あの青々と匂ふもの

 「田植えを終えて一休み」が半夏生、ということであれば、逆に見ればこれから盛りが来る夏の準備とも言えるわけである。

 それに合わせてということではなかったが、我が家では最近、畳を買った。

 畳を「買った」というのは不自然な語法で、本来なら「換えた」とあるべきところ。しかしウチには和室が無いのでこう表現するよりないのである。別段不惑を過ぎて日本趣味に回帰したというわけではなく、本を読むのにいちいち机に向かっていたのではいささか読書の興が殺がれることになるし(もちろん、枕みたいに馬鹿でかい本や、参考書・辞書の類を頻繁に引く必要がある本は別)、かといってベッドにひっくり返ったのでは、安楽は安楽だけど別の誘惑に屈してしまいがちであり(残念ながら別の誘惑とは睡眠のことである)、しかしむろんフローリングの床には十分も寝転がっていられるものではない。酔っ払って帰宅したあと、面倒なままに床で寝ようなら、朝(乃至昼過ぎ)、「乱酔のあげく、オヤジ狩りにあって全身ぼこぼこに殴る蹴るの暴行を受けたか」と思ってしまうほどの激痛で目覚めることとなってしまう。

 つまり、ごろんと横になって本を読めるだけの大きさに畳があれば良いわけだから、部屋全体を和室に改装したというのではなく、取り外し(敷き外しというのかな?)可能な、タイル状のもの。タイルとはいっても一辺が九十センチのやつを四枚、正方形に組み合わせて使う。

 さっそくごろんと横になって本を読んでみたのですが、これがじつに気持ちいいんですね。適度な堅さとさらりとした肌触りがなんとも言えない。藺草の匂いも胸にすがすがしい。心なしか読書のスピードも上がったような気がする。

 まあ、畳ばっかりのところで生活していた昔の日本人が、だからといって今よりも本をよく読んでいたわけでもないだろうけど。

 タコを食って、畳に寝たわけですから、欲をいえば最後は薩摩上布か小千谷縮の、肌に少しさわったらちりちりっと汗が引きそうな単衣を誂えて夏の準備も完成ということになる。
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