2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

一週間のヨーロッパ(7) 籠の鳥

翌朝は六時前に目覚めた。前夜「南のほうだから、どんな虫が入り込んでくるかもしれません。くれぐれも窓は開けっ放しにしないように」と芒男に脅されていたので、震えながらろくに眠りもしないままに朝を迎えたのである。 というわけではもちろんなくて、蠍…

一週間のヨーロッパ(6) Et in Arcadia ego

八月十三日 ミラノの朝。心地よく冷えた空気の中を、でっかいカバンをかついだ男がひたすら歩く、歩く、歩く。 「ホテルからすぐ」のところにイタリア一というサッカー競技場があり、その建物がものすごいので見に行きましょう、とのこと。高校から社会人ま…

一週間のヨーロッパ(5)Leonardus,magus magnus

八月十二日 ヴィチェンツァの街はstaticだ、とフランチェは昨夜絞り出すようにことばを選んで批評していた。京都や金沢に住むひとが感じるのと同じことを彼もまた感じ取っているのだろう。しかし息苦しいほどに街・生活・精神のスタイルが馴致されきった土地…

Intermezzo

ミホミュージアムで開催中の『若冲と蕪村』展、なかなかの充実ぶり。来週の日曜日までなので、ヨーロッパ日記は一時中断して見物報告しておきます。 JR石山駅からバスで50分。対向車とすれ違うのもやっとという山道をくぐり抜けて行く。到着すると、広大…

一週間のヨーロッパ(4) Antonio was here

寝しなに『強力わかもと』をがりがり齧って炭酸水をがぶがぶ呑んだおかげか、胸焼けもせず二日酔いも無し。昨日のビールとチーズで朝食としたが、パンと果物も買っておけばよかったと思うくらい快調な目覚めだった。 午前十一時の飛行機でデュからヴェネツィ…

一週間のヨーロッパ(3) オランダ遠近法

八月十日 この日はアムステルダムへ絵を見に行く。といっても、前項で書いたとおり、芒男は絵に興味を持たない人間なので、これは純然たるこちらのわがまま。しかもススムさんが仕事を休んでドライバーをしてくださった。有り難い限り。 結構早めに出発した…

一週間のヨーロッパ(2) 聖なる森

八月九日 鉄道でケルンに向かう。朝食は駅前のパン屋で買ったサンドイッチとコーヒー。パン、ハムともによし。『わかもと』のおかげか、特に二日酔いも無し。 こちらとしては「大聖堂の町」というほどのイメージしか持っていなかったが、芒男によるとデュよ…

一週間のヨーロッパ(1) ラインに日は暮れて

八月八日 地下鉄大倉山の出口で同僚でもある芒男を拾って、ポーアイのベイシャトル乗り場まで行く。六時台からすでに湿熱耐え難し。 芒男は元々ドイツの某日本企業で働いていたから、ヨーロッパの旅には慣れている。眷恋の地ながらいまだ訪れたことのないこ…