みなそこに故郷あり

 恒例の湘泉子との忘年会は、(1)二人でする(2)焼き鳥屋でする(3)しかしトリは食べない、という規約を厳密に守って行われる。(1)(2)はともかく、(3)に関しては意味不明な書き方であるが、これは店が我々の我が儘を容れて、トリ以外の食材を用意してくれる、ということである。もちろんこれ程融通のきく店がそんなにあるわけはないので、東淀川『とりや圓』にお世話になる、という仕儀に相成った。この日は何を思ったか、梅田から『圓』まで歩いていった結果、喉はカラカラ腹はペコペコ。いつも以上に大いに呑みかつ喰らう。焼きますものは山鶉、鳩、野猪、蝦夷鹿。この顔ぶれだと酒はやや重く感じますな、なぞと話して赤ワインに切り替えて呑む。人間ディスポーザー湘泉子が空恐ろしい健啖ぶりを発揮したのも例年の如し。鯨馬子が終電を逃してしまいMKで帰神したのも例年の如し。三宮に着いてから延々「ひとり二次会」を続け、最後にはなぜだか呑み友だちの張龍と中華屋でエビチリなんどをつついておった(正午を過ぎておりましたな、たしか)のも吉例というべきか。


 十三大橋、つまりは淀川を歩いて渡ったのは四十路になって初めてのこと。いやあ怖かったなー。というのは、元々高所恐怖症の気味がある上に、暗い水面を見ると、なぜだか無性に飛び込んでしまいたくなるという厄介なビョーキを抱えているのだ。先祖が身投げしようとしている娘を突き落としたのかしら(米朝落語『饅頭こわい』の前半をお聴きください)、それとも前世がすっぽんだったのかしら(石川淳『前身』をお読みください)。いつか大変なことになってしまいそうな気がする。


 二日空けて、その張龍のお誕生祝いで三宮の『Macra』へ。フォアグラだのタルタルステーキだの羊だの鴨だのをつつきながら、やっぱし赤ワインを飲む。


 肉ばっかし喰っとるな、しかし。だから中性脂肪が1000(!)を越えてしまうのぢゃ。


 そう、「百日の説法屁ひとつ」で書いたように、健康診断の前日、絶食期限の十秒前まで『テラサナ』さんにてぎゅうぎゅうという感じで旨いものを胃に詰め込んだ結果、めでたく「いつ膵炎になってもおかしくない」状態に突入してしまったのであった。もちろん『テラサナ』さんの所為には非ず。


 荷風のように、壮絶にのたれ死ぬのが最高のダンディズムである。などと力み返っている割に、スーパーでは野菜をいそいそ買い込んでるのが我ながらいじましい。もっとも小市民的健康志向以上に、最近は野菜がやけに安いのと、もう一つ宇治川の『ジョイエール』(スーパーにこういってよろしければ、行きつけの店、であります)の青果コーナーがやたら元気なのだ(魚売り場は壊滅状態なのだが)。この前など、ポップに「金に糸目をつけずに仕入れました!!」という文字が躍ってあったので松茸かマンゴーでも売ってあるのかとのぞいてみるに、ホウレン草だったので思わずずっこけてしまった。


 たしかにこのホウレン草、美味かったです。韓国風にナムルにしたり、中華風に炒飯の具にしたり、山羊のチーズとサラダにしたりで堪能いたしました。人間、肉のみにて生くるにあらず。
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