野獣降臨

 といっても、野田秀樹さんの舞台を見に行ったわけではなくて。

 同僚・湘泉子と東淀川『とりや圓』にて二人忘年会。名前の通りの焼き鳥屋なのだが、この日はついに普通のトリの串は三本しか食べず。

 体調が悪かったわけではなく(ただし前日(?)は朝十一時まで呑んでいたから強烈な二日(?)酔いではあった)、大いに談じて食べる方がお留守になったわけでもなく(大いに毒舌ぶっ放してはいた)、「この日のスペシャリテ」に没頭していたのであった。

 まずはヤマウズラ丸々一羽を湘泉子と半分ずつ。ヤマウズラはフランス料理ではペルドローという名前で出てくるもの。いわゆるジビエ。肉そのものは淡泊ながら、皮や関節のところを噛みしめると、葡萄のような栗のような芳香がもわーんと立ち上って、喜びのあまりそこらを駆け回りたくなる。

 続いてイノシシ。固まりをローストする。これを赤ワインと木イチゴを煮詰めたソースで・・・としゃれくりかえったことをしないのがこの店の良いところで、八丁味噌を練ったものを添えて出す。猪鍋だってすき焼きより味噌のほうが旨いのだから、これは気が利いた組み合わせ。

 ほんでもって鴨。いったいこういう血の味を本領とする肉を人情紙の如く薄く切って出す店が多くて気にくわないのですが、『圓』はさすがに分厚く、一切れで口の中が一杯になるようなヴォリュームで出してくれた。

 まだある。次に出されたのがエゾシカ。この日は残念ながら内臓が入ってなかったけれど(レバーは、天下の珍味と称するに足る)、肉を噛むと爽やかな青草の香りがする肉汁がじゅっと溢れてくる。これはやっぱりワインだな、と赤ワインに切り替えて楽しむ。

 もちろんそれまでは冷酒をしたたかあおっておりました。この日呑んだ中では栃木の『大那』ちゅうのが端整でよろしかった。

 それ以外には泥付き蓮根や海老芋、鶏皮の八丁味噌煮込み(いくらでも酒が呑めそう)など。いい店だなあ、でもミシュランなんかに載ったら客筋が荒れて困るなあ、と湘泉子にこぼすと、「その心配は無い」と断言された。「ここの大将、無愛想だから」。わははなるほどその通り。当方最愛の(という使い方は変か)鳩が入ってなかったのを瑕瑾とする。「あまりに質がよくなかったから」だそうで。で、駄句一つ。

  夕星や鳩なき店の改憲論 碧村

 ま、実際にはそんな汗臭い話はしなかったけど。

 気が付けば終電はとうに逃してしまっていたので、久々にMKに乗って神戸に帰る。『圓』のすぐ近くにホテルがあるから、そこに泊まってもよかったのだが、翌日も別口の忘年会がある上、朝から熱帯魚の水槽掃除の予定をしていたから一刻も早く家に着いていたかったのだ。

 で翌日は三宮呑み友達との忘年会。場所は『とり徹』。我ながらトリ贔屓なことではある。

 ここではひたすら大分の地鶏を、刺身・焼き・鍋で堪能。肉は無論ながら、トリの旨味を吸った野菜と豆腐がおいしうございました。あとの三人は、ま、悪友連という他ない面々で、店が揺れるほどわあわあ笑って呑んだことだった。

 かくして忘年会前半戦は終了。気合い入れて折り返し点を回ります。

【ランキングに参加しています。下記バナーをクリックしていただけると嬉しう存じます!!】
にほんブログ村 料理ブログへ
にほんブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村