チャイナ・シンドローム

 なんだか中華づいている。

 多分TUGGY=Sと訳の分からん時間に訳の分からんノリで中国東北料理を食ったのが、へんな刺戟になったと思うのだが、ともあれ、暇を見ては中華三昧という日が続いている。

 こちらの気に入ったのは二軒。一つは元町の南のほうになる『香港海鮮料理 和』。飛び込みだったが、無理をいってコース仕立てで出してもらった。献立以下の如し。

◎前菜(クラゲにピータンなどの盛り合わせ)
◎しらさえび塩茹で、魚醤のソース
◎フカヒレ煮込み
◎あわびガーリックソース
◎鯛の焼き物、梅味噌風味
◎炒飯
◎マンゴープリン

 しらさは旨味が特に強い海老ではないし、今まではどちらかといえば冷淡だったのだが、「フィッシュソース」と称する魚醤(でしょうね)がじつに瀟洒な味で、上手に食べさせてもらった、という感じ。今までさほど好んでいなかった食材といえば、フカヒレもそうだった。旨味なら干し鮑、食感なら干し海鼠でしょ、というわけで、そのくせ値段だけは高いのが癪に障っていた。『和』の煮込みを食べて、大げさにいえば、なるほどフカヒレの食べさせ方とはこういうことか、と感心したのだった。

 といっても、フカヒレそのものに新たな魅力を発見したのではなく、煮込みのスープの、濃厚なような淡泊なような、甜いような辛いような、中華独特のなにをどうしたらこうなるのかちっとも分からない、玄妙な味にしびれたのである(今回はなんだか大仰な話になってるなあ)。一口すすってはううーんと唸り、うなってはまた紹興酒で人心地を取り戻し、という繰り返しでありました。あわびの炒め物の下にしいているほうれん草も同じ。栄養学優等生的な、まったくかわいげのないあの青菜がなんともエレガントに変身している。炒飯の軽さも絶品であった。

 と書いてくればおのずと鉾先はしぼられてくるのですが、前菜とデザート、いただけないなあ。どの店に行っても判で押したみたいな品を出されて、少々食傷気味・・・二日に一度食ってりゃ食傷もするというものだけど。懐石やフレンチでの前菜への力の入れ方に見習って頂きたい(ま、前菜だけで力尽きてるような店も少なくないんだが)。いや、前菜はこれ、デザートはなにがあろうと同じ、というならそれでも構わない。その代わり、ピータンならピータンで、「他の店にこの品が出せるか」というくらいに凝り抜いてほしい。

 もう一軒は以前書いたハンター坂の『えん』近くにある『施家菜』。ここはカウンターのネタケースに入っている魚介を選んで好みの調理方法で出させるという、これまた『えん』に似たスタイルの店。「中華割烹」が目指すところであるのらしい。

 ここではスッポンのスープと神戸牛とあわび茸と空心菜の炒め物、あこうの蒸し物を堪能。スープのぬるぬるくにゃくにゃした怪しい食感と、贅美をつくした味が与える官能の喜びについては、よろしく谷崎潤一郎『美食倶楽部』の名文についてご想像頂きたい。あ、ちなみにここの前菜はいくぶん趣向を凝らしたものでした。

 どちらも「お一人様」で愉しめる店だけど、いかんせん品数をこなすことが出来ない。とくに『えん』のようにものすごい火力で一気に炒め上げる料理を出してくれるところは、やはり何人前分を作ってもらわないと、向こうだって火加減に困るだろう。

 中華の会に付き合ってくださる方、連絡お待ちしております。

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