雉が芹しょって。

 某日は「海月」敬士郎さん夫妻と「ビストロ ピエール」へ。雉のローストとリゾットが素敵に美味かった。ワインもじゃかじゃか呑んで、前回同様首をひねりたくなるような安さでした。

 

 翌日、リゾットの仕上げに使っていたチーズを買いに、宇治川商店街の「スイミー牛乳店」へ。店名のセンスから分かるとおり、洒落たつくりで、店長さん(一人でやっているようである)もいい雰囲気。宇治川にこういう店が出来る時代が来るとはなあ。ヨーグルトとウォッシュタイプのチーズを買う。ホールのチーズは冷蔵庫でとろとろになるまで熟成させる。「ちょっとずつ熟成の具合を味見しながらというのも楽しいですよ」とご店主。途中で食べつくしてしまわないか心配である。

 

 某日は友人と「いたぎ家」芹満載コースをいただく。圧巻は鍋。鴨と合わせるのはまあ尋常として、芹が文字通りにてんこ盛り。きけば「お代わり自由」とのこと。某河内鴨専門店で同じことをしたら、どれだけ取られることか・・・。しかもこの日は、芹の根の部分もたっぷり出されていた。これは若芽よりも濃厚で、しかも品格正しい香りのする珍品なのである。普通の芹は水耕栽培のものが多いから、そもそも根が無いのだ。出汁で炊いても、炒めても、無論揚げてもよろしい。こんがり炙ったお揚げの中にさっとゆがいた芹の根をぎゅうぎゅう詰め込んで、醤油を垂らしてもよさそう。辛子を少し加えた白和えなんぞは懐石の一品に出てもおかしくないでしょうね。ゆがいたのを、質のいいオリーヴ油に浸してぱりぱりやるのはどうか。など色々コーフンしてしまう。あまりにも需要が多かったために、芹フェア第二弾開催も決まったそうな。芹帝国主義者としては欣快の至りといわねばならぬ。

 

 

 ともあれいい形で年度末をしめくくることが出来ました。四月は魚島の鯛と山菜をもりもり食べて新年度をしゅぱっ。と出発したい。

 

 

 本には年度末も春もない。

 

○ウィリアム・ウィルフォード『道化と錫杖』(高山宏訳、「異貌の人文学」、白水社)・・・山口昌男の貴重なエッセイまで収録するという、ゲームならさしづめ「コンプリートパック」とでもいうところ。高山宏が監修して「道化叢書」なんつーのをやればいいのに。いや、この本の伝説的な註釈がすでに書目のみながら、一大叢書になってるか。

○ゲンデュン・リンチェン編『ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝』(今枝由郎訳、岩波文庫)・・・ブータンの一休禅師というか一遍上人というか、型破りの坊さんの言行録。そう、つまりは是もまた典型的な《道化》。

久保田万太郎『浅草風土記』(中公文庫)・・・喪われた郷土によせる懐旧の思いが文章を湿らせて、読んでる手までがびたーっと濡れそぼつ風情。

藤原帰一『戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在』(講談社現代新書

ジャン・ジロドゥ『トロイ戦争はおこらない』(岩切正一郎訳、ハヤカワ演劇文庫)・・・ほとんど頽唐期の歌舞伎を想わせるような作劇術。最後の一句も効いている。鳥から生まれた、白痴的なヘレネの造型が魅力的。それにしても、主人公を演じた鈴木亮平、よかったなあ。戯曲は滅多に読まないが、ずいぶん奇特な文庫である。敬意を表します。

上田閑照編『マイスター・エックハルト』(「人類の知的遺産」、講談社

○藍弘岳『漢文圏における荻生徂徠 医学・兵学儒学』(東京大学出版会

○澤井繁男『外務官僚マキァヴェリ 港都ピサ奪還までの十年』(未知谷)

○同上『ルネサンス再入門 複数形の文化』(平凡社新書

○同上『若きマキアヴェリ』(東京新聞

○ベルント・レック, アンドレアス・テンネスマン『イタリアの鼻 ルネサンスを拓いた傭兵隊長フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ』(藤川芳郎訳、中央公論新社)・・・武勇並びなき傭兵隊長であり、学藝の保護者でもあたウルビーノの君主の伝記。著者は、「教養あふれる君主」が本人による情報操作の結果のイメージであると論じるが、ルネサンスなんだから、野蛮狡猾かつ高雅寛容であって、ちっともヘンではないだろう。ちなみに、モンテフェルトロの肖像を描いたピエロ・デッラ・フランチェスカに関しては、ギンズブルグに『ピエロ・デッラ・フランチェスカの謎』(みすず書房)という素敵に面白い本があります。おすすめ。

○ダンテ『帝政論』(小林公訳、中公文庫)・・・ダンテが皇帝(この場合は神聖ローマ皇帝)支持派というのは、知識としてだけ知っていた。訳者の綿密な解説で、その背景が分かった。フィレンツェの派閥抗争というか、党派根性てえぐいな、しかし。

○ロンギノス他『古代文藝論集』(「西洋古典叢書」、京都大学学術出版会)

○モッシェ・ハルバータル、アヴィシャイ・マルガリート『偶像崇拝 その禁止のメカニズム』(大平章訳、叢書ウニベルシタス、法政大学出版局)・・・部族における姦通の禁止が、「嫉妬する神」の表象を生んだ。ユダヤ人とエホヴァは腐れ縁の仲なんですなあ。

岡崎武志『蔵書の苦しみ』(ちくま文庫)・・・細部が杜撰だなあ。吉田秀和が驚嘆したのは吉行淳之介でなくて吉田一穂でしょ。丸谷才一を呼ぶのに「ジョイス学派」とは何か。ほな亀山郁夫ドストエフスキー学派で若島正ナボコフ学派なんか。仮にも古本好きというなら、そーゆーとこを疎かにしてはいかんでしょうが。

紀田順一郎『蔵書一代  なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』(松籟社)・・・老後を考え、蔵書家が蔵書を手放してしまう話。規模は全然違うけど、いずれこの日が来るのだ。ぞーっとする。

○木下武司『和漢古典植物名精解』(和泉書院)・・・えらくかさばって重いのは難点だが、暇潰しに絶好の本(褒めている)。

○『周作人読書雑記1』(中島長文訳注、平凡社東洋文庫)・・・これも閑暇の読書として最適の一冊。

東海林さだお『焼き鳥の丸かじり』(朝日新聞出版)・・・癌の手術も無事終えられたようでおめでたい。久々にタンメンが登場したのでこちらまで嬉しくなる。東海林さん、タンメンが大好きなようで、タンメンの回は気合いが入ってるのです。

○北野佐久子『物語のティータイム お菓子と暮らしとイギリス児童文学』(岩波書店

○岡崎大五『腹ペコ騒動記 世界満腹食べ歩き』(講談社

○大阪料理会監修『大阪料理』(旭屋出版)・・・もっと大阪料理の史的展望に特化して編集すべきだった。「現代の大阪料理○○選」なんて、ここで披露しなくてもいいだろう。とか文句は沢山あるが、貴重な一冊であるには違いない。とっかかりとして。

 

芹の行進

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