噴き上がる葡萄酒いろの泉

 久々にお客をした昨晩の料理が、自分で言うのは変だけど大成功だったので、今回は酒と料理の話。

 ワインを呑みまくろうという、いかにも乱暴な趣向の会で、お客は同僚・部下とその彼女。こちらの相方は、というとサークルの合宿があったために不参加。おかげでテーブルの向かい合わせにカップル同士が座り、当方は正面の席に着くことになった。

 なんだか歌合の判者みたいで、妙な気分。

 それはさておき、用意した料理は四品。皿数は抑えたが、一つ一つにうんと手間をかけようというつもりだった。

【変わりポテサラ】
 じゃがいも、さつまいも、富有柿をそれぞれ三センチ四方の賽の目に切りそろえる。イモは少し辛めに塩を入れた湯で茹でておかあげしておく。形が崩れないように冷めるまではかき回さない。柿にはライチのリキュールをちょびっとかけて馴染ませておく。
 ドレッシング(?)は生クリームをベースに。クリームを固くホイップしたところに(もちろん砂糖は入れません!)、塩・胡椒・粒マスタード、クミン少々を入れてざっくりと混ぜておく。
 ここが肝腎なのですが、柿からかなりの水分が出るので、具材とドレッシングを和えるのは食卓に出す直前に。周りにはスプラウト(今回はブロッコリーマスタードを使用)を散らし、エバミルクを上から少しかけ回す。香ばしくローストしたアーモンドを荒く砕いたものを散らしてもいいかと思います。

【海老芋のガレット】
 海老芋は五センチ程度の輪切りにし、塩湯で下茹でしておく。ぐらぐらさせると角から割れてくるので静かに湯がく。書いてる今気づいたのだが、丸ごと湯がいて、それから切ったほうがいいのかもしれない。
 茹で上がった芋を、オリーヴ油でソテーしていく。全体に焼き色を付けていく。めんどくさくなければ、平たい四角形に切っておくとここの手順がスムーズに行くでしょう。
 全体に色づいたところで、提供時に上にする面にレバーペースト(今回はイベリコ豚のレバーペースト。もちろん普通の牛レバーでもよい)を塗る。
 さらに弱火で、レバーペーストがぐんにゃりするまで焼く。焼けたら皿に芋を並べる。
 ソースはフライパンの油を拭き取ったあとに、バルサミコ酢と蜂蜜、胡椒を入れて、酸味がとぶまで煮詰める。これを芋の上に細く垂らしていく。

【なんちゃってブフ・ブルギニヨン】
 「なんちゃって」というのは、ふつうならバラの部分を使うところをすじ肉にしたから。無論すじ肉の臭みとえぐさをどこまで消去できるかがこの料理の眼目となる。
 まずは日本酒・生姜・塩を入れた湯で一度茹でこぼす。その後流水で洗いながら丹念に血合いやアブラを取り除く。
 次に圧力鍋で一時間ほど加熱。肉をバットに取り出し、冷めたところに赤ワイン(ボルドー)一本の三分の一をどぼどぼ注ぎこみ、粒胡椒・ニンニク・香味野菜(パセリの束・セロリ・ローリエ・クローヴ・タイム・人参)も入れて一晩マリネする。
 マリネ液から肉だけを引き上げて、サラダ油を熱したフライパン(ニンニクのみじん切りで香りを付けてます)でまんべんなく焦げ目が付くまで炒め、肉を取り出したところに今度は薄切りのタマネギと人参、マッシュルームを入れて炒める。全体が狐色になったら肉を戻して、小麦粉をふりかけ、粉っぽさが消えるまで炒め続ける。
 圧力鍋に炒めた具材を移し、マリネ液とハーブ、ワインの残りの半分を加えて一時間煮込む。ここまでを前日夜に終わらせています。
 翌日、上に固まった脂とアクを丹念に取り除き、もう一度肉を取り出して、残ったソースを漉す(あちゃあちゃといいながら晒しの袋に入れて絞った。熱かった!)。
 普通の肉に比べてコクが足りないので、鶏ガラでとったスープと残ったワイン全部を足し、肉を戻して、今度は圧力をかけずに二時間ほどことこと煮込んでいく。塩胡椒で味を調えるのはこの段階で。初めから塩味を入れてしまうとくどくなります。最後に茹でたじゃがいもの薄切りと角切りにしたマッシュルームを投入して更に一煮立ち。
 付け合わせは三度豆と絹さやを色よく茹でたもの。
 言われないとすじ肉と気づかない・・・わけではなく、多分すじ肉だろうと推測できる形はとどめていながら、スジ独特の匂いは消えてひたすらぴろぴろくにゃくにゃぎしぎしした歯触りが楽しめた。さすがにソースは旨かった。

ローストチキン
 ローストチキンは中に何を詰めるか、またソースをどうするかによって色々な味に仕上げられるが、今回は上記の煮込みがかなり濃厚な風味なので、爽やかにレモンとハーブでいこう、と決めた。
 防カビ剤不使用のレモンの皮を丸鶏全体に良くすり込む。ニンニクもすり込む。塩胡椒もすり込む。少量の蜂蜜もすり込む。トリがうっとりして寝息をたてるくらいに全身をマッサージしてあげるわけです。
 肉をいらいまわして崩してはいけないが。
 レモンの皮と薄切りにしたニンニク、それにバターのかけらを、胸肉と皮の間にさしこむ。
 コリアンダーを煎ったあと、すりばちで丹念に擂り、そこにセージ・タイム・オレガノ・チャービルを入れて更に擂る。出来たミックスハーブを全体にまぶす。
 鶏の腹腔には八つ切りにしたレモンとニンニクのスライス、ローズマリーを一枝詰めておく。
 最後にローズマリーで皮を撫でて(これはまぶしてしまうと余りにも自己主張が強烈になってしまうため)、オリーヴ油を塗ったらオーヴンへ。
 様子を見ながらだったけど、210℃・50分で丁度良い焼き上がりになっとりました。
 ソースは天板に落ちた脂を捨てたあと、白ワインを入れて焦げ付きを煮溶かし、バジルを入れて煮詰めただけのシンプルなもの。
 
 料理は綺麗に無くなったので、ま、成功と自負してもよいのではないかと。

 ワインは結局全部で八本。座を盛り上げてくれたバッカスの申し子たちに敬意を表して名前だけ列挙しておく。表記は無茶苦茶かもしれぬ。マロッティ・キャンピ(スプマンテ。ロゼ)。ボジョレの新酒。アロッゾ・クリアンツァ(スペイン)。モンテ・アルファ(チリ)。シャトー・ドゥ・ラ・モットのマディラン。ゼルバッハ・オステル(リースリング)。シャトー・ソーモン。サン・ジョセフ(ローヌ)。

 このうち、2005年のサン・ジョセフとクリアンツァが最もこちらの気に入った。よく枯らしたテンプラニーニョ特有の干し葡萄のような、チョコレートのような匂いがいい。

 で、題名の意味ですが、これは呑んだ分量から付けたのではなく、ハイピッチで呑んでいた部下が悪酔いして、突如吐いた(失礼)ことによる。

 部下の彼女が看護師、同僚の彼女が医者という、何だか嘘みたいな組み合わせだったので、すぐに「処置」が始まる。さすがに手慣れたものでありました。

 わたしは、というと翌日(つまり本日)の朝から快調にバタフライを泳いでおりました。

 まだまだ若輩には負けんわい。

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