修証一等

 年ごとに体力が落ちていくのは当たり前なのだが、それにしても今年の夏は仕事がえらかった。週末は九月からの気分切り替えの為にも、豪遊し続けた。ジム、プールは完全にさぼってしまった。コーチ、ごめんなさい。

 初日は、以前から気になっていた「肉とワイン」の店。「肉」とはまたおおざっぱなくくりやな・・・と思って入ったところ、なるほどまさしく「肉」の店なのであった。牛肉はもちろん、豚・鶏・羊・鴨などを出す。まずは九種盛を平らげ、次に羊と鴨を頼んだ。

 と書くとおそろしく大食のように聞こえるけれど、初めの盛り合わせは、アミューズ程度、一口ほどの分量であり、「メイン」にあたる羊・鴨も五〇グラムづつ出すのである(もちろん頼めばもっと大きいポーションでも出してくれる)。

 それこそ牛肉のサシがそろそろ気疎く感じられるようになってきた人間にとって、この仕組みは有り難い。機嫌良くブルゴーニュの赤を呑みながら、ふと思いついてマスターに提案してみる。「余計なお世話ですが、《鮨屋みたいな肉屋》ってコピーで宣伝してみたらいかが」。なるほど、いただきますねそれ、と愛想よく応じてくれる。冬は鹿や猪もこれに加わるとのこと。こちらは自分の鳩・鶉、それに煮込み料理偏愛を執拗にアピールし、是非出していただきたいと要望する。まだ出来て一年も経ってないそうだからね、色々工夫していい店にしていってほしい。

 ここを出たあとはRYでパーティー。出たり入ったりして結局朝九時前まで騒ぐ。

 翌日はむろんのことに二日酔い。作り置きのクリームスープだけようよう流し込み、夕方まで本を少し読んでは一眠りの繰り返し。本は種村季弘さんの翻訳小説集(単行本未収録のものを集めている)。シュウォッブの『吸血鳥』まで訳してるとはしらなんだ。

 夕方もそもそと起き出して六甲『彦六鮨』に電話。幸い席はまだあるとのことで、シャワーを浴びて準備する。

 初めのビールこそさすがにこたえたものの、ぬる燗の「瀧鯉」に切り替えると、じゅわーっと身に沁みて実に旨いんですな、これが。俄然調子が上がって、ゲソの炙ったの、鯛(紅葉おろしとポン酢)、たこ酢、焼き穴子をアテにどんどん銚子をお代わりしていく。握りは烏賊・縞鯵・きずしなど。やすこさん(店主)お元気で何より。息子さんとの息も合っている。

 六甲駅前の『ケーニヒス・クローネ』でケーキとゼリーを買い、タクシーにてまたもやRYへ。しんどいことはしんどいが、大好きなこの子のためとあれば是非もなし。

 でもさすがに日本酒しこたま呑んだあとでシャンパンはキツかった。日付が変わる前にへとへとになって退散。ま、それでも一応あと二軒回ったのですから鯨飲の面目は立ったことにしておく。

 翌朝はむろんのことに・・・二日酔いに非ず。やすこさんに言われてお茶をがぶがぶ飲まされた(もちろん酒の後)のがよかったのかもしれない。さっそく買い出しに行き、昼酒を決め込む。肴は子持ち鮎の天ぷら、夏野菜(茄子・獅子唐・新蓮根)の胡麻味噌あえ、蝦蛄わさ、それにとろろであった。

 本の方の対手はマイケル・ジェイコブズとヒュー・パーマーのうつくしいプロヴァンス案内に、東洋文庫の『鳥の言葉』、マルシオ・ソウザの『アマゾンの皇帝』。

 すっかり酒が回ったところで昼寝。昼寝から覚めると風呂(小原庄助さん並みであります)。少しアルコールを抜いてしめくくりは中華である。神大病院まえの海鮮が売りの店(名前を忘れた)。

 ここでは空心菜の海老味噌炒め、豆腐の煮込み、あこうの清蒸を頼む。どれも品よく、しかもダシのしっかり効いた味だったが、ことにあこうの蒸し物がよろしかった。最後は牛バラの煮込みをかけた焼きそば。これは対照的で目鼻立ちのくっきりした味付け。

 明日からの粗食が楽しみなことだ、と思いつつ帰途についたことでありました。



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