ハイジン同盟

 酒の席でのふとした一言から拙宅で連句を興行することになった。さるにても酒席から始まる物事の多い人生であることよ。

 

 連衆は当然ながら呑み友だちばかり。芭蕉翁の戒め(「俳諧では酒三盃を過ぐすべからず」)に背いて、酒宴の設けも怠らない。というか、歌仙をダシに家呑みをしようという下心少なしとせず。

 

 ともあれ、当日の献立は以下の如し。

 

○先付……茶碗蒸し(蛤の出汁に淡口を滴々と。へぎ柚子と三ツ葉を添える)

○造り……①鯖きずし(擂り生姜と大根おろし)、②平目昆布〆(山葵)

※前々日から湊川の市場を覗いて回っていたのだが、いかなご漁の時期と重なっていたせいで魚種が少なく、揃えるのに難儀した。

○炊合……鯛の子・蕗・筍・菜の花(鯛の子と筍以外は炊くのではなく、出汁に浸して味を染ませる。酒をたっぷり使う)

○八寸……①新若布と新子二杯酢、②菊の胡桃和え(菊は八戸の干し菊を湯がく。胡桃を摺りたおしたあと、自家製赤味噌と辛子で味を調える)、③独活と鶏皮の梅肉和え(梅肉は煮切り酒と味醂でのばす)、④穴子三つ葉の山葵和え(穴子は焼き。天盛りに焼き海苔をたっぷりと)、⑤分葱と烏賊のぬた(烏賊は鯣烏賊)、⑥蛸の小倉煮(小豆と煮る。砂糖と濃口でこっくりと調味)、⑦ひね沢庵と縮緬雑魚の炒め煮(沢庵は水にさらして塩抜き。味付けは酒・味醂・淡口と鷹の爪)、⑧山の芋の酒盗漬け(芋はアラレに。酒盗は酒でさっと煮ておく。一晩漬けたあと、鯛の子でつくった塩辛をまぶし、摺り柚子をちらす)

○煮染……里芋、蓮根、牛蒡、椎茸

○強肴……①茹でタン(一週間ソミュールに漬けておく。クレソンを下に敷き、マスタードを添える)、②蒸し鶏比内地鶏のももを、鶏ガラスープに一晩漬けておく。出す時に大蒜・生姜・長葱の微塵を盛り、辣油と胡麻油を掛け回す)、③若菜のサラダ(コゴミ、菜の花、クレソン、三ツ葉、芹、ブロッコリー、スナップ豌豆、独活菜。ドレッシングはオリーヴ油・シェリービネガー・塩・胡椒・蜂蜜・マスタード

○飯……酒鮨(鯛・平目・鰺・鰆は塩をして酢洗い、鳥貝・烏賊はさっと湯がいて酢洗い、焼き穴子は細かく刻む。蕗・筍は地酒(という鹿児島のリキュール)・塩で煮る。芹は湯がく。上に錦糸卵と木の芽をのせ、地酒をふんだんにふりかけて一晩圧しておく)

○汁……浅蜊汁(浅蜊を酒蒸しのあと殻を外す。その出汁に昆布出汁を混ぜ、アラレに切ったトマトを入れ、豆乳と赤味噌で調味。吸い口は粉山椒)

○香の物……毎度気張るのはココ。今回は、①菜の花辛子漬け(塩麹で一晩、食べしなに溶き芥子で和える)、②壬生菜二種(昆布・鷹の爪・塩で青々と漬けたものと、同じく昆布・鷹の爪だが、塩糠で鼈甲色になるまで漬けたのと。後者はかなり酸味が出ている)、③白菜漬け、④胡瓜の味噌漬け、⑤沢庵

 

 大皿を何枚も並べる余裕が無かったので、八寸は銘々ぶんを松本行史さん作、胡桃・拭き漆の手刳弁当箱に盛り付けた。これは色々応用できそうな使い方ですな。

 

 あと、作り手として一等気に入ったのは菊の胡桃和え。もう少し辛子を効かせれば、鯛や烏賊の造り身や隠元と和え混ぜにしたり、薄切りの蕪で巻いたりと展開できるはず。

 

 酒はお持たせ。こちらの提供した赤ワインも含め、案の定ぺろりと空いてしまう。

 

 さて一応はこの日の眼目たる句会ですが、予想通り半歌仙(十八句)を過ぎたあたりで時間切れ。連衆お三方のうち、洒落神戸・和韻御夫妻は俳句の方では経験を積んでらっしゃるが(夏井いつき先生の弟子なのです!)、俳句も初めてという咲月さんも含めみな連句は未経験者。捌き手としては、無論あれこれ言いたいことがありますが、仏がおでどんどん通しちゃう。初手は旨い汁を吸わせておいて、行きも退きもならぬ所までハマったところでおもむろに「鬼の宗匠」と変化しようという、素人をなぶる賭場のヤクザなみの深謀遠慮が隠されているのであった。

 

 ここで書いたのでは深謀遠慮にならないわけですがね。

 

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