2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

怪物の復権―『怪物ベンサム』〜双魚書房通信⑨〜

フーコーが例の本で華々しくというのも変だが、ともかく派手にぶちあげた結果、ベンサムといえばパノプチコンの発明者というのが通り相場になってしまった。 間違いはないが、それ以外の側面に関してはせいぜい「最大多数の最大幸福」という功利主義のスロー…

獨酌に対酌

久々に『山荷葉』(一年ぶり!)に行く。ご主人の板垣さんは変わらぬ笑顔で出迎えてくれた。献立は以下の如し。付 せんな(山葵茎)、白魚 椀盛 胡麻豆腐、あこう(?)、筍、三度豆、柚子、桜葉 造り 鰆、障泥烏賊 焼物 真魚鰹塩焼 八寸 蒸し鮑、甘海老酒盗…

雨と月とで葡萄酒を呑む記

二一世紀の日本で、白内障の治療技術がどれほど発達しているかはしらないが、ろくな麻酔も消毒薬もなかっただろうと思われる江戸時代に、ある人物の白内障を治してみせた医者がいた。その名を谷川良順・良益・良正という。見てわかるとおり三兄弟である。 杉…

ロマンチックなる酒

酒(これはアルコール入りの飲料という意味)はいつでも美味しくいただくが、酒(これは清酒を言う)はやはり寒いうちがいちばん風情があってよろしい。もうお彼岸前という時季でも余寒というかどうか、知らないがともかく暮れ方からの冷え込みに乗じて『播…

安曇野の孫行者―双魚書房通信かな?

旅行だなんだで先週はろくに読めなかった。夕食は牡蠣入り玉子焼き(葱を大量に入れる)とあんかけ豆腐で簡便に済ませ(この時はビール)、その後焼酎のお湯割りをちびちびなめながら積み上げていた本を片付けていく。 まずは竹内薫『科学嫌いが日本を滅ぼす…

芭蕉追跡〜山中温泉独吟の旅(その三)〜

加賀温泉から金沢までは普通列車でゆく。そのままサンダーバードに乗って帰神、という手もあるが、せっかくここまで来たのだからやっぱり金沢には寄って(逆方向だけど)行きたい。 といって、もう何度も来ているから格段ここをみたいということもない。ただ…

芭蕉追跡〜山中温泉独吟の旅(その二)〜

ともあれまずは一風呂。浴衣に着替えて浴場に向かう。露天風呂からは眼下に谷川を見下ろせる(くどいようだがここも敷地の内)。山はまだ冬木立のまま。三月初旬とはいえ、町中ではないのだ(仲居さんの話によると、今年はやはり気温が低いらしく、例年なら…

芭蕉追跡〜山中温泉独吟の旅(その一)〜

今回は長いですよ。ご用とお急ぎのない方はどうぞ。 目下連句に夢中になっていることは、このブログでも何度か書いたが、ついに芭蕉の跡をたずねて山中温泉まで行ってしまった。 というのは半分だけ真実で、残り半分は以前から心惹かれていた宿に泊まりたか…

書かない言い訳。

まだ寒の戻りはあるだろうけど、春一番も吹いたことだし、そろそろ冬の食材を整理しておかねばと思い立って、白味噌の汁を作る。 出汁は昆布のみ。具は粟麩と菜の花。煮えたところで丹念にアクをとる。食べるときには、汁でゆるくといた辛子を具の上にかける…

幻の梅

逸翁美術館の特別展示は惜しいことをした。呉春の「白梅図屏風」を見たいとかねがね思っていたので、今回の『2012早春展』はちょうどいい機会だったのだが、都合がつかない日が多くてずるずる過ごしているうちに終了。 しかしまあ、目をつりあげて勢い込んで…

芹の周りに

寒い寒いといいながら、やはり春だなあと思った。スーパーで、大好物の芹がかなり安くなってきておる。辰巳浜子によれば芹は「二月一杯」らしいのだが今年は名残どころか、そもそも走りの芹も見なかったような気がする。 さて、安いとはいえ貴重なこの芹をど…