。さすがにわさびさんは量や値段にはふれず、味をしっかりと論評して下さっていた。

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わさびのブログさんが投稿したかるむ(兵庫/湊川公園)の口コミ詳細 [食べログ]

◎牛すじ豆腐……これはぶり蓮根とは違い、昆布・かつおの出汁と清酒。塩・淡口の白っぽいつくり。食べしなに青ねぎ・とろろ昆布、それと七味。
◎黒豆麹漬け……黒豆を炊いたあと(味はつけない)、塩・淡口・辛子で調味した麹床で一週間ほど。ご想像のように激シブの品だけど、調理師学校の栄養学の先生が絶賛して下さった。インターネットのどこかで見たおぼえがあるのだが、その後元ネタがどこか見つからず、自己流で作ってみたので内心不安だった(そんなもん出すな!)だけに余計嬉しい。
◎味噌漬け豆腐……一ヶ月ほど漬けていたもの。食べるというより嘗める感じで酒、とくに燗酒をすすませる。
◎鯖のいずし……これも先生のお褒めにあずかった。塩漬けし、軽く塩を抜いたあと酒・酢に数時間ひたす。あとは大根や生姜などを混ぜた漬け床で二週間。これは寒波がいい感じにはたらいて、綺麗に漬け上がりました。
◎長芋にんにく醤油漬け……新にんにくを漬け込んでる醤油で数時間。すりごまをぱらぱらふって。
◎菊芋のキムチ……ヤンニョムには定番のアミ塩辛の他、するめいかの塩辛もいれてコクを出す。
◎豆漬け……発酵させた枝豆。秋から半年、塩水で発酵させている。マメを食べたあと、サヤをちゅうちゅうしてるだけでも呑める。
◎小芋のきのこペーストのせ……舞茸は低温調理するとグアニル酸が増えるらしい。処理した後、他のきのことともに擂りつぶし、オリーブオイルで炒める。味付けは塩胡椒だけ。
◎豚タン・ハツ煮込み……自家製の赤味噌でことことと。味は見た目ほど濃くはない。
あんこうのとも和え……ぶり蓮根や下のさつま汁とならんで今回の主役級は福島や茨城の郷土料理。茹でて擂ったあん肝(味噌と砂糖で味付け)で、身や皮、内臓(これも茹でておく)を和える。手はべたべたになるけど、骨周りをしゃぶると極楽の味。それにしても、原価が高い。
野沢菜のペペロンチーノ……神戸では珍しく野沢菜の生が手に入った。一晩、醤油や味醂で漬けたあと、ベーコン・にんにく・鷹の爪と炒める(無論オリーブオイル)。
◎たらのひろうす……これも出典忘れ。ミンチにした鱈の身を水切りした豆腐・木耳に混ぜ、塩胡椒で味付け。オリーブオイルで焼く。これはRinの評したとおり、ひろうすというより鱈と豆腐のハンバーグですな。旨かったけど。
蒸し鶏菊菜ソース……菊菜は生のまま、米油・粉チーズ・塩とフードプロセッサーでソースに。菊菜の苦みがいい感じ。言うまでもなく目をうつような鮮烈なみどり色。managazzoの料理、茶系統が多いのでいいアクセントになってくれた。
◎自家製ごまどうふ……定番のわさび醤油は夏向きだな、と思って、出盛りの柚子で作った柚子味噌をかけた。Rinと地味だから売れなさそうやね、と話していたところ、予想に反していちばんの売れ行き(で売り切れ)。今もってその理由をはかりかねている。なんででしょうね?
白味噌仕立てのさつま汁……この冷え込み・この時季だから普通は粕汁だろう。でもヘンクツはそうはしないのである。ぶつ切りの代わりは手羽元。ま、あとは粕汁の材料と大差ないんですが(さつま芋が入るくらい)。白味噌も無論自家製。三つ葉をたっぷり添える。屋外で食べたらなおさら旨かっただろうなぁ。

 相方の「スペシャリテ」、今回は
◎ガツの冷製串……ボイルしたやつを串に。酢醤油・青ねぎ・七味。
◎ヒラマサのにんにくぬた……葉にんにくがなかったそうで、高知県のアンテナショップで買ったにんにく味噌をかけてた。
 Rinも料理考えるのを愉しんでくれているようで、嬉しい。

 当日は深夜までウチ吞みするのが吉例。でもこの日はあっさりお開き(それでも二時まで吞んでた)。翌日てっちりをむさぼり食うという計画があったからである。大仕事の翌日、日の高いうちから、時折粉雪が舞う下界を眺めつつ、清酒三種類を飲み比べつつ(一本はRinのお母様に頂いた)、最愛の友人と、むさぼり食ったてっちりの味は、ご想像にお任せする他ありません。

睦月獺祭

鴻巣友季子『小説、この小さきもの』(朝日新聞出版)……鴻巣さん渾身の小説論。最近読んだばかりの『「細雪」の詩学』などに混じって師匠の著書(『三人称の発見まで』)が出て来て懐かしかった。
原武史『日本政治思想史』(新潮選書)
◎『ネオ立ち飲みのはじめかた』(柴田書店)……ううん、こんなオシャレな店ははじめられませんな。みんないくらとってはるねやろか。
札埜和男大阪弁の深み』(PHP新書
秋元康隆『その悩み、カントだったら、こう言うね』(晶文社
◎今井美沙子・今井祝雄写真『わたしの仕事』(理論社
◎和田忠彦『「見えない都市」を歩く』(NHK出版)……カルヴィーノ『見えない都市』は我が鍾愛の書。そしてヴェネツィアはそこで行き倒れたい街。手に取らない訳がない。単なる文学散歩ではなく、風土と文学の内的な関連をしなやかに語っていく風情がいい。
ジョゼ・サラマーゴ修道院覚書 バルタザールとブリムンダ』(木下眞穂訳、河出書房新社
吉田秀和『音の世界のそのことを』(音楽之友社)……久々の吉田節。若い頃はかなり明確に否定的だったショパンチャイコフスキーもやさしく扱われている。円熟?
◎『日本の正月料理』(聞き書ふるさとの家庭料理20、農山漁村文化協会
◎澤井啓一『荻生徂徠の世界』(ぺりかん社
◎尾久彰三『愉快な骨董』(晶文社
◎アラン・デュカス『アラン・デュカス、美食と情熱の人生』(田中裕子監訳・西山明子訳、早川書房
◎林以一『木を読む』(小学館)……こういう「職人」聞き書きが大好物。木の個性を語る口調がいかにも楽しげで、よい。あたまいい方なんだな、と思う。
◎斎藤正二『日本人と植物・動物』(雪華社)
◎トニー・デュヴェール『小鳥の園芸師』(山田稔訳、白水社)……アルフォンス・アレー『悪戯の愉しみ』の訳者が気に入っただけあって、どの掌編もエグくてしかも飄々としている。ショーン・タン風の味わいもある。
仲正昌樹自由民主主義入門講義』(作品社)

 今月は「おべんきょ」の本が多い。

鈴木博之『ロンドン 地主と都市デザイン』(ちくま新書
◎川戸貴史『商人の戦国時代』(ちくま新書
◎チャールズ・フォスター『人間のはじまりを生きてみる 四万年の意識をたどる冒険』(西田美緒子訳、河出書房新社
スティーブン・ピンカー『21世紀の啓蒙 理性、科学、ヒューマニズム、進歩』上下(橘明美・坂田雪子訳、NEWSPICKS・草思社
ジャレド・ダイアモンド『危機と人類』上下(小川敏子・川上純子訳、日本経済新聞出版社
レベッカ・ストット『進化論の知られざる歴史 ダーウィンとその〈先駆者〉たち』(高田茂樹訳、作品社)
◎ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス』上下(柴田裕之訳、河出書房新社
本村凌二『沈黙する神々の帝国 アッシリアとペルシア』(地中海世界2、講談社選書メチエ
◎スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー『ヤバすぎる経済学 常識の箱から抜け出す最強ロジック』(望月衛訳、東洋経済新報社
◎スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー『ヤバい経済学 悪ガキ教授が世の裏側を探検する』(望月衛訳、東洋経済新報社
◎ヨアン・P・クリアーノ『異界への旅 世界のシャーマニズムから臨死体験まで』(桂芳樹訳、工作舎

三十年前のこと

 こうしてこんな文章を書けてるくらいだから、もとより致命的な打撃をこうむったわけではない。それでも三十年といえば、白面の文学青年が煮ても焼いても食えないオジンになりおおせるくらいの年月には違いない。他人様と集って追悼の回顧のと麗々しい(と見えてしまうのだが)のはニンに合わないが、せめて当ブログでなりと記憶をまとめておくことにする。

 あの頃はヘビースモーカーなのだった。缶入りピースを一日で喫ってたりしていた。日が昇り、部屋じゅうに散乱した本を目にするにつけ、どう片付けたものかと思案に暮れて、その時住んでいたアパートの階段でとりあえず、とばかり煙草を咥えていた。

 大学に入った年だったから、無論今ほど本を持っていたわけではなかったけれど、本棚が文字通り宙に浮いてでんぐり返る光景を思い出すと今でもリツゼンとする。その日、朝方までゲーム(FFだったかな?)をしてそのままコタツで眠り込んだから、普段布団を敷く部屋(壁はぐるりと本棚)が一瞬で滅茶滅茶になるのに巻き込まれずに済んだわけだった。

 はじめに記したとおり、火災がおこったわけでも倒壊したわけでもないから、被害といっても髙がしれている。今にして思えばーというのは実はその時点で戦後最悪の自然災害だったということを知った上での「遠近法」で偏りが入った見方なのだがー至極暢気なもので、晴れがましいような青空の下、一階下の一人暮らしのおばあちゃんの部屋の片付けを手伝ったり、同じく年代記もののアパートに住んでいた友人の無事を確かめに行ったりと、”何にもすることがなくなった”時間を奇妙に弾んだ気分で、そう、それなりに愉しんでいたように思う。

 南大阪の実家も結構揺れて、慌てて息子に電話(もちろん固定電話)したところが不通、はじめは「料金滞納して止められたんだろう」と笑っていたところ、現地の状況が報道されるにつけ「あのアパートだから倒壊して命を奪われていてもおかしくない」と真っ青になった、という話を後から親に聞かされた。

 アルバイト先の居酒屋に駆けつけると、店主は茫然としている。営業再開のめどが立つはずもない。アルバイトでかつかつ食っていた勤労学生はこのまま神戸にいたところでどうしようもなく(水道やガスもいつ復旧するか分からないし)、さすがに自分、というより神戸が陥った状況を認識し、実家にしばらく戻ることにした。

 かろうじて阪急が動いていた西宮北口まで、歩くほかない。十年程前、思うところあって全て処分したから、道中「これは記録しておかねば」と撮って回った写真(ケータイにあらず)をみながら描写することは出来ないが、本当に、ものの一キロ東に行くだけでどんどん光景が日常のものになっていくことがなんとも面妖で仕方なかったことは憶えている。大阪に着くと、着替えを詰めこんだバッグを二つも三つも背負っている自分が、まるで終戦後からタイムワープした人間みたいでどうにも具合がわるかった。

 この感覚こそが、自分があの日に得た一等貴重な教訓だったように思う。人間はおしなべて流謫の境遇にあり、日常の底はいつでも抜けるものだ、ここは自分がいるべき(いていい)場所ではないという感覚。

 あれから結局三十年神戸に住み続けて、はて三十年後は一体どこに「流謫」されているのだろうか。

ラプソディー・イン・紅&白

 予想していたとおり(当ブログ「師走獺祭」)、年末年始の前半は27・30日のかるむ営業でてんてこ舞いとなった。よく考えるまでもなく飲食業はこれを毎日なさってるわけですが、連休取ったなかとはいえ勤め人にとっては、まあ、なかなかのタスクとなりました。それでも終わりよければ全てよし。二日とも牛が汗びっしょり棟が傾くくらいの来客となり、おかげさまで良い年越しをすることが出来ました。

 こんなけ奔走(年の瀬で買い物からして大変だったのです)・苦心(発酵モノは時間がかかるので同時並行で進めないといけないのです)した上は、出した料理はひとつ残らず記しておきたい。

【十二月二十七日】
★《今月の白和え》舞茸と菊菜と人参…やっぱり菊菜は白和えに合うなあ。最近舞茸を含めてキノコの旨味(グアニル酸)の引き出し方を勉強してるので、これからキノコ関連のメニューが多くなるかも。
★しっとり塩レバー
★おさしみアンチョビ…3回目のお座敷。塩水に浸けておくので、毎回冷蔵庫の場所ふさげとなって難儀する。
★あさりとほうれん草のおひたし
★芥子菜と牛の塩昆布和え
★柿なます…名残の柿で。もちろん甘いのだけれど、意外と冷酒のアテになる。
★じゃがいもとしらすの柚子胡椒なます
★なんきんといりこの胡麻和え…いりこは田作り風に作って、なんきんと合わせる。ちょっとお節風。
★たこの小倉煮…かるむ初回で出したもの。甘味は極力控えて炊く。でもやっぱり小豆だからかなりどっしりした味になる。
★油かすとこんにゃく炊いたん…
★いもぼう…これもお節風。お節風とはいえ当日食べきりだから、たっぷりの出汁でゆっくりゆっくり煮含めたあと、淡口と清酒でなるべくうす味に。
★鮭のこうじ漬け…十二月割合気温が低くなったので綺麗に漬かった。発酵を看板にしてるのでこういう品が評判いいとやっぱり嬉しい。
★乳酸発酵豚と白菜漬けの辛子和え
★たらこの粕漬け…たらこは塩漬⇒塩出し⇒酒浸しのあと、味噌を混ぜた漬け地で五日、ご想像のとおり、清酒の下物として恰好。
★鯛昆布〆の千枚漬け巻…これも年の瀬の風情。千枚漬けも自家製。甘酢に漬ける前に乳酸発酵させている。
★百合根のグラタン(帆立・白子入り)…初の試み。ソースまで作っておき、店でココット容器に詰め、注文があるごとにレンジアップしてからトースターで焦げ目を付けた。オペレーションうまくいったのでこういう焼き物系はもっと出してみようと思う。寒い時季だしね。もっとも年末でなければこれだけ原価はかけられない(涙)。
★ローストビーフ…ローストとは言い条、低温調理で。ソースは味醂と濃口とバターを煮詰めたのにホースラディッシュ味醂は島根の酒蔵「李白」で作ってる上等のもの。少しでもよく効く。
★鳥もつ燻製…燻製も意外と初めてだった。ウィスキーオークのチップを使ったので、ウイスキーの香りが・・・しないでもないような気がする。という仕上がりでした。もう少し勉強して参ります。
★あん肝
★なまこぽん酢…橙が買えたのでそれで〆た。柚子とは違った橙の直線的な酸味と苦み、なまこと合うんですよねえ。
★芝えびのすり身で作った江戸風玉子焼き…お節風。本当の「江戸風」よりは甘味を抑えて焼いている。

 

【十二月三十日】
★《今月の白和え》ひじきとさつまいもとピーマン
★菊花胡桃和え…前回はたしかふつうの食用菊(黄色いやつ)を使った。今回は山形の「もって菊」やっぱり香りの高雅さが違う。
★壬生菜漬・日野菜漬と蒸し鳥のわさび和え…当初は壬生菜だけのつもりだったけど思ったより壬生菜が売っておらず、急遽日野菜も投入。怪我の功名で、日野菜蕪の歯触りがいいアクセントとなった。
穴子と水菜の炊いたん…いい穴子を、いもぼうと同じちょっと上等の出汁で。水菜は歯ごたえを残すように(はりはり、ゆうやつでんな)湯がいたあと出汁に浸して一晩「しゅませる」。
★蓮根真砂和え…蓮根は昆布出汁で下茹でしておく。あとはほぐした明太子と和えるだけ。
★にしん昆布巻き…無論お節仕様。市販のものは甘辛すぎるから酒呑み用にうす味で。
★どて煮…今回は八丁味噌だったが、寒いうちは関西風に白味噌のでもいいね。
★かぶらずし…今回のメイン料理。はじめてだったので、前日樽を開けるまではびくびくものだった。鮭こうじ漬と同じで、気温の低さが幸いして上々の漬け上がり。「余ったぶんは全部買い取る!」とおっしゃって下さった方もいて、作り手としては嬉しい限り。
★長芋辛子漬け…意外と人気。
★かずのこわさび漬け…人参・大根・胡瓜は塩で下漬。結果売り切れたのですが、見た目はマカロニサラダそっくりなので、前半は出足が遅かった。今度から大鉢に名前を書いとこうかしら。
★豚の西京焼き…料理自体は変哲もないものだが、西京味噌は自家製。正月の雑煮もこれで仕立てました。
★まぐろばくだん…年の瀬ということで珍しい生モノも。醤油麹と納豆(ひきわり)を混ぜたタレに白ねぎと焼き海苔をあしらって。あっという間に売り切れ。
★鳥松風焼き…これもお節ですね。『吉兆味ばなし』で学んだとおり、ミンチにはレーズンを混ぜます。
★豊年なます…紅白なますに田作りを混ぜて。
干し柿バター…これもmanagazzoデイお初の甘味。干し柿の優しい甘さ、酒にも合います。

 Rinのスペシャリテは水餃子とひねどりの昆布〆(炙って出す)。

 以上のほか、この日はおでんも炊いた。練り物(平天・ごぼ天)は丸八蒲鉾、厚揚げは原商店と少しだけ材料おごりました。

 1日目の手伝いははじめての子で、初回として出来る限り動いてくれていたのだが、何せ次から次へと来店があるなか、正直ヤバくなりかけていたところに白馬の王子様が降臨した。言うまでもなくいつもの相方Rinで、この日はお客としてきていたのだが、後半は(見るに見かねて)ずっと働いてくれた。もちろん三十日の前日から仕込みを手伝ってくれ、当日は嵐のような注文もそう遅滞なくこなせるように支えてくれた。本当に感謝しかない。ありがとう、Rin。

 

あけましておめでとうございます

 相変わらずの芸無しブログですが、本年もどうぞよろしくお願いします。

 年頭吉例の干支狂歌二種。

ひのえうま元旦
はつゆきの峰に広ごる大檜の枝うまざけさげて友と集はむ

競べ馬一題
皐月から正体とうに有馬せぬ菊花浮かべて呑む白馬に

師走獺祭

 この年末年始は久々に十連休取れた。ずーっと読みふけっていられるような大著大作ないかなあ。ま、前半はかるむ連チャンでそれどこころではないのだけど。

◎景山春樹『比叡山』(講談社学術文庫
◎立野淳也『ヴードゥー教の世界 ハイチの歴史と神々』(吉夏社
◎マイケル・エメリック『てんてこまい』(五柳書院)
◎周作人『日本談義集』(木山英雄訳、平凡社東洋文庫
◎クリストファー・クラーク『夢遊病者たち 第一次世界大戦はいかにして始まったか』1・2(小原淳訳、みすず書房
◎岡本裕一朗『思考実験大全』(イーストプレス
五街道雲助『雲助おぼえ帳』(朝日新聞出版)……なんだか余り動かない目玉がコワくてすごく面白い噺家、とは思っていなかったのですが、最近は変わってきたのですかね。ともあれ人間国宝認定、おめでとうございます。
◎マット・ブラウン『あなたが知っている英国はすべて間違い』(風早さとみ訳、原書房
◎ブノワ・フランクバルム『酔っぱらいが変えた世界史』(神田順子他訳、原書房)……原書房が出す「○○○の世界史」シリーズ(?)は、陰謀論なんちゃうかこれと思うくらいいかがわしくそして面白い。今回も「交尾に失敗したオスバエの前にアルコール入りとそうでない餌をおくと入りにまっすぐ向かう傾向がある」とか「チャールズ1世の妃キャサリンは、おやつの時間にビールが出されるのに辟易して紅茶を導入した」とか「バルチック艦隊の士官は飲み過ぎで漁船や味方艦船を砲撃しまくった」とか(ね、面白いでしょ)、知ってても何の役にも立たないが、しかし酒席(無論知的な会話を好む向きと一緒のとき)で持ち出すにはもってこいという話柄がてんこ盛り。少なくとも我が人生航路に関して言えば、「酔っ払」うことによって大いに変わっているだろう、と思う。
若島正『殺しの時間』(バジリコ)
都築勉丸山眞男への道案内』(吉田書店)
◎トマス・ディクソン『感情史』(森田直子訳、白水社
マリオ・バルガス=リョサ『激動の時代』(久野量一訳、作品社)
◎重田園江『社会契約論』(ちくま新書)……たいへん明快。この学者さんの他の本も読んでみたい。
朝井リョウ他『作家の口福 おかわり』(朝日文庫
釈徹宗若松英輔『宗教の本質』(講談社現代新書) 
◎榎本海月・榎本事務所『空想世界をつくる理科の教科書』(技術評論社
◎スティーブ・スチュワート=ウィリアムズ『宇宙の広さを知ったサル 心と文化の進化論』(加藤智子訳、みすず書房
◎宮辻政夫『花のひと 孝夫から仁左衛門へ』(毎日新聞社
渡辺保渡辺文雄歌右衛門 名残の花』(マガジンハウス)
柳家小さん川戸貞吉『五代目柳家小さん芸談』(冬青社)……これ、芸談なんかなあ。。。それより聞き手が作成した芸能界の年譜が面白かった。
◎野村育世『蜘蛛 なぜ神で賢者で女なのか』(講談社選書メチエ
◎小川剛生編注『正宗敦夫文集2 ふぐらにこもりて』(平凡社東洋文庫)……正直、正宗敦夫その人の文業にさして興味はなかったけど、編者の名前で手に取った。ともかく、この学者、出来る。贔屓なのです。
◎野崎充彦訳注『慵斎叢話2』(平凡社東洋文庫