バル活な日々

【壱の巻】 
 呑み友達と呑んでてにわかに拙宅バルコニー会の企画が固まった。日本中のイベントの九割は酒の席で決まっていくのではないか。
 ともかく、趣向としては①バルコニーでだらだらする、②互いに一人ずつ、初めてとなる友人を呼ぶ、だった。
 当日は梅雨入り前で、日差しも柔らか、絶好のバル活日和。料理は以下の如し。

*フライドポテトと唐揚げ・・・なんてベタな、と思われるでしょうが、元々オッサンふたりがアゲイモ摘まみながらビール呑むという趣旨だったので、むしろこれは外せない。オッサンのつまみといえば、
空豆・・・これも定番ですな。しっかり色が変わるまでと、青みを残したのとふた色に茹で上げて出す。
*蛸とトマトのサラダ・・・新玉ねぎと大葉、にんにく、オリーブオイル、ワインビネガー、塩胡椒、若干の蜂蜜。
*子和え・・・どっかで「青森」を盛り込みたくて。本来は真鱈の真子を使うがさすがにこの季節の関西でそんなものは手に入らないから、代わりに鰆の子を使う。湯がいてほぐして、繊にした大根・人参と炒める。味付けは酒・砂糖・醤油。
*辛子和え・・・元町マルシェで芹が買えたから、浅蜊むき身と合わせて。この季節は白味噌はうんと少なく、辛子をぴしっと効かせると食べやすい。
*茹でタン・・・昔はお客のたびにしてたなあ。牛タンを塩漬けで水分を抜き、そのあと改めてソミュール液に一週間漬け込む。あとは茹でるだけ。意外と手がかからない。
*炊き合わせ・・・鯛の子、蕗、わらび、絹さや。
*鯖きずし・・・我ながらうまくいったと思う。いつも通り、野崎洋光さんレシピに従い、砂糖で水分を抜き、その後塩を入れる。摺り生姜と山葵・大根おろしで。
*こぶだい炙り・・・これは失敗!皮が固くて(身は旨かったけど)食べるのに難儀しました。
*蛤汁・・・バルコニー菜園の三つ葉を散らす。
*とげくりがに・・・この日のメイン!八食センターから送ってもらいましたよ。一人一杯ずつ。ミソをほじくってると、会話も酒も途絶えがち。
*漬物には豆漬(枝豆を発酵させたもの)と大根のなた漬け(今回は柿酢に漬けたから発酵ではない)。

 十三時に開会し、皆様タクシーで降りたのが二十三時半。冒頭書いたように、四人のうち二人は初対面となるけど、和やかに談笑。正直翌朝は(無論休みにしていた)腰が抜けたようで、半日呻吟してました。

【弐の巻】
 壱の巻に来てくれた子(失礼な呼びつけだけど、なにせ二十三ですからねえ)が某店、って今さら隠すこともないか、話題沸騰の日本酒バル『かるむしんかいち』でその話をしたところ、「わたしたちも行きたーい!」と盛り上がったそうな。店主のさおりさんはいうまでもなく、他のお客様も度々一緒になってお人柄存じ上げてるから、こちらも喜んで第二回を立ち上げた、という次第。都合お客様は五名。
 立ち上げはしたけども。さおりさんはかの名店明石の『田中屋』で腕をふるってたプロ中のプロ、それに滋賀のたやまさこ氏に師事する発酵家でもある。さおりさんの鯖のへしこなんか、糠だけで一升呑めるくらいの芳醇さですからな。発酵を大切にしている人間としては、かなり張り詰めて献立考えました。なーんて、むかし恐れ多くもあの『播州地酒ひの』の親分に「懐石もどき」なぞだした破廉恥漢ですから、ここらは話半分に聞いてくださいよ。ともあれ料理は以下の如し。

蓴菜の小吸物・・・いわば先付。前日から昆布を浸けておいた水に、塩ぱらり淡口ぽたぽた酢もぽたぽた、で青柚を摺って出す。ぐい呑みで提供。
*ヤイトカツオ造り・・・皮を引いたのと、炙ったのとを盛り合わせで。送ってくださった対馬・フラットアワーの銭本慧さんが「カツオの上位互換といってもいいです」と太鼓判を押してるだけあって、口いっぱいに旨味が広がる絶品でした。爽やかな酸味も持ち味。でも血のにおいは不思議としないのだな。これは銭本さんの処理が丁寧だからでしょう。薬味には生姜・山葵の他、これは鯨馬の好みで辛子も添えた。以下お出しした順にこだわらずフラットアワーの魚を並べます。
穴子白焼き・・・対馬のブランド黄金穴子。ぷりっぷりで、あぶらがじゅうじゅう湧いてくる感じ。無論山葵と焼き海苔で。海苔は「食べる通信」先月号の江戸前木更津青混ぜ海苔。
アクアパッツァ・・・魚はウッカリカサゴ。これは初めて扱ったが、やはり銭本さんの下処理の御蔭で、鱗を落とすくらいで鍋に放り込むことが出来ました。ただ、サイズの問題でアタマは切り落とし。こいつはマース煮にして酒のアテに。料理人の役得です。
*ローストビーフ・・・低温調理器で59℃、4時間。ほっといても仕上がるし、見ばがよいので宴の優等生と言える。ほりにしのスパイスと、アタマワルイソース(バター+味醂+醤油)で。
*もつ煮・・・買い出し途中、新長田の「ロピア」のぞいてみたら、豚ホルモンがあったので、急遽加えた。この日はレバー・カシラ・ガツ・大腸・タン。ゆでこぼしてから焼酎で煮込み、そこから出汁と合わせ味噌でさらに煮込む。ビール、焼酎は無論のこと、酒にも白ワインにも合います。
*身欠き鰊と茄子煮物・・・「京味」西健一郎のレシピに忠実に。鰊は皮目を炙る・茄子は油で炒める、のがコツ。取り立てて言うほどの味ではないけど、しんみりおいしい。こういうひと皿をはさむと料理の流れにめりはりが付きますね。
胡麻和え・・・三度豆と焼き茄子。味噌は胡麻を摺りたおしたのに自家製味噌と、今年の実山椒を加えたもの。甘みは入れない。これもアクセントの一品。
*蛸とオクラ・・・明石蛸の上ものがあったので。オクラはなるべく細かく叩いて、蛸との食感の対比を出す。三杯酢、しんみりめで味付け。上に青柚をちらす。
*漬物・・・ぬか漬け(茗荷・胡瓜・茄子)としば漬け、それに葉山葵醤油漬け。ただ、まだ気温がそれほどでもないから、しば漬けは塩と紫蘇だけで発酵させた本当のものではなく、梅酢を使った代用品。

 お客様がお持ちくださった酒をぽんぽん開けながら歓談。ひとりあて四合瓶1.5本くらいは呑んでいたのではないか。皆様有難うございました。とりわけて、毎回準備に、そして宴後の「二次会」でおっさんの駄弁りに付き合ってくれてるRNくんには深謝。