聖木酔日

 久々にお客をした。お越し下さったのは木酔会(木曜の昼から呑みましょうという風雅な集まり)の皆様六名。かなり気合い入りました。献立は以下の如し。

(1)お通し(先吸)…蛤汁※酒をたっぷり入れ、調味はせず。蕗の薹を刻んで散らす。これは大阪・谷町の鮨屋『三心』さんの趣向を借りた。
(2)菊胡桃和え…菊は南部名産の干し菊(当然のように、青森色をちらちら見せています)。胡桃を擂り鉢でねちねちと音がするまで擂りたおす。白味噌と辛子少々で調味。
(3)利休鮑…鮑は酒蒸しして、肝も一緒に角切り。こごみは湯がいて鮑と同じ大きさに。黒胡麻を荒擂りして、煮切り酒と味醂赤味噌で調味。
(4)浅蜊と芹の辛子和え…浅蜊を酒蒸しして身を外す。芹は湯がいて刻み、浅蜊の汁に淡口を垂らしたものに浸す。
(5)飯蛸小倉煮…飯蛸は足だけ使う。小豆は蛸と別に柔らかくなるまで煮ておき、湯がいた蛸と合わせ、酒・味醂・濃口で調味し、小豆が半分つぶれるくらいまで炊く。
(6)鯖きずし…いつもは砂糖で水分を抜き、そこから塩をまぶす。今回は脱水シートを用いた。仕上げに柚子をしぼり、山葵で。
(7)白和え…具は木耳(戻して、鰹出汁で下煮)・京人参(軽く湯がき、塩でもんでおく)・干し柿味醂マオタイ酒に浸して柔らかく)・芹・餅銀杏(殻・薄皮をむいて、洗い米と三十分炊く。『玄斎』上野さんの本で知った技法)。和え衣は木綿豆腐・砂糖・淡口・酢
(8)蒸し鶏…生姜・酒・塩を入れた七十度の湯で三十分。身を裂いて、ポン酢を掛け回す。三ツ葉と焼き海苔とともに。
(9)牛タン…ソミュール液(塩・粒胡椒・タイム・ローリエ・セージ・ニンニク・人参・セロリ・玉ネギ・赤ワイン)に一週間浸けておく。あとは粒胡椒・ローズマリー・セロリ・玉ネギを加えた湯で二時間茹でる。付け合わせはクレソン。粒マスタードを添える。
(10)田楽…鯨コロ(二時間茹でこぼし、昆布鰹出汁・酒・砂糖・濃口で下煮)・こんにゃく(昆布出汁で下煮)・牛蒡(昆布出汁で下煮)・蓬麩を串に刺す。昆布鰹出汁・酒・白味噌酒粕・淡口の下地で炊く。
(11)ぬた…鮪赤身(脱水シートで下処理)・新若布・あられ独活を、赤味噌・辛子・酢を混ぜたもので和える。
(12)烏賊造り…剣先がなく、使ったのは針烏賊丹波芋をアラレに切ったものと一緒に。味付けとして卵黄の味噌漬け(四日)を添える。
(13)大根寿司…身欠きニシンは米のとぎ汁に一晩浸け、番茶で茹でる。大根は短冊に切って塩で下漬(一週間ほど)。炊いた白飯と糀を合わせて一晩保温。水を切った大根・ニシン・昆布・人参・鷹の爪を交互に詰め、重石を乗せて一週間。上手い具合に気温が低くなっていたので綺麗に発酵・熟成していた。

(14)間八ぬた…鯨馬自身はこのサカナ、あんまり好まない。が、高知で出てきた時の食べさせ方に感心した覚えがあったので真似してみた。葉ニンニクを擂り、白味噌・酢・辛子で調味して、角切りにした魚を和える。

(15)海老芋味噌炊き…海老芋は一口大に切り昆布出汁で下煮(煮崩れしないよう、晒で包む)。鶏皮は炙って刻み、生姜の絞り汁・酒を振りかけておく。八丁味噌・酒・砂糖を合わせた中で芋を転がすように炊き、鶏皮を入れる。提供の際にエゴマを擂ったものをまぶす。
(16)平目造り…サク取りした平目は脱水シートで下処理した後昆布〆にする。山葵と煎り酒(酒・梅干し・昆布・煎り米を煮詰める)を添えて。
(17)鴨…抱き身をじっくり焼く。その脂を蓮根・タラの芽に吸わせる。調味は塩・酒・山椒・かぼす果汁のみ。
(18)サラダ…菜の花・スナップエンドウ・アスパラ菜・芥子菜・スプラウト数種。ドレッシングは胡桃油・シェリービネガー・蜂蜜・塩・胡椒・粒マスタードで作る。
(19)鯛造り…これまた脱水シートで下処理。薄めにへいで、酒で柔らかくした浜納豆を挟んで提供。
(20)漬け豆…津軽の郷土料理。枝豆を塩茹でしたあと、鷹の爪を加えたゆで汁ごと乳酸発酵させる。
(21)炊合…蕗・焼き穴子・高野豆腐・筍。
(22)山菜ご飯
(23)漬け物…①新沢庵(塩味がまだ直線的なので、少し水にさらしてから)、②ひね沢庵、③千枚漬け、④菜の花昆布〆、⑤壬生菜ぬか漬け(刻んでから、塩・糠・鷹の爪をまぶして押す)

 たまたま連休中だったので、二日前から下ごしらえを進めており、当日は大きな混乱・渋滞もなしに提供出来たように思う。それにしても、これを毎日やっている料理人の方々、やっぱりすごいなあ、と深夜独り、缶ビールを呑みながら思ったことでありました。

 呑んで食って喋って笑って楽しい会にしてくださった皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。          碧庵主人