2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

豊後 湯のたび(三)

日田着はまだ十時半。観光客など誰もいない。駅前でレンタサイクルを借り、ホテルに荷物をあずけたあと、まずはお目当ての咸宜園に向かう。 咸宜園は江戸後期の儒者・広瀬淡窓の私塾で、入門者は八十年で四千八百名にのぼる。数もすごいが、教育方針もまた開…

豊後 湯のたび(二)

日本旅館というところは、一人旅の客を嫌忌すること甚だしい。有名な温泉地の旅館となれば尚更である。だからこちらは、「一人旅歓迎」という条件でインターネットを検索して出て来たところ、ぐらいにしか認識していなかった。はっきり言えば期待していなか…

豊後 湯のたび(一)

今年の夏の旅は大分に決めた。去年会津若松から山形、新潟、金沢、能登と回り、関西以上の暑さにへなへなとなった記憶がある。どうせ暑いなら西は九州まで行ってしまえ、と六甲アイランド発大分港行きのフェリーを予約した。 実は生まれてこのかた船旅の経験…

夏を撃つ

詩人有田忠郎に、「セヴラックの夏」という一篇がある。十節あるうちの、最初の一節を引く。 夏は広大な音楽をつれて少しずつ傾いてゆく ピレネーの秋の訪れ そのひそやかさ 迅速さ (それは夏の大気の微粒子にかくれている澄んだ刃のようなもの) 八月がな…

あまくち からくち

南瓜が安かったので久しぶりに炊いた。 一度書いたが、夕飯では主食のたぐいを食べないので、どうしてもごはんのおかず的な献立は少なくなる。コロッケやカレーは数ヶ月にいっぺんも作るかどうか。そもそもおかず的な味付けが苦手。豚キムチと肉じゃがと豚生…

精霊流し

ご承知の通り、不急不要の文章を旨としたブログだから、そうそう書くことがあるわけでもない。それにしても八月は仕事柄ばたばたすることが多いので、多少興が動いたときでもキーボードに向かうのが懶く、ついそのままに流れてしまった材料も少なしとしない…

質問ふたつ

このブログを読んでくだすっている方おふたりから次のような質問を受けた。 ?なぜ呑んだ話と読んだ本のことしか書いていないのか。→・・・。 ?なぜ画像を出さないのか。→いろんな意味で意地をはっています。スイマセン。

デパ地下の吸血鬼

四万六千日はとうにすぎましたが、お暑い盛りでございます。 ただでさえ二日酔いは辛気くさいものだが、暑いさなかの二日酔いはよけいにこたえる。名著『酒について』を書いたキングズリ・エイミスは、二日酔いを身体的/形而上学的と分類していたが、たしか…