2014-01-01から1年間の記事一覧

双魚書房通信・二〇一四年回顧(4)

年を越したら前厄というのに、あんな没義道な仕打ちをしてくれる店で終わったのでは、いかにも幸先が悪いというもの。気を取り直してふたたび北野の『城助』さんへ。あん肝(そこここで出されるあん肝たぁ、あんの肝が違わい、といいたくなる品)はじめアテ…

コードネームは「椿」。

聞くならく、沙漠の神、火山の神であるヤハウェは、怒りの神・嫉みの神・裁きの神なりと。その祟りでもあろうか。 イエス生誕の前夜に、愛妻と二人、agnus dei、すなわち「神の子羊」に引っかけてラムのリブをローストし(ニンニクをたっぷりなすりつけて、…

なんちゃって赤穂浪士の会

前回(「なんちゃって金沢の会」)で懲りなかったどころか、調子に乗ったとおぼしくて、お客さまの人数を増やした上に会費まで取ってしまおうというのだから素人はおそろしいものである。しかも今回は『播州地酒ひの』さんまでお呼びしているのであるから、…

双魚書房通信・二〇一四年回顧(3)

チャトウィンは今やアイドルといってもいいような伝説的な書き手。多くは旅を題材にきらめくような(ブリリアント、と形容したいくらい)文章を残した。長いもので『パタゴニア』、短いもので『どうしてぼくはこんなところに』が双璧か。 訳者あとがきによれ…

遠くにありて思ふもの〜金沢旅行(3)

旅の最後は、ここも再訪となる鶴来の『和田屋』さん。今回も空室の都合が合わず(宿泊は原則二人から)、昼食のみとなった。 金沢市内で霰だから、鶴来まで行けば一面の雪か・・・と多少期待して駅を降りたところ、ここでも冷たい雨。歩いておよそ三十分。ふ…

「お一人さま」を究めたり〜金沢旅行(2)

二日目。『こいずみ』の天ばら(冷えてもおいしかった)とインスタントの味噌汁でさっと朝食を済ませて、尾張町裏にある泉鏡花記念館へ。大の鏡花好きだから十年ほど前に一度ここは訪れているが、大学院の先輩(鏡花研究者)から、山本タカトさんの展示がい…

犯罪者は北へと向かう〜金沢旅行(1)

半年ぶりの金沢旅行、初日はともかく天候に祟られたという他なかった。半年も無沙汰というので白山の姫神さまがご機嫌斜めであった、と解しておきたい。大阪駅に着くと皆さまご存じのとおり、低気圧に伴う強風のせいで乗車予定のサンダーバードが運休してお…

双魚書房通信・二〇一四年回顧(2)

◎サム・リース『レトリックの話 話のレトリック―アリストテレス修辞学から大統領スピーチまで』(松下祥子訳、論創社) それはレトリックだ、という悪口がある。内容の伴わない空疎な飾り。ことほどさようにレトリックは貶められている・・・と考えるのは早…

双魚書房通信・二〇一四年回顧(1)

ここ十日ほどの間に、二度猛烈な胃痛を経験した。いずれも夕食を終えてかなり経ってから。二度目は夜中に痛みで目覚めて、そのまま朝まで眠れず。小さいときから痛みに関しては辛抱強かった(逆に欲望には容易に屈服する)人間がエライと感じたのだから、や…

ずこうのじかん

連休のまっただ中、紅葉もミュゼも見物するわけではなく、むさ(暑)苦しい男二人が昼間っから鮨やのカウンターでちびちび、いやぐびぐびやっております。 阪急六甲南の食器・雑貨屋「フクギドウ」で斉藤十郎さんというスリップウェアの作家さんがワークショ…

神戸お上りさんの記

前、というのは学生時分とはつまり二十年も(!)昔のこと、その時は原チャリで山を登ってからたしか職員の通用口をこっそり乗り越えて入ったんだよなあ。 だからロープウェイに乗って布引のハーブ園に行くのは今回が初めてということになる。天気は上々だけ…

師弟合歓

髪を切りにいったら、お兄さんに「円形脱毛症がありますよ」と言われた。合わせ鏡で見せてもらうと、たしかに右耳の後ろが丸く抜けている。 もとより資源の乏しさをかこつ身だから、十円ハゲの一つや二つなぞ痛くもかゆくもない・・・いや、やっぱり一つでよ…

ふたたび宍道湖ほとりに踏み迷う

一年ぶりの松江、今回も先輩綺翁子のお誘いを受けて、酒蔵『李白』での「ほろよい寄席」を聞きに行く。九時半に阪急芦屋川の駅にてご夫妻と待ち合わせ。こちらは運転免許を持っていないので、道中はずっと先輩にハンドルを握っていただくことになる。毎度の…

豊葦原瑞穂の国で

黒豆の枝豆を食い尽くした頃、今度は新米が届く。コメツブはなるべく控えるようにしている分、多少奢ってもいいと思ってそう安くはないのを買うようにしているけれど、今回はいつも頼んでいる秋田ではなく、新潟は魚沼のコシヒカリ・・・いかにも俗な選択の…

秀吉殿にもの申す。

前回はあまりに殺伐とした話に終始したので、ひとつ暢気なお噂でも。何かと言えば、今が旬の黒豆の枝豆がぞくぞくと届いて嬉しい悲鳴をあげているという話。丹波篠山の出身の知人や、ネットで野菜を購入している農家から来るのだが、いずれも段ボール一杯な…

くちびるも寒きからっ風

今回の騒動でまず浅ましい(これは古語の意味で。つまり「あまりの事態に驚き呆れる」)と思ったのは、いまだにこんな政治風土が残存してたんだなあ、ということ。まるできだみのる(『気違ひ部落周游紀行』)か武田百合子(『富士日記』)の世界を見てるか…

くまさんに出会った

元々好物であるのと、強迫的な性分もあるのかもしれない(高所恐怖症のくせに、というかそれゆえに高い所を見ると無性に惹きつけられてしまう)、それに何より旬で安くまた旨い、といういろいろな原因が重なって、最近は秋刀魚ばかり食べている。怒り肩風に…

バナナの復讐

柿衞文庫の芭蕉展二回目。全面的に展示替えという太っ腹な方式・・・という形容は可笑しいか、ま、今回もたっぷり時間をかけて見て回りました。後期は手紙がたくさん出品されており、門人のほめ方や叱り方などは興味深いだけでなく、こういう言い方も出来る…

無月物語

水曜日、みんな皆既月食のほうで盛り上がっていたけど、そもそもこの日は旧暦九月十五日、つまりお月見の日なのであった。それがすっかり隠れてしまうのだから、趣向としてはじつにひねりが効いている(趣向で満ち欠けしてるんではないだろうが)。観賞せざ…

彦根の城に雲かかる

『いたぎ家』兄のお誘いをいただいて、台風近づく中、朝から彦根に向かった。順ちゃん(アニーの愛妻)も一緒。 日本酒の会、それも昼・夜のダブルヘッダーという豪華版である。実は彦根ははじめて。勤め人時代に何年かこの町で過ごしたタギー・アニーの案内…

実りの秋(とき)

酒と本とは文明の華。古本屋で珍品稀本を掘り出すのは人生の快事のひとつ、それもかなり上位のほうに入る口だが、新しく出た書物に心おどらせることが出来るのはそれに劣らず嬉しい経験である。収穫の季節だからというわけでもないだろうけれど、ここしばら…

バナナ尽くし

久々の更新でございます。 忘却散人飯倉洋一氏のブログに教えられて、伊丹・柿衞文庫に芭蕉展を見に行く。二日酔い気味で出かけるのは大儀だったけれど、新出作品を中心にかなり気合いの入った展覧になっているらしい(開館三十周年と芭蕉生誕三百七十年記念…

江戸のゴシップ〜酒田・鶴岡旅日記(三)〜

酒田三日目。昨日の轍を踏むまじ、と朝食は軽めにおさえる。でもやっぱり味噌汁は二杯飲んでしまった。このいげしという海藻、自分用に買って帰ろうっと。 まず向かったのは駅からすぐの本間美術館。「美術館の動物たち」という展覧。動物の絵は大好きなので…

月山をあおいでイタリア料理〜酒田・鶴岡旅日記(二)〜

ホテルの朝食バイキングというのは、どうも難民キャンプや強制収容所めいた雰囲気がして苦手なのだが、今回は悪くなかった。味付け海苔(私は深く味付け海苔を憎む)やかちかちのアジの干物(アジだってこんな扱いを受けたら死んでも死にきれないであろう)…

本間様には及びもつかず〜酒田・鶴岡旅日記(一)〜

山形にはもう何年も前に一度行ったことがある。かつては月山に入る修験者を泊めていた、いわゆる行者宿。山形から寒河江を抜けて酒田に向かう高速バスに乗り、ここでホンマに大丈夫かと思ってしまうくらい山と原っぱと田んぼ以外なんにもないところで下ろさ…

休みの前のしずけさ

お盆休みはみっちり働いた代わりに、月末は十日休暇が取れることになった。それを慰みに、三宮にも出ず、ジムで泳いだ後は缶ビールを飲みながらひたすら本を読む日々が続く。毎年この時季、当ブログでは「下鴨納涼古本市」の記事をあげているのだが(毎年で…

昼の魔物

午前だけで台風は過ぎたようだから、掃除・買い物を済ませた後『いたぎ家』に顔を出す。お盆中の特別営業ということで、日曜日も含め、昼間(三時)から営業しているのだ。といっても、さすがに直前まで警報が出ていたくらいだから、入った時は当方含め客は…

遠雷

七月は勤務シフトの関係で、ジムにはまったく行けず。ようやく「死のロード」から解放されたので、さっそく泳ぎに行く。元々頻度が減っていたので、二時間半泳ぎまくるとさすがにくたくたである。でも質のいい、心地よい疲労だし、コーチからも「ゆっくりや…

八日の笹

半年ぶりに映画館に足を運ぶ。映画好きの同僚が薦めてくれたのは『ホテル・ブダペスト』。肩が凝るような作ではないということなので、上映の一時間前に三宮に出て、『いたぎ家』で軽くひっかけることにした。 シネ・リーブルで映画を見る、と言うと、映画館…

細腕繁盛記

十二時回ってるから無理かな、でも中にいるなら大声張り上げて強引に入り込んじゃおうっと。 と決意を固めて『いたぎ家』を覗いてみると、案の定ドアスクリーンは下りていたものの、そのすぐ前にオトさんがぬん。と突っ立っているのが垣間見えた。ガラスの隙…