悶える文庫

某月某日 会社の懇親会が済むとそそくさと抜け出して、三宮の某店へ。同じ三月生まれの呑み友達であるO母・Dちゃんと、三人での合同誕生会なのである。当方があらかじめ買っておいた生ハムやチーズやパテを肴にシャンパンやらバーボンをがぶがぶ飲む。馬鹿話の合間に時折固い話題が混じるのは三人ともそれだけ齢を取ったというところか。

某月某日 三宮のジュンク堂で買い物したあと、小野柄通の『アマ―ヴェル』へ。『播州地酒ひの』さん主催の日本酒の会なのである。今をときめく「獺祭」と保守本流とも言うべき「剣菱」との組合せは、『ひの』さんでなければ実現は到底無理だったろう。同じテーブルになったご夫妻が、『ひの』及び『いたぎ家』ブログによって、こちらのことをご存じであった。有り難い限り。「まったく時流に乗れていないものですが」、とこのブログを紹介申し上げた。さて会がハネたのはまだ四時にもならない頃。王子公園に移動して、昼間から空いてる店で呑み、夕景となってさらに六甲に移って鮨屋で呑む。古くから存じ上げている方がいらしたので、お花(華道)のご教授をお願いする。やや戸惑いつつも嬉しいことに引き受けてくださった。来月から愉しみがひとつ増えた。さてさて鮨屋のあとはまたもや三宮に戻って、親友の悟空とワインバー、その後ショットバーで呑む。うーん流連荒亡という感じで我ながら風情があるなあ。ただし流連荒亡とはいっても色気は無いわけだが。


***最近読んだ本

川合康三編訳『新編中国名詩選』(岩波文庫、全三冊)・・・学生時代には旧版のお世話になった。まだ旧版との選詩の異同を見比べるだけでもたのしいだろう。もちろん同じ作品ならそれで、訳や鑑賞ぶりを比べることも出来る。前にも書いた気がしますが、岩波さん、次は『日本漢詩選』ですよ!『江戸漢詩選』ならなおさら結構ですけど。編者はやっぱり揖斐高先生で!
ホッブズ『ビヒモス』(岩波文庫
アラン・コルバン他『身体はどう変わってきたか 16世紀から現代まで』(藤原書店)・・・同書店刊の『身体の歴史』の紹介本だと読み始めてから気がついた。『身体の歴史』は凄い大著だから、まだお読みでない方はこちらから取り付いたらいいかもしれない。
リチャード・ドーキンス『進化とは何か ドーキンス博士の特別講義』(早川書房
神崎宣武『大和屋物語 大阪ミナミの花街民俗史』(岩波書店)・・・「入り口からのぞくだけで五万円」と言う冗談(があった)ノネタとなった、伝説的な名料亭の歴史。女将の父親の人物像がすごい。芸妓の養成学校まで作ってしまうのだ。当人はもちろん大まじめだが、じつに滑稽。小説の材料になりそうだな。
○ヘルダー『言語起源論』(法政大学出版局)・・・『言語起源論の系譜』のいわば「応用篇」として読んだ。書いたかも知れないが、「宣長と言語起源論」なんてテーマも研究してみたら面白いかも知れない。
○竹内誠他編『徳川「大奥」事典』(東京堂出版)・・・こういう類の事典は、多少荒っぽく読み飛ばしてもいいから、アタマからしっぽまで通読するのがコツ。引こうなんて思ったらいつまで立っても役立つ時が来ない。一回読み通しておくことで、むしろ引くべき項目が分かってくるのだ。
○倉田喜弘編『江戸端唄集』(岩波文庫
吉田寛絶対音楽の美学と分裂する「ドイツ」  十九世紀』(「音楽の国ドイツ」の系譜学3、青弓社)・・・著者の博士論文らしい。若い世代の研究者だけに、やはりポスト・モダン的な自意識がぴしっと張り詰めているのだが、それが煩く感じられないので、興味深く読めた。
○吉田孝夫『山と妖怪 ドイツ山岳伝説考』(八坂書房)・・・研究史への目配りと批評意識が明確なのは前著と同じだが、じつに面白い。
池上永一シャングリ・ラ』(角川書店)・・・「森」に攻撃される文明というアイデアアイロニーがきいていていいけど、なんだか粗っぽい筋の運び。特に後半になると、ユーモアなんだか投げやりなんだか分からない強引な展開が多い。やっぱりこの人の評価は『テンペスト』を読んでからでないといけないんだろうな(恥ずかしながら未読なのです)。
谷川俊太郎編『辻征夫詩集』(岩波文庫

 しかし岩波文庫が多いな。実際、ここんとこ岩波文庫のラインナップは凄い。乱立気味の文庫の中でひとり気を吐いているという感じさえする。プルースト『楽しみと日々』・木下彪『明治詩話』・池内紀編注『森鴎外椋鳥通信』全三冊なんて、「あっ、まだこういう手があったか!」と思わせられる、つまり文庫の本分を見せつけて、快哉を叫びたくなるような名アイデアである(ぜんぶ全集か単行本で持ってるから買わないけど。)。以前『徳川制度』上巻が出たときには批判したが、ほめるときはとことんほめるのである。ああ、でもまだトクヴィルの『アメリカのデモクラシー』(これはワイド版だが)とかロレンツォ・ヴァッラ『快楽について』とか『D.G.ロセッティ作品集』(!)とか、渡辺守章さんが訳した『マラルメ詩集』とか(ラシーヌクローデルの訳は名品だった)、まだまだ欲しいのが多いなあと煩悶ただならぬものがある。
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