御前試合

 師匠のお宅での《稽古》句会もはや三回目にして、今回が打ち止め(となるはずである。この後は《本番》試合あるのみ)。ま、連句のほうは諸先輩方より少々上と自負しておりますから、こちらはとくにプレッシャーも感じずにめでたく巻き終えたのですが、タイトルに「御前試合」とあるのは、この日、大先輩と二人して師匠ご夫妻および客三人をもてなす料理担当を仰せつかっていたわけなのである。

 これまでは奥様が手料理をふるまって下さっていた。初回はカレー、ナン、タンドリーチキンのインド風。次は鱧の吸い物に天ぷら、和え物の和食で、いずれも実に旨い。

 たださえプレッシャーがかかっている上に、皆様ご存じのごとく猛暑・多湿の、素晴らしい食中毒日和が続いている。やっと健康を取り戻された師匠に万が一にでもおかしな物を差し上げる訳にはゆかず。

 ということは、生モノはNG、つまりこちらがいっとう得意とする和食は封じられたも同然である。なおかつ汁気の多いものもダメ、貝類はアヤシイ時季なのでダメ(「書物供養」でえらい目にあったことを書きました)、お持ちするときには冷やしておかねばならぬ。そして大先輩の方は肉と手打ちうどんで饗応なさるとか。それとの重複も避けなければならない。とこれでもかとばかりに「しばり」が課せられて、久々に難儀したことであった。ま、結局その条件の中で献立を組むことを楽しんでいたわけなのだが。 

 で、出来上がったのは以下の如し。

○蒸し鮑のサラダ:鮑は酒蒸しして賽の目に。茹でたじゃがいも、チーズ(モッツァレラをしよう)、たて塩した胡瓜、アボガドも鮑と同じ大きさに切る。鮑はライム果汁で、アボカドは白ワインビネガーで下味をつけておく。これをマヨネーズ・山葵・生クリーム・塩胡椒をまぜたソースで和える。ポテトと鮑とチーズの、似てるような異なってるような食感を楽しんでいただく、という趣向。あ、出来上がりにはアーモンドをローストしたあと細かく砕いたものをふりかけます。

○小だこのトマト煮:たっぷりのパセリと、ちょっぴりのローズマリーローリエで風味付け。水煮トマトを投入するまえに、酢(白ワインビネガーと米酢を半々にした)でさっと下煮しておく。もちろん蛸は下ゆでしてある。全体にことこと煮込むのではなく、トマトソースで温める程度にする。

○ムサカ:といいたいが、出来上がりはよく言って「ムサカ風茄子グラタン」というところ。師匠が「でもこれ美味しいよ」と仰って下さったのを励みに、次回はもっと美しい仕上がりと、ぱんちの効いた味付けを目指したい。どうも茄子を揚げたあと、中身をこそげとって、挽肉他と炒めるという手間を省いて、薄切り茄子を焼いただけにしたのがよくなかったように思う。それにしても、ベシャメルソースというのはバターを大量に使うものなんですな。オレガノとバジルは我が家(バルコニー)の菜園から。

○烏賊の木の芽和え:なんだか一つだけ和食で浮いている感じながら、これも菜園出来の山椒を使いたくて仕方なかったのです。木の芽の香りは申し分なかったけれど、この季節白味噌だけだとしつこいかなあと思って赤味噌を少し混ぜてしまったために、色が冴えなくなってしまった。擂った木の芽をオリーヴオイルに混ぜたもので鳥ももをマリネして焼いたほうが良かったのかもしれない。

○自家製さつま揚げ:友人がトビウオのすり身をくれたので、みじん切りにした生姜と葱を混ぜ、味醂・塩で味付けして揚げた。

○漬け物二種類:茗荷を素揚げして甘酢に漬け込んだもの(鮮やかなピンクがうつくしい)と、花丸胡瓜の浅漬け。


 鮑のポテサラは成功だったように思うが、全体に、食べる人が心躍らせるような華がない。盛夏というハンデがあったとはいえ、まだまだ精進しなけりゃ。

 というわけで、我が家でパーティーをなさりたい方、お気軽にお申し込みあれ。
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